【今週グサッときた名言珍言】


「生きてる今の自分の生きざまをネタにするしかないんだって」
 (渡辺直美テレビ東京系「あちこちオードリー」9月10日放送)


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 2021年からアメリカに拠点を移し、活動している渡辺直美(37)。一見、セレブ的な生活を送っているイメージもあるが、実情はまったく異なり、「若手芸人」のそれだという。

日本での武器が武器でなくなり、「私どうしよう」と寝られない夜もあり、「めちゃくちゃ売れたい!」と常に思っている。


 そんな彼女がアメリカでたどり着いた境地を語った言葉を今週は取り上げたい。


 移住して2年、全米7都市でトークライブを行ったことも話題になったが、それも「片言でもいいから舞台に立っとかないと、ビビっちゃってこの先なにもできないんじゃないか」という危機感からやることを決断したという。そんな彼女の行動原理を、テレビプロデューサーの佐久間宣行は「やるって決めて、そのあと、自分を追いつかせる」(ニッポン放送「佐久間宣行のオールナイトニッポンZERO」25年8月27日)と分析すると、「よくご存じで」と本人も同意した。


 それは海外へ行くという決断もそうだ。レギュラー番組が終わった時、彼女は3カ月間、海外留学をしようと考えた。だが、もちろん所属事務所は猛反対。「芸人が休むなんて考えられない」「帰ってきたら仕事がなくなっているよ」と。けれど「その覚悟で行きます」「もし仕事ゼロでも、バイトから始めます」と主張した(同前)。このままでは若くして“一発屋”的に売れただけで消えてしまうという危機感があったのだ。


 結果、3カ月後には、その時期のエピソードトークで海外に行く前よりも仕事が増え、同時期にインスタグラムも始めるとフォロワーが激増したのだ。


 そんな彼女でも本格的に渡米するのはちゅうちょした。

日本での仕事が激増していたからだ。その背中を押してくれたのが千鳥の大悟だった。


 日本で彼女がやっていることは他の芸人でもできるが、海外に行くことは彼女しかできないと諭した上で、阿久悠の甲子園の詩「最高試合」の一節「奇跡とよぶのはたやすい だが 奇跡は一度だから奇跡であって 二度起これば奇跡ではない 言葉がない 言葉で示そうとするのがもどかしい」を引き合いに出し、「おまえは茨城の田舎町から東京に出て売れた。今からアメリカに行って、もし売れたら、2回目の奇跡をなんて言うか教えてくれ」と言ったのだ(同前)。


 渡辺直美はその生きざまで2回目の奇跡を起こそうともがいているのだ。


(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)


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