レビュー

本書は、個々の商品やサービスに対してどのようにプライシング(値付け)したら最も適正な利益をあげられるか、架空の新商品「チョコレートポット」を軸に価格戦略について解説するものである。
要約者にとって印象的だったのは、「他人のお金」を使うとき、人は合理的で費用対効果の高い買い物をすることができるという話だ。

たとえば、会社の費用で商品やサービスを購入するケースなどがそれにあたる。一方、自分のお金で購入するとなると、どんな商品かわからないまま購入しているのではないかといった心の葛藤によって判断が狂ってしまう。ここに、「購買心理学」と「行動経済学」という科学が登場する余地がある。
本書を読むと買い物という行為がいかに複雑なものか改めて驚かされる。たとえば「無料」は、無料だからそれ自体がありがたいのではなく、無料は購買者にとって考える(悩む)プロセスをひとつ減らしてくれるからこそ意味があるのだという。このように、この本は一買い手にとってもたくさんの示唆を与えてくれるだろう。

要約では多くの人がイメージを浮かべやすいエピソードを中心にまとめているが、本書はじつは本格的な価格戦略の教科書でもある。もし読者が商品開発や販売などプライシングに関わる仕事をしているのであれば、なおさら読まないという選択肢はないと思う。本書では、BtoCの商品のほかに、BtoBの会計サービス、コンサルティングのような無形の取引の価格戦略についてもしっかり解説されている。

本書の要点

・価格は、企業側の費用ではなく、顧客にとってのベネフィットを基準に設定する。
・まず顧客の購入の理由と考えられるものをひとつずつ書き出してみる。それぞれの購入理由ごとに、異なる競合相手がいるし、顧客がそれぞれのニーズを満たすための選択肢も複数ある。


・競合相手が変われば、戦う価格領域も異なる。競合相手の選択と、それに合わせたポジショニング次第では、まったく違う価格設定ができる。単価が最も高い競合相手に合わせてポジショニングができれば、理想的な価格設定が可能になる。



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