生成AIで作成したとみられる不自然な「顔写真」が不正発覚のきっかけとなった。


 勤務先の個別指導塾の教え子に成り済まして英検2級を取得し、「英検スコア」を使って近畿大(大阪府東大阪市)の入試に出願したとして、大阪府警捜査1課は18日、「個別教室のトライ」天王寺駅前校の元講師、野口瑞希容疑者(35)を偽計業務妨害などの疑いで逮捕した。


 野口容疑者はトライで個別指導をしていた昨年9月、10代の教え子の男子生徒と共謀して英検2級を替え玉受験した。


「野口は自身の顔写真を使って申し込み、男子生徒の名前で英検を受けた。少年とは倍ほど年の差があったが、髪が薄くなったり、白髪交じりとか老けた感じはなく、10代でごまかし通せたようだ」(捜査事情通)


 近大は一昨年まで11年連続で志願者数全国1位。「近大マグロ」で知られ、今年度、首位に返り咲くなど、全国的な人気を誇る。その近大には、英検やTOEICなどの民間試験の成績を外国語の得点に換算できる入試制度がある。野口容疑者は本試験との比較で得点の高い方が採用されるところに目を付け、制度を悪用することを思いついた。


■男子生徒の親が「あんた、顔ちゃうやんか」と指摘


 一方、替え玉で英検を終えた男子生徒は同年11月に実施された近大の推薦入試に臨み、英語や国語の試験を受けた。


「野口は英検を受験した際の顔写真との違いがバレないように、自身と男子生徒の顔の特徴を組み合わせ、写真を加工。男子生徒は推薦入試の出願時、生成AIで作成したとみられる合成写真を提出していた。それでも誰一人、おかしいと気づく関係者はいなかった」(前出の捜査事情通)


 結局、少年は近大に合格し、出願時に使用された合成写真がそのまま学生証に使われた。


 入学手続きを済ませた今年3月、大学から発行された息子の学生証をたまたま見た男子生徒の親が、「あんた、顔ちゃうやんか」と指摘。本人を問い詰めたところ、「塾の先生がやった」と白状した。

家族が大学側に問い合わせ、不正が発覚。男子生徒は入学を取り消され、今年4月、大学関係者から府警に申告があった。


 調べに対し、野口容疑者は「替え玉受験をし、出願手続きをした」と容疑を認め、府警は男子生徒から任意で事情を聴いている。


 野口容疑者は事件発覚後、塾講師を辞職。余罪については捜査中で、個人的に替え玉受験を請け負っていたとみられる。


「親が顔写真を見て『アレ』って首をかしげるくらいだから、よっぽど違和感があったんやろう。親はまったく事情を知らず、学生証を見なかったら不正に気づかなかった。野口と男子生徒のどちらから替え玉を持ち掛けたか、2人の間で金銭のやりとりがあったかどうか、なぜ塾講師が仕事を失うリスクを冒してまで替え玉受験を請け負ったかはこれから調べる」(前出の捜査事情通)


 近大同様、民間試験を活用した入試方法を取り入れる国公私立大は増えている。同じ世代が試験に臨む大学受験と違って、不正が発覚しにくいのかもしれない。


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