本作は飲食業のトータルプロデュース会社「KURA」に勤務する大庭七苗(川口春奈)が主人公。父親の突然の失踪をキッカケに、39歳の長女・成澤六月(木南晴夏)と19歳の三女・大庭八海(畑芽育)、そして29歳の次女・七苗の三姉妹が実家に集まるところからストーリーが始まるヒューマンラブドラマだ。
1話では、六月が浮気をキッカケに別居していた夫のフリーカメラマン・成澤邦夫(山中聡)から離婚をつき付けられたり、八海がマッチングアプリで知り合った男性・立花祐輔(兵頭功海)から交際0日婚を申し込まれたりなど、3姉妹が抱える三者三様の悩みが浮き彫りに。中でも、七苗が感情を爆発させるシーンが印象的だった。
彼氏なしの29歳女性が“結婚指輪”をしていたワケ
七苗は母親のいない大庭家で、幼少期から家族を支えてきたしっかり者。その能力は仕事でも十二分に発揮されており、勤務先ではその仕事ぶりを買われて最年少で副部長に抜擢されるなど、社内では“希望の星”として期待を寄せられている。そんな七苗は仕事先のレストランに訪れた際、元彼・小森誠(塩野瑛久)にバッタリ遭遇する。2人で話し始めたタイミングで、誠の妻で妊娠4か月の美優(高嶋菜七)が登場。3人で話し始めると、七苗は自分の左手薬指へ、2人にバレないよう指輪をはめる。指輪の存在に気づいた美優から「大庭さんもご結婚されるんですか?」と聞かれると、「まだではありますが、そろそろ近いような、そうでもないような」と嘘をつく。
元カノに結婚の予定があることに安心したのか、誠に「良かった、幸せで」「仕事ばっかりじゃ寂しいもんな」と言われ、どこかモヤモヤ感を覚えた表情を見せる七苗。そして、この時浮かべた表情の意味は、後半に彼氏がいるという嘘が発覚した時に明らかになる。
仕事で成功しても、結婚しないと幸せ認定されない
六月と八海から嘘をついたいたことを咎められた七苗は「お母さんが出てった時、むっちゃんは海外に行って、八海はまだチビで、その日から私が家のこと全部やってきたの」「毎日気を張って頑張ってきたの。なのに『仕事だけじゃ寂しい』とか、『ホワハラ』とか、『希望の星』とか言われて、『自分のやりたいこと、何だっけ』てね。どうする? 29にして完全迷子ですよ」と声を荒らげた。七苗は後輩の育成に苦労しながらも仕事にやりがいを持って取り組んでいる印象。しかし、世間は“仕事”で成功するだけではなく、“恋愛(結婚)”でも充実していなければ、幸せ認定してくれない。
「自分のやりたいこと、何だっけ」
もちろん、幸せは主観的な感覚であり、外野の声に耳を傾ける必要はない。それでも、周囲からいろいろ幸せの定義を押し付けられると、その主観的な感覚は簡単にブレてしまう。七苗は恋人がいないために、結婚がいかに人生を豊かにしてくれる大切な要素なのかを、周囲から何度も言われ続けていたのだろう。だからこそ「『自分のやりたいこと、何だっけ』てね。どうする? 29にして完全迷子ですよ」と口にしていたように思う。
そんな七苗ではあるが、記憶喪失の謎の男・コウタロウ(松下洸平)との出会いをキッカケに、恋愛での幸せを獲得できそうな雰囲気。七苗はどのように「何が幸せなのか」を見つけていくのか、そんな彼女の今後に期待したくなるドラマだ。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。