「気づけば、父がやってくれたことをそのままいまの自分がやっている気がします。僕の子供たちが空手をやっていることを、父はとても喜んでくれています」

そう話すのは、俳優の永井大(48)。

今年3月、約24年にわたって所属した芸能事務所「ケイダッシュ」を退所し、独立することを発表した。

スーパー戦隊シリーズ『未来戦隊タイムレンジャー』(テレビ朝日系)、『特命係長 只野仁』(テレビ朝日系)、さらにNHK大河ドラマ軍師官兵衛』など、数々の作品で存在感を放ってきた彼だが、最近は俳優業の傍ら、自ら空手道着姿になり、小学生を相手に空手の指導を行っているのだという。

「週に1回、小学校を借りて教えているのと、週末などに青空教室を開いています。僕の息子と娘も生徒の一人なんです。僕も、父に空手を教わったおかげでいまの自分があると思っているので、子供たちにも同じことをしてあげたいんです」

指導して2年ほどになるそうだが、先日の大会では、息子が大きな成果をあげたのだとうれしそうに話す。

「息子が昨年12月の関東大会に出て優勝したんです。僕はセコンドについていたのですが、優勝が決まった瞬間、息子は僕のところへ駆け寄ってきて抱きついてきた。そして、『勝たせてくれてありがとう』って言ったんです。

勝ったのは彼の実力なんですけど、僕を立ててくれたんです。このときの『勝たせてくれてありがとう』は、とても心に響く言葉でした」

永井が子供たちに空手をやらせたいと思った理由が“礼儀”を教えたかったから。その精神が着実に息子の中に芽生えていたのだ。

「大会には 80人ほどが出場していて、かなり実力のある選手たちが集まっていました。

そのなかで優勝できた経験は、大きな自信になると思います。

それで今度はプレッシャーを感じる経験をすることになると思う。追われる立場のプレッシャーですね。そこは結構ストレスになるんじゃないかな。上手に寄り添ってあげたいですね」

この息子からの言葉とは別に、もう一つ永井の胸に刻み込まれている“家族の言葉”があるという。

「僕も子供のころはいつも父親と一緒にトレーニングを重ねていました。でも、父に反発した時期があったんです――」

彼が中学 1年生のころ、母親が学校に呼ばれるなど、高校進学が危うくなるほど荒れた時期があったという。

「そのとき、僕の勉強机に一通の手紙が置いてあったんです。父からでした。今も大切な宝物としてとってあります」

手紙には次のように書かれていた。

《大きくたくましく、誰よりも大きな人間になってほしいという願いをこめて『大』と名付けた。親として当たり前のことをやっているつもりだ。

一緒にお前を伸ばしたいって気持ちもあるからやっている。一方お母さんは朝ごはんや夕飯づくり、片付け・掃除をやってくれる。これを当たり前でやっていることの意味をわかってほしい。

それから、親としておまえに条件が3つある。まず朝は自分から起きてこい。学校に行く前に予習をしろ。3つ目は先生の目を見て授業を受けろ。お前は今、断崖絶壁から転げ落ちる立場だ。親や親戚たちが手を差し出しているのだから、お前から手をつかんでくれないとこのまま断崖絶壁から落ちてしまう。だから条件を守りしっかりと目標を持ってやれ》

そして最後に「画竜点睛」と記され、手紙は結ばれていたという。

「何事も慎重にパーツを組んでいって、最後の最後まで気を抜くな、というメッセージです。今でも大切な言葉です」

父と息子、2人から送られた言葉は、独立して新たなチャレンジをしていくという彼の大きな支えになるだろう。

空手で学んだ精神は俳優業にも生かされているというが、これからのキャリアはどう考えているのだろう。

「今後は、舞台を積極的にやっていきたいと考えています。舞台って、お客さんが毎回違って、そのお客さんたちの呼吸を感じながらみんなで作り上げる素敵な空間だなと思ってるんです。稽古を重ねて、本番に挑む。そこは舞台も、空手の試合も同じですね」

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