4月13日にスタートした月9『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)では、数々のヒット作を担ってきた北村匠海さんが満を持して連ドラ初主演、そして初の教師役を務めています。

 北村さんはその柔らかい物腰から「透明感」や「癒し」のイメージが強い人も多いと思います。
ですがこれまでの作品をよく見ると、それだけに留まらない“変幻自在のエンターテイナー”だということが見えてきます。

月9主演、北村匠海は「癒し」だけじゃないと言えるわけ。激しさ...の画像はこちら >>

透明感や癒しを印象付けた『君の膵臓をたべたい』

 北村さんの透明感を印象付けたのは、2017年に浜辺美波さんとダブル主演を務め、ブレイクするきっかけとなった映画『君の膵臓をたべたい』でしょう。他者との関わりを避け、存在感を消して過ごす“僕”を静かに演じました。北村さんの透き通った発声、声の余韻や間の取り方から“僕”が純粋で実直なことが伝わる作品でした。

 同じく癒しのイメージを残したのは、2025年の連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)。ヒロインの夫で『アンパンマン』の原作者・やなせたかしさんをモデルとした柳井嵩役を好演しています。喜怒哀楽は最小限に、視線の運びや息づかいで心の温度を調整し、時代の重さや嵩の懸命さを表していました。

『東リベ』『幽白』では激しい不良役を熱演

 一方で、北村さんの激しさを垣間見れる作品も多々存在します。2021年から始まった主演映画『東京リベンジャーズ』シリーズと2023年の配信ドラマ『幽☆遊☆白書』(Netflix)がその代表例。

月9主演、北村匠海は「癒し」だけじゃないと言えるわけ。激しさも持つ“最強のエンターテイナー”になるまで
映画『東京リベンジャーズ』オリジナル・サウンドトラック(SMR)
『東京リベンジャーズ』ではしがない元ヤンで、暴走族チームの抗争に交わり成長していく花垣武道を熱演。武道としてタイムリープを繰り返すごとに少しずつ佇まいを変え、繊細な心情の違いを描き出し、その拳に力強さを乗せていきました。

コメディやダークな役での新境地

 伝説的漫画の実写版『幽☆遊☆白書』では、主人公・浦飯幽助役に。札付きの不良として原作以上にダークな空気感を醸し出していました。アクションにおいてもケンカ慣れした動きや荒々しさがしっかり表現され、北村さんが再現度高く幽助役をこなしたことに原作ファンも驚くほど。粗暴さの裏にある幽助の熱さ、優しさもしっかり体現しています。


 この2作だけでも透明感や癒しとは180度異なる「激しさ」に振り切れる稀有な役者であることを証明しているでしょう。

月9主演、北村匠海は「癒し」だけじゃないと言えるわけ。激しさも持つ“最強のエンターテイナー”になるまで
Blu-ray『とんかつDJアゲ太郎』(ポニーキャニオン)
 意外なところでは、主演映画『とんかつDJアゲ太郎』で突き抜けたコメディもこなしています。とんかつの被り物を身につけたり全身タイツ姿を披露するなど、底抜けに楽しい勝又揚太郎に扮し、その役柄の幅を広げました。

 さらに昨年の主演映画『愚か者の身分』では「第35回日本映画批評家大賞」主演男優賞も受賞。その選考理由において「それまでのイメージを削ぎ落とし、自身のなかにスペースを作って、また新しく創り上げる、それを繰り返している」と評された北村さんの演技。追い詰められ、闇ビジネスに沈んでいくも、そこから抜け出そうとする松本タクヤ役で、さらなる新境地を切り拓いています。

DISH//のボーカルとして感情豊かに表現

 その俳優としての土台には、並行して活動してきた音楽業の影響も大きいはず。DISH//のボーカルとして高く評価されており、YouTube動画『THE FIRST TAKE』で北村さんが歌唱したDISH//の楽曲『猫』が再生数2.3億回を突破。

 DISH//での北村さんは圧倒的な表現力を駆使し、感情の乗せ方に長けたフロントマン。透き通ったまっすぐな歌声で聴く人の心を落ち着かせ、激しい感情を歌に乗せ、物語を創りあげています。

 俳優業と音楽業のどちらでも「繊細さと激しさ」をしっかり共存させることが出来る北村さん。様々なタイプの作品に出演し、多様な価値観を歌い上げることで、どんな役でも、どんな歌詞でも巧みにその世界を行き来する変幻自在なエンターテイナーとなったのです。

『サバ缶、宇宙へ行く』ではどうなる?

『サバ缶、宇宙へ行く』では、ポンコツながらまっすぐな新米教師・朝野峻一として、くせ者揃いの生徒に真っ向からぶつかっています。

 海の近くに住み、教師になるという夢を叶えたのに、赴任先の水産高校は廃校寸前で、授業をしても生徒に相手にされない。
現実を突きつけられ峻一の希望が虚しさへと変わることから物語は始まります。

 そんな中で、港の厄介者である大量発生したクラゲを前に、峻一が町や生徒を巻き込んで解決策を考えることを提案し、徐々に風向きが変わっていく。

 閉塞した土地において、価値あるものを作りあげていくことで、目に光が宿っていく生徒達。そして峻一と生徒達は、「サバ缶を宇宙食にする」という目標を掲げることになります。

新たな顔を見せてくれるはず

 今作では、落ち着いて物事を客観視出来る峻一を通し、北村さんの「透明感」を堪能しつつ、根底にある熱さで生徒と一体となって夢を切り拓いていく姿が見られるはずです。

 もはや一つのイメージで括ることが出来ない多才な表現者である彼が、待望していた教師役として、どう生徒と向き合い、どう成長していくのか。北村さんがこの作品でまた一つ、新たな顔を見せてくれることは間違いなさそうです。

<文/こじらぶ>

【こじらぶ】
ライター・コラムニスト。上智大学大学院外国語学研究科修了・言語学修士。ドラマ、男性&女性アイドル、スポーツ、エンタメ全般から時事ネタまで。俳優、アイドルなどのインタビューも。X: @kojirabu0419
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