レビュー

1896年に岩手県花巻に生まれ、37歳の若さでこの世を去った宮沢賢治。死の直前まで推敲が続けられ、未完でありながら賢治の集大成にして最高傑作と言われるのが本作『銀河鉄道の夜』である。

執筆開始は1924年頃とされ、約10年にわたる推敲で大きく3回の改変がされ、稿によって設定やあらすじは異なる。
物語の中心は、気弱で孤独な少年ジョバンニと親友のカムパネルラが銀河鉄道で天の川に沿って南十字へと向かう銀河の旅である。この鉄道の不思議な乗客たちは、天上に向かう死者たちであることが示唆される。死者たちの口からは「本当の幸い」について繰り返し語られ、主人公ジョバンニもまた、何がみんなの本当の幸いなのかと考え始める。この問いは、読者へも向けられているものだろう。
今回要約したのは青空文庫収録の新潮文庫版であるが、これは戦後しばらくしてから発見され、現在広く読まれている第4次稿(最終形)がもととされる。
この稿では、それまでの稿にはなかった銀河鉄道の旅の前後、つまり物語の冒頭と結末が新たに加えられた一方、それまでの稿では中心的な役割を担っていたブルカニロ博士が登場しない。賢治が生きていたら、さらに推敲を加えていたであろうことから、物語は永遠の未完である。だが、そこから浮かび上がるメッセージは鮮やかとしか言いようがない。読み終えたらあなたのポケットにも、「ジョバンニの切符」が見つかるかもしれない。

本書の要点

・気弱な少年ジョバンニは、学校でも職場でも冷たくあしらわれ、気を許せるのは親友のカムパネルラだけだった。
・お祭りの夜、ジョバンニはいじめっ子のザネリにからかわれ、一人寂しく野原で空を見上げていた。

そこに列車の音が聞こえてきて、気がつくとカムパネルラとともに銀河を駆ける汽車に乗っていた。
・旅の途中で、ジョバンニは不思議な人たちと出会い、本当の幸いについて考え始める。
・銀河鉄道の旅から帰ったジョバンニを衝撃的な事実が待ち受けていた。



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