パソコンは立ち上げずに、スマホのみでネットを見るという人も多いのではないのでしょうか。
移動中やベッドの上、どこでも手軽にネットにアクセスできるのは大きな魅力ですが、そこに表示される広告が「エロ」ばかり…ということが気になった方もいるかと思います。

アダルトサイトのバナーではなく、ゲームアプリなどの広告であってもかなりアダルト色の強いものが散見されます。見ていて不快であったり、子どもと見ているときに表示されると困るなど、様々な問題視する声があがっています。
サイトによってはアダルト要素が強い広告の自主規制なども行っているとはいえ、まだまだ多く掲載されている状態です。わいせつな画像を掲載するのは法的には許されていないのですが、なぜ掲載が続けられているのでしょうか。
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■アダルト要素の強い広告が違法とならない理由
アダルト要素の強い広告が「わいせつ」であると判断されるかは、判例上「1,徒に性欲を興奮又は刺激せしめ2,普通人の正常な性的羞恥心を害し3,善良な性的道義観念に反する」ことを指します。つまり、これに触れなければ問題ないということになります。

もし「わいせつ」と判断された場合、わいせつ物陳列罪(刑法175条)が成立し2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料又はその両方が科せられる場合があります。
さらに、アダルト要素の強い広告が18歳未満の児童を表現の対象としているものである場合、いわゆる児童ポルノ処罰法上の規制も受けることになります。
ここで規制の対象となるのは写真だけではなく、場合によってはイラスト等も含まれます。これらの法律への抵触という問題は、スマホ広告のみでなくアダルトサイト一般に当てはまる話です。

■その他どのような規制がされているか
インターネット上の広告に対し法律上の規制が設けられているのは、上記のような場合に限られます。それに至らない(違法ではない)いわゆる「18禁」は法律を根拠に規制されているものではないのです。

しかし、そのような性的表現も広告主の自由に掲載されるものではなく、事業者団体のガイドラインや広告掲載サイトの自主規制による管理がなされている場合がほとんどです。
例えば、一般社団法人インターネット広告推進協議会は、そのガイドラインで「性に関する表現が露骨なもの」は掲載すべきでないと明示しています。大手サイトの広告掲載に関する自主規制にも同様の規定が多く散見されます。

■表現の自由との兼ね合いも
今夏、大手検索サイトである米グーグルがインターネット検索ページへのポルノ広告の掲載禁止を決定したことが話題となりました。性的表現を含む広告を見たくないユーザーから歓迎の声があがった一方でアダルトサイト等運営側からは厳しい規制に対する反発もあったようです。
我が国では、いわゆる青少年ネット規制法により、携帯電話事業者には利用者が18歳未満の青少年である場合に原則としてフィルタリングサービスを適用することが義務付けられています(青少年保護を目的としたフィルタリングとは青少年にとって有害な情報に触れることがないようにアクセスを制限する機能のことをいいます)。

ここで、フィルタリングの対象となる青少年有害情報には、「人の性行為又は性器等のわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報」(同法2条4項2号)も含まれています。アダルトサイトのバナー広告についてはフィルタリングされずに表示されてしまう場合も多いようです。
このように性的表現に触れないよう法令をもって保護されている青少年はもちろんのことアダルトサイトを利用せず広告をも不快に感じる成人ユーザーも多くいます。
一方で、広告主や掲載サイト側の営業や表現の自由をいくらでも制限できるというものでもないため難しい問題といえます。
反ポルノへの風潮が高まる中、広告掲載サイトの自主規制による保護が手厚くなる可能性もありますが、広告を見たくないユーザー側が広告の掲載されないアプリやサイトを利用したり、ブラウザ等の設定を変更したりするといった行動をとることは必須でしょう。

*著者:弁護士 鈴木翔太(法律事務所ホームワン。
東京弁護士会所属。「依頼者の立場に立って考える」ということを基本に据えている。)