歴史的な円安水準となるなか、「100円ショップ」が岐路を迎えています。商品の多くを海外で作って「輸入」しているビジネスモデルがもろに円安や原材料高の影響を受けて、経営を圧迫しているなどと報じられています。

インフレが止まらない米国では、「1ドルショップ」の看板を下して値上げに踏み切る動きが...。果たして日本の「100-yen shop」は、この円安と原材料高のダブルパンチに耐えられるのか。海外主要メディアも大注目です。

海外も注目「弱い円」で日本の「100円ショップ」どうなる?!

長きにわたり「デフレの象徴」とされてきた「100円ショップ」。年々品揃えが豊富になって、「えっ、こんなものまで100円で売っているの?」とうれしい驚きを提供していましたが、コロナ禍での節約志向を背景に順調に成長を続けて、2021年度の国内市場は前年度比5.8%増加の9500億円にまで拡大していたそうです(帝国データバンク)!

一大産業となった「100円ショップ」ですが、ここにきて、原材料の値上げや為替相場の影響で、厳しい防衛戦にさらされていると各国メディアが報じています。

Weak Japanese yen threatens 100-yen shops
(円安が日本の100円ショップを脅かしている:米ブルームバーグ通信)

Japan's largest 100-yen discount store Daiso besieged by sinking yen
(日本最大の100円ショップダイソーが、沈む円によって八方ふさがりになっている:英フィナンシャル・タイムズ紙)

まず注目したいのは、「円安」の表現です。ブルームバーグは「weak yen」(弱い円)を使っていますが、フィナンシャル・タイムズ紙は「sinking yen」(沈む円)としています。「円安」ですから、つい「cheap yen」(安い円)をイメージしそうですが、じつは「cheap yen」(安い円)はあまり使われません。

一番よく使われるのは「weak yen」ですので、「円安はweak yen」と覚えておきましょう。

それにしても、国際的な経済紙であるフィナンシャル・タイムズ紙までが「100円ショップ」に注目しているのは驚きです。海外から見たら、わずか100円で良質な商品が手に入る「100円ショップ」は、デフレを生き抜く日本経済の象徴だったということでしょう。

「100円」を維持するために海外生産を増やすなど、さまざまな経営努力をしてきた「100円ショップ」も、今回ばかりはどこまで耐えきれるのか...。

ブルームバーグは、大きさを変えたり数量を減らしたりして、「販売価格を100円から変更しない」企業努力を紹介しつつも、「もはや我慢比べだ(100円ショップオーナー)」といった企業側のホンネも掲載していました。

円安と材料高に、さらに追い打ちをかけるような輸送コスト増。フィナンシャル・タイムズ紙が分析するように「besieged(八方ふさがり)」といった状況なのでしょうか。海外メディアの記事を読んで、私たちの生活を支えてくれている「100円ショップ」の戦いをますます応援したい気持ちになりました。

米国版「100円ショップ」、値上げで1ドル25セントに!

「100円ショップ」のような均一価格で商品を提供するビジネスは、各国に存在します。米国では「1ドルショップ」がその代表格です。なんと、「1ドルショップ」の運営会社、ダラー・ツリー社では値上げを決め、35年ぶりに「1ドル」の看板を下ろすと発表して話題になりました。

Dollar Tree raises prices to 1.25 dollars
(ダラー・ツリー社は、価格を1.25ドルに値上げする:米メディア)

Dollar Tree is ditching 1 dollar forever
(ダラー・ツリー社は、永遠に1ドルを捨てた:CNN)

ダラー・ツリー社は、日本の「100円ショップ」にあたる「1ドルショップ」をチェーン展開してきましたが、2021年末に商品価格を1ドル25セントに値上げすると発表して話題になっていました。

35年間にわたり「1ドル」を守ってきたダラー・ツリー社。ITバブル崩壊もリーマンショックも乗り越えてきた「1ドルショップ」が、今回ばかりは早々に白旗を揚げて、値上げしたことに批判的な報道もありました。

それでも、CNNが「1ドルを永遠に捨てた」と報じているように、同社が「一時的な値上げではない」と宣言していることから、「1ドルショップ」は永遠に戻ってこないのかもしれません。

海外の仲間が次々と白旗を揚げるなか、日本の「100 yen shop」はどこまで「100円」の聖域を死守できるのか......。

海外メディアが「100 yen shop」に注目する理由はそこにあるようです。

それでは、「今週のニュースな英語」は、「weak yen」(円安)に関連する表現を紹介します。

Japanese yen is weak against US dollar
(日本円は米国ドルに対して円安だ)

Japanese yen is strong against US dollar
(日本円は米国ドルに対して円高だ)
※「円安」の反対の「円高」は「strong」を使います

Weak yen harms economy
(円安が経済に打撃を与えている)

報道によると、国内でもすでに店じまいをする「100円ショップ」が増えているとのこと。何とか「100円」を維持してもらいたい気持ちはありますが、これまで私たちの生活を支えてくれた努力に感謝して、健全な価格戦略で息の長い経営を実現してほしいものです。

(井津川倫子)

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