もし店員に対して理不尽な要求を押し付ける人を見たら……あなたならどうしますか?

 今回は、お惣菜屋さんで起きたトラブルに遭遇した女性のエピソードをご紹介しましょう。

穏やかな店内に突然の理不尽な要求

 長塚沙織さん(仮名・34歳)は、仕事帰りに駅前の小さなお惣菜屋さんへ立ち寄りました。

「夕方の店内はそこそこ混んでいて、仕事帰りの人たちが静かに列を作り、順番を待っていました。
私は『今日はコロッケときんぴらにしようかな?』そんなふうに考えながら並んでいたんですよ」

 どこにでもある穏やかな夕方の風景。しかし、その空気は突然、不穏なものへと変わりました。

お惣菜屋で“迷惑おじさん”に困っていたら…女性客の“ひと言”...の画像はこちら >>
「50代ぐらいのおじさんが、若い店員の女の子に『だからさぁ! これじゃなくて揚げたばっかのやつ出してよ!』とわがままを言って突っかかっていたんですよね」

 その言い方は明らかに一方的で、要求というよりも“命令”に近い口調。周囲の空気を読もうともしない強引さが、店内の雰囲気を一気に重くしていったそう。

 店員の子はまだ20歳前後で「申し訳ありません、こちらが今一番新しいものになります……」と困ったように唇を噛み締め何度も頭を下げていました。

「ですがおじさんは納得せず『こんな冷めたの食えるかよ! 裏にあるのは分かってんだよ。いいから出せって!』と詰め寄って。いい加減にしろよ! という感じでした」

張り詰めた空気の中、響いた声の主は

 おじさんの声はどんどん大きくなり、お店はピリピリムード。後ろに並んでいる人たちも明らかに迷惑そうにしながらも、誰も口を挟めずにいたそう。

「店員の女の子が気の毒で仕方がありませんでしたが……私も助けてあげる勇気がでなくて」

 すると、沙織さんのすぐ後ろに並んでいた買い物袋を持った60代ぐらいの女性が、ため息をひとつつき、ゆっくり前へ出て「ねぇ、ここはファミレスじゃないのよ?」とおじさんを指差しました。

 その一言で、店内の空気がぴたりと止まりました。

「一瞬店内が静まり返り、おじさんは『はぁ? うるせーな! 黙ってろよ』と食ってかかりましたが、おばさんは全く怯まず『揚げたてが食べたいなら家で揚げなさいよ!』と倍の声量で言い返したんですよね」

 遠慮も忖度もない、まっすぐな正論。その迫力に、張り詰めていた空気が変化していったそう。


遠慮のない正論が流れを変える

「おじさんは『な、なんだよ……関係ないだろ』と必死に言い返していましたが、おばさんは『関係あるに決まってるでしょ? みんな並んでるんだから!』と詰め寄り、その言いっぷりが気持ちよくてついうっとりしながら見入ってしまいました」

 これまで周囲を押さえつけていたはずのおじさんの勢いは徐々に失われ、代わりに周囲の視線が一斉におじさんへと向けられていきました。

お惣菜屋で“迷惑おじさん”に困っていたら…女性客の“ひと言”で空気が一変! 拍手まで起きた理由
※画像はイメージです
「そして『店員さんはあなたのお母さんじゃないの。わがまま聞く義理ないでしょ? はい、分かったらさっさと商品受け取って!』とおじさんのエコバッグを突いたんですよね」

 その逃げ場のない正論とはっきりとした指摘に、場の流れは完全に変わっていました。

「おじさんは何か言い返そうとして口を開きかけましたが、周りの視線に気づき我に返ったのか、急に態度も声も小さくなっていったんですよ」

 そして「じゃあそれでいいよ」とごまかすように言うと、観念したようにコロッケを受け取り、逃げるようにそそくさと店を後にしたそう。

女性はメンチカツを10個買っていった

「その瞬間、店内に小さな拍手が起きて……店員の子は真っ赤になりながら、何度も頭を下げていました。私は何だかヒーローものの良い映画を観たような気分になり、とてもスッキリしたんですよね」

 張り詰めていた空気が一気にほどけ、店内には本来の穏やかな時間が戻っていきます。

「おばさんは会釈で周りに応えながら、メンチカツを10個買っていきました。その数が聞こえてつい、『もしかしたらこの女性は大家族のお母さんで、揉め事を解決することに慣れているのかも?』なんて勝手な妄想をしてしまいました(笑)。私も次に理不尽な目にあっている人を見たら、彼女のことを思い出して、助ける勇気を持ちたいですね」と微笑む沙織さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
Twitter:@skippop
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