新型コロナは急拡大しているものの、3年ぶりに行動制限のないお盆。感染対策をして帰省する人も多いのではないでしょうか。

久しぶりに会う親は「急に老けた」と感じるもの。介護や認知症が頭をかすめたら、親の資産を守る対策を。そこで、親の資産を守る手続きについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。

【1】資産の取りまとめ

預貯金の通帳、保険証券、不動産の権利書、各種契約書など、お金が絡む書類が実家のどこにあるか知っていますか。この機会に、それらを整理しましょう。

親には「これから安心して暮らすための資産の棚卸し」と話してみて。預貯金以外の資産を可視化することで、老後資金の不安を払しょくできる方もいるでしょう。

子どもとしては、大切な書類のありかがわかればOK。万が一の際、家じゅうを探しまわる面倒から解放されます。特に’24年4月から相続不動産の登記が義務化されるので、不動産の権利書はしっかり確認しておきましょう。

【2】貸金庫の利用

重要書類や高級な金品などの保管には、銀行の貸金庫がおすすめです。資産家でなくても高齢者宅にはタンス預金が多く、盗難や振り込め詐欺に遭う一因です。

貸金庫の鍵を親が持つことにすれば、親のプライドを傷つけることなく、大切なものを一括して保管できます。使用料はサイズにより年1万~2万円かかりますが、大きな安心が手に入ります。

■勇気を出して親とお金の話を

【3】預貯金や保険の代理人手続き

親が入院などで預貯金の入出金などができない場合でも、事前に子どもなど家族を代理人に指名して、代理人キャッシュカードを発行しておくと安心です。

「暗証番号を聞けば親のカードが使える」と思いがちですが、本人以外がキャッシュカードを使うのは本来NG。また、施設入所の費用など、ATMの限度額を上回る出金がしたい場合にも困ります。

代理人指名の手続きは、預金者本人が銀行で行います。必要書類や代理人が同行するかなども銀行によりますから、お問い合わせを。

同じように、生命保険や医療保険でも代理人を指定できます。本人が認知症などで保険金請求ができなくなっても、指定された代理人なら保険金を請求できます。

どちらも認知機能が低下してからでは手続きできません。「早すぎる」今がちょうどいいのです。

【4】地域包括支援センターの確認

高齢者は「介護のお世話になるのはもっと先」と考えるものですが、転倒して骨折し、入院生活で認知症を発症などといった事態が明日起こる可能性も。

お世話になるかもしれない地域包括支援センターを、親子で確認しましょう。

お金の話は親子でもしづらいものですが、先延ばしの末、手遅れ……では困ります。親の資産を守るのは、親が楽しく長生きするために必要なこと。「新型コロナの恐怖もあるから」と勇気を出して切り出してみましょう。

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

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