4月27日から配信開始されたNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』が、初週から「今日のシリーズTOP10(日本)」で1位を獲得するなど、上々の滑り出しを見せている。カリスマ占い師の故・細木数子の人生をドラマ化した本作。
かつて一世を風靡した細木がどのような人生を歩み、“視聴率女王”に君臨したのかなどを描いていく。

「突然の濡れ場」は本当に必要?『地獄に堕ちるわよ』に見る、N...の画像はこちら >>
 戦後の日本で飢えに苦しみ、その後も様々な修羅場を生き抜いてきた数子は、肥大化した自らの欲を満たすため、一心不乱に突き進む。その姿には、従来の戦争を題材に扱ってきた作品とはまた異なる“戦争が残した爪痕”が感じられる。また、“テレビタレント”というポップなイメージが強いが、その裏の顔も描かれており、当時を知る人にとっては新鮮に映るだろう。

「突然のダンス」や「濡れ場」は必要か

 ストーリー自体はおおむね好評ではあるが、演出にモヤモヤ感を抱いた視聴者も一定数いる。

 第1話では、戸田恵梨香演じる数子がキャバレーで順調に人気を獲得していく中、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』終盤のようなダンスシーンが突如として開幕。その後は、キャバレーのオーナー・落合元(奥野瑛太)とのラブシーンが始まり、数子が喘ぎ声を出したり、悶えた表情を浮かべたりするなど、なかなかに濃密な内容だ。

 2026年2月配信で、はるな愛の半生を描いたNetflix映画『This is I』でも、急にダンスシーンが映し出される瞬間がある。同作は音楽要素の強い作品でもあるため、歌に合わせて踊る描写が出てくることに大きな違和感はないが、それでも“唐突感”はあった。

「突然の濡れ場」は本当に必要?『地獄に堕ちるわよ』に見る、Netflix“過激テンプレ”の正体
Netflix映画『this is I』
 またラブシーンに関しては、『地面師たち』をはじめとしたNetflix作品でも、急に濃厚なベッドシーンが始まるケースは珍しくない。“一夜をともにした”こと自体は、直接的なラブシーンを挟まなくても十分に表現できる。だからこそ、「ここまで濃密に描く必要があるのか?」と疑問を抱いてしまう。

 ダンスシーンやラブシーン、さらにはバイオレンスなシーンといった“昭和的な表現”はNetflix作品で定番化しているが、レビューやSNSでの反応を見ると、脈絡を無視して描かれることに辟易している視聴者もいるようだ。


昭和的な表現を求める視聴者たち

 安易に過激なシーンを採用しているようにも思えるが、『地面師たち』や『地獄に堕ちるわよ』といった作品は、大きな注目を集めていることも事実だ。つまり、“昭和的な表現”を求める視聴者が一定数存在していることの証左と言える。

 民放ドラマではコンプライアンスの意識が高まり、過激な表現は自重されるようになった。それでも、視聴者の中には過激なフィクションを求める欲求が確実に存在しており、その欲を埋める役割としてNetflix作品が求められているのだろう。

 実際、ショート動画が全盛の今。「面白いかどうか」だけではなく「刺激的かどうか」も視聴継続の条件になっているため、むしろ昭和的な表現は最適解と言える。それも民放ドラマでは真似ができない“配信作品だけに許された再現性の低い表現”であり、演出として入れない手はないのかもしれない。

過激でなくても面白いNetflix作品はある?

 ただ、Netflix作品は昭和的な表現ばかりをしているわけではない。ここからは、刺激的なシーンは抑えめで面白いNetflix作品を3つ紹介したい。

 まずは2024年4月に配信開始された映画『シティーハンター』。「さすがNetflix作品」と思わせる壮大なスケールで夜の新宿を描き、スマホの小さな画面で視聴しても十分な臨場感を味わえる。

「突然の濡れ場」は本当に必要?『地獄に堕ちるわよ』に見る、Netflix“過激テンプレ”の正体
Netflix映画『シティーハンター』
 映像の迫力もさることながら、冴羽獠を演じる鈴木亮平がしっかりと二枚目と三枚目をこなす表現力の高さに、ただただ感心させられる。下品なノリもあるが、鈴木がやるとなぜか不快感を抱かせないのはさすがだ。また、獠のバディ・槇村香役の森田望智もテンションに違和感がなく、作品にフィットしているので安心して見ていられる。


ノンストップで楽しめるハラハラ感

 次は2025年4月に配信開始された映画『新幹線大爆破』。爆弾を仕掛けられた新幹線と、その新幹線に指示を送る総合指令所の2つを舞台に繰り広げられるノンストップアクションだ。「列車の速度が時速100kmを下回ると爆発する」というベタな設定が、むしろ見やすくて良い。

「突然の濡れ場」は本当に必要?『地獄に堕ちるわよ』に見る、Netflix“過激テンプレ”の正体
Netflix映画『新幹線大爆破』
 新幹線の車掌・高市和也(草彅剛)と、新幹線総合指令所の総括指令長・笠置雄一(斎藤工)というタイプの違うイケおじが連携する様子は胸熱。また、「犯人は誰なのか?」という謎解き要素もあり、圧倒的な没入感を楽しめる。

佐藤健のカッコ良さを浴び続けるドラマ

 最後は2025年7月に配信開始されたドラマシリーズ『グラスハート』。孤高の天才音楽家・藤谷直季を演じる佐藤健のカッコ良さをただただ浴び続けるドラマだ。

「突然の濡れ場」は本当に必要?『地獄に堕ちるわよ』に見る、Netflix“過激テンプレ”の正体
Netflixシリーズ『グラスハート』
「ミュージシャンでしか生活できないんだろう」と思わせる社会不適応な一面に、「守ってあげたい」という感情を抱かずにいられない。さらには、ソロアーティストとしてやっていける才能を持ちながらも、バンドという形式にこだわる仲間思いなアツい一面も持っている。“ただただ鼻につくスカした人物”ではないのもたまらない。

配信プラットフォームの“勝ち筋”とは

 過激な表現をフックにした「刺激の強い作品」が話題をさらう現状は、ある意味で配信プラットフォームの勝ち筋なのだろう。しかし今回挙げた3作のように、安易なインパクトに頼らずとも、視聴者を惹きつけられる力作は確実に存在する。

 昭和的な過激表現に辟易するか、それとも非日常の刺激として楽しむか。その選択肢がどちらも用意されていることこそが、現在の配信バブルの面白さとも言える。


 どうしても刺激の強い描写が話題になりがちだが、それだけではないのが配信サービスの懐の深さだ。話題作の波に乗りつつも、その時々の気分に合わせて、自分にとっての正解を自由に選べる環境を楽しみたい。

<文/浅村サルディ>

【浅村サルディ】
芸能ネタ、炎上ネタが主食。好きなホルモンはマキシマム ザ ホルモン。
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