フィリピン南部ダバオ州のサマル島で、現地の伝統的な建築様式を取り入れた竹製住宅、通称バンブーハウスの製造直販事業が急速に規模を拡大している。地元資本の事業者が手掛けるこの取り組みは、創業からわずか5年で州内に3つの拠点を構えるまでに成長した。
安価な休憩用から、電気配線やキッチンを備えた本格的な居住用まで幅広い需要を取り込んでおり、昨今の自然志向の高まりを背景に、ダバオ市を含む周辺地域へと普及の裾野を広げている。

その他の写真:2026年4月17日撮影

 フィリピンの伝統的な高床式住居であるバハイ・クボの知恵を現代に蘇らせたこの住宅は、素材に現地産の竹をふんだんに使用しているのが特徴だ。竹はしなやかで強度があり、通気性に優れることから、熱帯地域特有の高温多湿な気候に適している。現地で5年前に事業を開始した製造直販店「ロングノ・バンブーハウス・アンド・ファニチャー」は、伝統的な意匠を継承しつつも、現代の生活様式に合わせた機能性を付加することで、幅広い顧客層の支持を獲得した。

 製品ラインアップは、顧客の用途や予算に応じて細分化されている。最も手軽な小型モデルは40000ペソ(約11万円)から用意されており、庭先の東屋や農作業の休憩所として人気が高い。また、個人の書斎や宿泊施設としての利用を想定したベッドルーム付きモデルは180000ペソ(約48万円)で提供されている。

 特筆すべきは、住宅としての完成度を高めた最上位モデルの存在だ。280000ペソ(約75万円)の価格帯となるこのモデルには、耐久性の高いトタン屋根が採用されているほか、屋内には電気配線が施され、さらに調理用のミニキッチンまで完備されている。単なる一時的な避難所や休憩所ではなく、定住を視野に入れた「住まい」としての機能を十分に備えており、都市部から離れた場所でのセカンドハウスや、観光客向けのコテージとしての需要を確実に捉えている。

 事業の急成長を支えているのは、製造から販売、設置までを自社で一貫して手掛ける直販体制だ。同社はサマル島内のみならず、対岸の大都市であるダバオ市へのトラック配送設置料を価格に含めるという、利用者にとって透明性の高い料金体系を構築した。
これにより、購入後の追加費用の不安を解消し、近隣都市部からの注文を呼び込むことに成功した。

 同社の経営者は、この5年間の歩みを振り返り、素材の選定と職人の技術向上が信頼に繋がったと分析する。竹材は防虫処理や乾燥工程を徹底することで耐久性を高め、接合部には伝統的な結束技法と現代的な補強材を併用している。内装には、竹を細かく編み込んだ装飾パネルや、美しい光沢を持つ竹の床材が使用されており、素朴ながらも高級感のある空間が演出されている。

 昨今、フィリピン国内では環境意識の高まりや、パンデミックを経て自然に近い環境での生活を求める動きが加速している。竹は成長が早く、環境負荷の少ない持続可能な建築資材として世界的に注目を集めているが、同社の取り組みはこうした潮流をいち早く形にしたものといえる。

 店舗には連日、新築を検討する家族連れや、リゾート開発を目論む投資家らが訪れている。展示されたバンブーハウスに実際に上がり、竹の感触や風通しの良さを確かめる人々の姿からは、伝統的な住まいが持つ可能性への期待が伺える。

 同社は今後、さらなる拠点拡大と製品の多様化を目指す方針だ。将来的には、太陽光発電パネルの標準装備や、水洗トイレのユニット化など、より自立型の生活を可能にする機能拡張も視野に入れている。サマル島の豊かな自然の中で育まれた竹製住宅は、単なる伝統の再生産に留まらず、フィリピンにおける新しい住まいの形を提示し続けている。
【編集:Eula】
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