「人生100年時代」と言われますが、先行きの見えないこのご時世、老後の経済的な不安は増すばかりです。

今年59歳を迎えたメンタルコーチで累計著書113万部の作家・ワタナベ薫さんは、同世代女性たちからさまざまな悩みを日々相談されるなかで、老後の不安にどう向き合えばいいのかをテーマに、新刊『おひとりさまの生存戦略 人生100年時代をご機嫌に生きるスキル』を上梓しました。


「長生きするのが怖い……」おひとりさまが 「老後破産」を招か...の画像はこちら >>
自身も離婚を経験し、おひとりさまとして生きるワタナベさんの著書から、老後の「お金の不安」について、今から備えるべき対策や心構えを紹介します。

節約がむなしくなる物価高の嵐 

スーパーに行けば、数十円高い国産の野菜をカゴに入れるのをためらい、特売のシールが貼られる時間を気にする……最近のスーパーの景色は、今までとは明らかに違います。

私たちが日々手に取るあらゆるモノの値段が上がり続け、かつてのような「底値」はもう二度と戻ってきません。

一方で、私たちの給料や年金はどうでしょうか? 物価の上昇スピードに追いつけず、実質的な価値は目減りする一方です。これまでは「100円の節約」が確かな成果を生んでいましたが、今は「寝ているだけで、通帳のお金の価値が勝手に削られていく」時代なのです。

そうやって爪に火を灯すような節約をしているのに、ふとした瞬間に「老後2000万円」や「介護費用500万円」といった巨大な数字が頭をよぎり、すべての努力がむなしくなる。「こんな数十円の節約で、あの巨大な壁を乗り越えられるわけがない」と、絶望感に襲われるのです。

うっかり100歳まで生きてしまうかも……

いつからでしょうか。「長生き」という言葉が、お祝いの言葉(メデタイ)ではなく、恐怖の対象(コワイ)に変わってしまったのは。

かつて「人生50年」と言われた時代なら、定年退職と同時に人生の幕引きを考えることができました。しかし、私たちは「うっかり100歳まで生きてしまうかもしれない」初めての世代です。

「長生きするのが怖い……」おひとりさまが 「老後破産」を招かぬために、今からやるべきことは?
※画像はイメージです。以下同じ
医学の進歩は素晴らしいことですが、経済的な準備が追いついていない私たちにとっては、「体が死ぬ前に、お財布が死んでしまう」ことは、恐怖以外の何物でもありません。これが、現代特有の「長生きリスク」という残酷な現実です。

そして、多くの女性が見落としている、もう一つの落とし穴があります。
それは、「おひとりさま」になるタイミングと、お金の問題が同時にやってくることです。

現在パートナーがいらっしゃる方も、統計的には女性の方が長生きする確率が高いため、最終的には「ひとり」になる可能性が極めて高いのが現実です。その時、何が起きるか。想像したことはありますか?

「二人の生活費が半分になるから大丈夫」というのは、大きな勘違いです。光熱費も、基本料金も、家の修繕費も、二人が一人になっても半分にはなりません。

生活のダウンサイジングは想像以上に難しいものです。それなのに、入ってくる「年金」だけは、残酷なまでにガクンと減ります。

夫の扶養に入っていたり、共働きでも夫の収入がメインだったりする場合、夫が亡くなった後に妻に残される遺族年金は、それまでの世帯収入の半分、あるいはそれ以下になるケースが少なくありません。頼みの綱だったパートナーを失った悲しみの中で、同時に「経済的な困窮」という現実まで突きつけられる。これが今までの常識でした。

「節約」と「貯金」の一辺倒は危険信号!

物価が上がり続ける今、多くの真面目な女性たちが、不安をかき消すために真っ先にとる行動があります。それは、さらなる「徹底的な節約」と「貯金」です。

「長生きするのが怖い……」おひとりさまが 「老後破産」を招かぬために、今からやるべきことは?
貯金
「入ってくるお金が増えないなら、出るお金を減らして、残りを銀行へ」。
そう考えて、スーパーをハシゴし、電気代を気に病み、余ったお金をすべて銀行の普通預金に入れる。

通帳の数字が少しでも増えれば、「私は未来を守っている」という安心感が得られる気がするからです。

昭和の時代は、それで大丈夫だったのですが、いまだにその「銀行神話」から抜け出せない人々が多いのも事実です。

しかし、あえて厳しいことを言わせてください。その「銀行に預けておけば安心」という思考停止こそが、あなたの老後を確実に追い詰める最大の「失敗」になる可能性があります。

なぜなら、インフレの時代において、銀行に眠らせている現金は、「何もしていないのに、勝手に価値が下がっていく」からです。

銀行に眠らせた現金はなぜ目減りするのか 

わかりやすく説明しましょう。たとえば、あなたが汗水垂らして貯めた「100万円」が銀行にあるとします。今の日本の金利では、銀行に預けてもお金は増えません。10年後も通帳の数字は、微々たる利息がつく程度で、ほぼ「100万円」のままでしょう。

