5日午後、永田町に緊張が走った。石破首相が午後4時20分をメドに官邸で記者団のぶら下がり取材に応じると告知され、「その場で退陣を表明する」との情報が駆け巡ったからだ。
「この日は続投理由のひとつに挙げた日米関税交渉の合意内容に基づき、トランプ大統領が大統領令に署名。成長戦略の要とする賃上げも、初めて全都道府県で最低賃金が1000円の大台を超えた。大きな政策課題が次々節目を迎え、『これを“花道”に辞めるのでは』と妙にリアリティーが増し、退陣情報が広がったのです」(ある政治部記者)
いざフタを開ければ、石破はそれぞれの成果を誇示し、改めて続投の意欲を強調するのみ。記者たちは肩透かしだが、ここ数日、石破が取材に応じるたび「進退に言及する」との臆測が飛び交い、気もそぞろだという。週明け8日に総裁選前倒しの意思確認の期日を控え、自民党内で「石破おろし」の情報戦が過熱している証拠である。
「真偽不明の怪文書も出回っています。無派閥を含め現旧派閥ごとに党所属の全議員の名前と当選回数を並べ、前倒しの賛否を色分けした手の込んだものまである。『(C)一族郎党打ち首獄門』と物騒かつ謎のクレジットが記されていますが……」(自民党関係者)
3日の麻生派研修会で、派閥領袖の麻生最高顧問が前倒し賛成を表明して以来、旧安倍派や旧茂木派、旧二階派の中堅・若手に代わり、今や麻生派が「石破おろし」の主導権を握ったようだ。
「前倒しに賛成意向の政務三役も現職閣僚で初表明した鈴木法相をはじめ、麻生派ばかり。“麻生派の票読み”と称し、前倒し賛成の議員が過半数に迫る170人に達したとの情報も流れています。むろん正確な数字である保証はない。誰かが『勝ち馬に乗ったら』と多数を占める様子見の議員を揺さぶる心理戦を仕かけているのでしょう」(別の自民党関係者)
総裁選前倒しの成否に関し、いまだ党内の見立ては五分五分。
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「100万人の自民党員の意向より、1億2000万、日本国民の思いが大事」──。両院議員総会後の鈴木宗男議員の言葉だが、醜悪な政争にうんざりしている国民の総意だろう。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。