韓国大統領選では、事前の見立て通り李在明氏が優勢を保ち勝利した。非常戒厳令の是非、関税・安全保障面での米韓関係、高まる核武装論、政権交代の是非など、さまざまな争点が注目される中での選択であったが、「週4日勤務制(週休3日制)」も大きな関心を集めていた。


 全国紙記者は、「野党の李氏の『週36時間労働』と、与党の金文洙氏の『1日1時間追加労働』とアプローチの仕方は異なるが、共に『週休3日』に近いワーク・ライフ・バランス政策を公約に掲げていた。韓国では文在寅政権時代の2018年7月に『週52時間勤務制』を導入したが、週52時間を守れば連続徹夜も容認されると悪評が高く、前回の22年大統領選挙でもすでに注目されていた」と説明する。


 そして李氏が大統領に就任するや、公約に掲げていた法定定年65歳までの延長と週4.5日制の導入を急ぐ意向を示したとされ、高い失業率で知られる若者の雇用問題の改善にもつながるのではとみられている。


 では、世界で週4日勤務制はどの程度広がっているのだろうか。


 欧米各国では、生産性の向上や幸福度の向上などが確認されおおむね好評なことから、試験導入や導入が議論されている国は多い。しかし、本格的な導入はベルギーの22年2月導入くらいしかないのが現状だ。


■週4日勤務制は不可避か


 日本ではどうか。週休3日が導入された企業としては、ファーストリテイリング(ユニクロ)、佐川急便、ファミリーマート、リクルートなどが有名である。自治体では千葉県が昨年から、東京都も今年度から導入している。


 前出の記者は、「一昨年の厚生労働省の調査によると、週休3日制を導入している民間企業は7.5%に過ぎず、そのほとんどが大企業だ。また、東京都の導入は世間的には話題になった一方、都庁内ではさほど話題になっていないという。群馬県前橋市では23年に試験導入したところ、業務に支障があったとする回答が少なからずあり、導入を見送った経緯がある」と語る。


 東京都の場合、例えば1日8時間×5日勤務を、1日10時間×4日勤務とする単なるフレックスタイムの導入に過ぎず、特に子育てなどには活用しづらい。この手の施策に最も肝心な柔軟性に欠けるといえる。


 ただ、昨今のAI(人工知能)の劇的な進化と浸透を見れば、トータルで週4日勤務制は不可避の流れとも思える。ところが日本では、経済界が求める選択的夫婦別姓の実現すらまだほど遠い。「世界経済フォーラム」が先日発表した「男女平等ランキング」では、148カ国中、日本は118位と相変わらず低い水準にある。


 男女を含めた働き方改革が叫ばれる日本だが、ワーク・ライフ・バランスにおいても韓国が日本より先を行くかもしれない。


 (横関寿寛/ジャーナリスト)


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