「長生きするのが怖い……」おひとりさまが 「老後破産」を招かぬために、今からやるべきことは?
ゆうちょ 郵便貯金
しかし、その間に物価が上がり続けたらどうなるでしょうか? 今100万円で買えている車や介護サービスが、10年後には120万円や130万円出さないと手に入らなくなっているかもしれません。

つまり、通帳の数字(額面)は守れていても、そのお金で買えるもの(実質的な価値)は、あなたが寝ている間に目減りしているのです。

一生懸命節約して守ったはずの虎の子の資産が、ただ銀行に置いておくだけで、空気のように蒸発してしまう。
これが、「貯金一辺倒」の恐ろしいリスクです。

お金=「貯金(守るもの)」から「戦略(回すもの)」へ

私たちは今すぐ「夫依存」の財布から脱却し、自分自身の「稼ぐ力」と「守る術」を持たなければならないのです。

「長生きすればするほど、ジリ貧になっていく」。この未来予想図こそが、私たちが漠然と抱えている恐怖の正体なのです。

「長生きするのが怖い……」おひとりさまが 「老後破産」を招かぬために、今からやるべきことは?
財布 貧乏 女性
「節約しなきゃ」「もっと切り詰めなきゃ」。そうやって、今の楽しみをすべて犠牲にして、見えない未来のために「今」を奴隷のように過ごす。

でも、ちょっと待ってください。私たちは、恐怖に怯えるために長生きをするのでしょうか? 違いますよね。

この恐怖から抜け出すために必要なのは、これ以上食費を削ることでも、電気を消して回ることでもありません。

「お金=貯金(守るもの)」という古い思い込みを捨て、「お金=戦略(回すもの)」へと、頭の中のОSを入れ替えることなのです。

お金の不安を消す方法は、「頼れる先」を分散すること

収入の入り口を一つに絞らないこと。これこそが、老後に向けて心の平穏を手に入れる唯一にして最強の方法です。

私たちの親世代は、「一つの会社、あるいは一人の夫(大黒柱)に一生ぶら下がる」という「一本足打法」で生き抜くことができました。当時は金利も高く、退職金も年金も十分だったからです。

しかし、今はどうでしょう。「夫の給料だけ」「年金だけ」「貯金の切り崩しだけ」。

このように、たった一つの「支え」に命運を託してしまうと、その支えが揺らいだ瞬間、あなたの生活は破綻します。

この「もしも」の恐怖が、あなたの脳内を占領し続けるのです。

100年人生を安定させる「三つの財布」

不安を消すためには、支えを分散すること。つまり、これからの100年人生を安定させる「三つの財布」を持つことです。ここは重要項目です。

①「稼ぐ」財布 (勤労収入)
定年後も、月3万でも5万でもいいので、自分の手で稼ぐお金です。社会とのつながりを保つ意味でも重要です。
できれば知的労働、もしくは在宅で体力を使わずに収入を得る方法を見つけましょう。体力は若い時のままではないからです。

②「守る」財布 (公的年金)
死ぬまでもらい続けられる、国が用意した終身保険。
これは生活の最低保証(ベース)です。

③「育てる」財布 (資産運用)
あなたが寝ている間も、お金自身が働いて稼いでくれるお金(配当や利息)。

想像してみてください。一本足のテーブルは、少し押しただけで倒れてしまいます。
しかし、三本足のテーブルはどうでしょうか? 多少地面が揺れても、簡単には倒れませんよね。生きるためのお金もそれと同じ原理です。

「老後2000万円なきゃダメだ」と、一つの巨大な貯金箱を作ろうとするから、果てしない道のりに絶望してしまうのです。

そうではなく、「小さくてもいいから、三つの頼れる先から水がチョロチョロと流れ込み続ける状態」を作る。これなら、「貯金が底をついたら終わり」という恐怖から解放されます。

「長生きするのが怖い……」おひとりさまが 「老後破産」を招かぬために、今からやるべきことは?
ワタナベ 薫さん
「私には投資なんて無理」「今さら働くなんて」と思いましたか? それぞれの財布をどうやって無理なく作り、育てていくか。その具体的な戦略を著書『おひとりさまの生存戦略』で記しました。

 お金の不安を消す特効薬は、収入源を一つに依存せず、分散させること。
「稼ぐ」「守る」「育てる」という三つの財布を持ち、老後の人生の強固な土台を今から作りましょう。

「長生きするのが怖い……」おひとりさまが 「老後破産」を招かぬために、今からやるべきことは?
ワタナベ 薫『おひとりさまの生存戦略 人生100年時代をご機嫌に生きるスキル』
<文/ワタナベ薫>

【ワタナベ薫】
1967年5月30日生まれ。宮城県仙台市在住。株式会社WJプロダクツおよび株式会社Kaoru代表取締役。 通信制大学にて仏教を専攻する現役大学生でもある。
国内最大級のオンラインサロンやコーチング養成スクールを運営。コーチングメソッドをベースに、美容・健康、マインド、自己啓発を独自の視点で分析し、女性が心身ともに美しく、自立して生きるためのヒントを精力的に配信している。オーガニック商品やアパレル販売などの実業も多角的に展開。著書累計113万部、SNS総フォロワー数60万人超。「未来手帳」シリーズは11年連続刊行、累計22万部を突破。
編集部おすすめ