【芸能界クロスロード】


 情報番組を巡り出演者から異論が出始めている。


 発端は京都・南丹市で起きた小6児童の行方不明からだった。

3週間後に遺体発見、その後、養父逮捕までを多くの時間を割いて報道し続けたのが民放各局の情報番組だった。


 元刑事やコメンテーターが推論を展開。世間の関心が高まると、ネットも即座に反応。人権などお構いなしに無責任情報を発信する異常事態に発展した。


 連日の事件報道に、情報番組のパネリストを務めている池上彰や中野信子が「報道は控えるべき」と番組内で苦言を呈した。


「出演者が番組の報道姿勢を否定するような発言は珍しい。普通なら放送後に担当者に意見を言うのがスジ。よほど腹に据えかねたのでしょうね」(テレビ関係者)


 識者の意見に番組側も「報道し過ぎ」の流れに変化。


 TBSの井上貴博アナもニュース番組で「必要以上の報道はしないように心掛けたい」と戒めていた。


 ニュースは原則、新たな事実だけを報じるが、それだけでは成り立たないのが情報番組。新事実に加えて推論で時間を稼ぐ。特に番組の大半を事件に費やしていたのが2時台の「ミヤネ屋」(日本テレビ系)と「ゴゴスマ」(TBS系)。

行方不明になった日からを連日おさらい。天気以外に長く時間を割く話がない時に格好のネタになった。まさに必要以上の報道そのものだった。


「関心が高く視聴率を取れそうな話はすぐに飛びつき、あの手この手で毎日でも放送するのが情報番組の伝統みたいなものです」(元番組スタッフ)


 情報番組に対する暗黙の了解ながら、5月6日放送の「とれたてっ!」(フジテレビ系)に出演した橋下徹は、養父が殺人容疑で再逮捕報道を受け「事件は報道するべき」としながら「過度な推測は控えるべき」と提言した。


 過熱する南丹市の事件報道は思わぬ副産物を生んだ。元神奈川県警刑事の小川泰平が自身のYouTube配信で児童らしい遺体が発見された日、警察よりも先に児童と断定すると、同時接続は8.8万人に上昇。スタッフから「凄いですね」の喜びの声が上がるとたちまち炎上した。


■旭山動物園・焼却炉での死体損壊事件でも推論トーク


 好んで小川氏を起用していた「ゴゴスマ」もこの日を境に起用しなくなった。南丹市に続き旭山動物園の飼育員が園内の焼却炉で妻の遺体を焼却した疑いで逮捕されると、両番組とも即座に切り替え再び推論トークを展開した。


 情報番組がかつて「ワイドショー」と呼ばれていた時代は新聞、週刊誌に負けじと、リポーターを現地に送り独自の取材をしていたが、今やそんな体力はない。「視聴率を取るから」推論だけで扱っているとしか思えない。


 そんな流れに敏感に反応したのが10日放送の「サンデー・ジャポン」(TBS系)だった。

熊本市議の収賄容疑などに触れ「独自取材」を大々的に打ち出し現地取材までしていた。


 情報番組が問題視されているなか、テレビ朝日系の「羽鳥慎一モーニングショー」だけは南丹市の事件でも、警察発表の事実を報じるだけで、余計な推論など一切なし。遺体発見、父親逮捕を受け、少し時間を割いただけだった。情報番組で2桁視聴率を誇る人気番組。なにを詳細に報じ、なにを控えるかがわかっている。


 しょせん、関心の高い事件に多くの時間を使い扱うことで取れた視聴率は一時的なもの。番組全体の底上げにはならない。放送しないことで番組の信頼をさらに強固なものにしたのがモーニングショーだった。


 残忍な事件報道を巡る情報番組のあり方を見直すいい機会になった。


(二田一比古/ジャーナリスト)


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