事実上の「リコール」となる自民党総裁選の前倒し要求を巡り、党内抗争は激化。反石破派と石破擁護派が攻防を繰り広げる中、にわかに吹き始めたのが「衆院解散風」だ。

複数メディアが「解散」の見出しを掲げて報じ、永田町関係者も浮足立っている。「石破おろし」を潰すため、解散に打って出るのでは──石破首相はどこまで本気なのか。


 解散風が吹き出したのは8月24日夜、石破首相の呼びかけで小泉純一郎元首相や山崎拓元副総裁らと約2時間半にわたって会食したことがきっかけだ。小泉氏は、2005年に郵政民営化法案が参院で否決され、衆院解散に踏み切った過去を振り返ったという。「“経験者”から助言を得て、自らも解散に向けた準備をする気ではないか」(永田町関係者)という臆測を招くに至ったのだ。


■「政務三役が前倒し賛成なら、次期衆院選では公認しない」


 また、今や石破擁護派の筆頭格、鈴木宗男参院議員が2日の両院議員総会後に「(石破首相は)解散に打って出て、自民党員100万人よりも1億2000万人、日本国民に信を問うた方がいい」と記者団に発言。反石破派を「本気でやるつもりか」とビビらせた。


 さらに、石破首相の本気度をうかがわせるのが、反石破派の政務三役(大臣・副大臣・政務官)への“脅し”めいた怪情報の流布だ。政務三役に対しては、執行部から「前倒しに賛成するなら辞任してから言え」と圧がかけられている。それでも複数の副大臣・政務官から「退陣要求」が相次ぎ、職を辞する覚悟を示す者もいる。そうした状況を受けてか「政務三役が前倒しに賛成すれば次期衆院選では公認しない」との情報が流れ、「解散を念頭に置いた執行部が流したとしか思えない」(自民関係者)と囁かれているのだ。



選挙をやっても自民党は勝てっこない

 野党も警戒している。

立憲民主党辻元清美代表代行は9月4日、SNSに「石破さんの選択肢は辞任か解散に限られてきた」と投稿。国民民主党の玉木雄一郎代表もSNSで「解散・総選挙という声すら首相周辺から聞こえ始めた」と呟いた。


 ただ、ある官邸事情通は「解散なんか無理です」と言ってこう続ける。


「内閣支持率が上がっていることも『解散説』の信憑性を高めています。とはいえ、支持率アップを支えているのは野党支持層です。読売新聞の世論調査では立憲民主党の支持層で『内閣を支持する』と答えた人が前月(7月)の1割台から4割台に上昇。彼らは選挙で自民候補には投票しません。むしろ、かつての自民支持層が参政党や国民民主党に流れている。そこは石破さんも分かっているはずです」


 すると、解散説は執行部のブラフ、風説の類いなのか。石破首相に近い政界関係者が言う。


「小泉元首相らとの会食後、石破さんは周囲に『郵政解散の思い出話だったよ』と、何も意図せずにナチュラルに話したそう。それがマスコミに伝わり、広がっていったのでしょう。

本人が気にしているのは何よりも世論。国民の信を得るにはどう行動すればいいか、そこを一番に考えています。解散の『か』の字も頭にないと思います」


 永田町は「解散、解散」と大騒ぎだが、国民は落ち着いた方がいい。


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「石破おろし」をめぐる自民党の醜悪な内ゲバについては、関連記事【もっと読む】【さらに読む】などで詳しく報じている。


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