レビュー

ビールは、時に「見えない地雷」になる。少なくとも、ある種のビジネスシーンにおいては。


取引先によっては、特定の銘柄のビールを置いている店を選ばなければならない。三菱ならキリン、三井ならサッポロ、住友ならアサヒ。そんな都市伝説のような暗黙の了解が、令和の今も一部残っているという。
三菱・三井・住友は、いわゆる旧3大財閥である。戦後の財閥解体以降も、各グループ内の企業同士の緩やかな結びつきは残り、日本経済を支え続けてきた。
もっとも、仕事で取引があったり、投資先として調べたりしない限り、その実態を知る機会は少ないだろう。一方で、各グループの企業は金融、商社、不動産、メーカーなど幅広い領域に広がり、私たちの仕事や暮らしとも密接につながっている。冒頭の「ビール」の話も、その一端である。
本書は、そんな三菱・三井・住友の歴史と現在地を多角的にひもとく一冊だ。創業の背景、各グループの理念、系列企業の広がり、さらにはデータをもとにした企業分析も紹介されている。就職・転職・投資はもちろん、日本企業の理解にも役立つ内容だ。
何より興味深いのは、3グループが積み重ねてきた歴史のスケールの大きさだ。
身近な商品からインフラ、宇宙開発に至るまで、影響範囲は実に広い。3グループの実像から日本経済の構造そのものが見えてくる。企業に息づく独自の価値観や「ビジネスの作法」も学べる、知的好奇心を大いにくすぐられる教養書である。

本書の要点

・三菱の原点は、海運業で活躍した岩崎弥太郎という人物にある。国家戦略と結びつきながら成長したが、戦後の財閥解体を経て、「三菱金曜会」を通じて再び結束しはじめた。
・江戸時代の呉服屋に起源を持つのが三井グループである。番頭が大きな権限を持ち、戦後も自立分散型の経営色が強く残った。
・住友政友は武士や僧侶としての経歴を持っていた。住友家は別子銅山の経営で頭角を現していった。合理的な経営と「家訓」を重視する点が住友グループの特徴である。



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