先日、中学3年生の娘が全身にぶつぶつ、かゆかゆの状態で修学旅行から帰ってきました。顔、お腹、背中、手足に赤い発疹が広がっていました。
アレルギー薬を飲んでこの状態はヤバイと感じ、解散場所だった空港からクリニックに直行しました。

きっかけになったのは修学旅行1日目の「民泊」ではないかと考えています。ただ、民泊が“原因”なのではなく、誰にでも起こりうる危険だということが後にわかったのです。

ニキビ?朝起きたら顔中ぶつぶつに

●主な日程
1日目:飛行機で移動、午後は3~5人ずつに分かれて民泊先へ。民泊先で農業体験等をして、それぞれの家で夕食・宿泊
2日目:民泊先から川に集合→ラフティング→地元の食文化に触れる→伝統工芸品作り→歴史記念館見学
3日目:午前は自由行動、午後は地元の中学生と一緒にお祭りの踊りを踊る。夕方の飛行機で帰路へ

「全身ぶつぶつ、顔はパンパン」で修学旅行から帰ってきた娘。誰...の画像はこちら >>
今回の修学旅行は大手旅行会社が移動や宿泊先の手配を担当していました。学校側からの要望で、農業体験を組み込んだ修学旅行になったのだと思います。学校からはアレルギーに関する事前アンケートがあり、娘は幼い頃に犬に舐められて顔が腫れたことがあったので「犬アレルギー」と記入しました。食べ物のアレルギーはありません。

娘の宿泊先は約200年続く農家に決定しました。夕飯は奥さんが作ってくれた唐揚げといなり寿司をご馳走になりました。お風呂は五右衛門風呂、家の外にトイレがある築100年のお宅だったそうです。

症状は修学旅行2日目、農家に宿泊した朝に現れました。
起きると顔中ぶつぶつで、ひどい肌荒れ=ニキビだと思ったそうです。担任には、集合の際に顔がかゆいことを報告。娘は犬アレルギーの疑いがあり市販のアレルギー薬を持たせていたので、飲んで様子を見ることになりました。ラフティング後は太ももなどにも発疹とかゆみが広がりました。

何のアレルギーだかわからなかった

2日目15時半過ぎ、発疹が出ているのでこれから病院に連れて行きますと担任から私に連絡あり。クリニックでは「何らかのアレルギー反応だろう」との診断、市販のアレルギー薬を飲んだと伝えたところ、塗り薬(ロコイド軟膏)が処方されました。病院に行った後は他の生徒と合流し夕飯をとり、ホテルに宿泊。夜には風邪のひきはじめのような、喉がイガイガする感覚があったそう。

3日目になっても発疹が引かず、同行していた看護師さんから「紫外線を浴びると発疹が悪化する恐れがあり自由行動には参加させられない」と言われ、午前中は宿泊していたホテルのロビーで寝て過ごしました。不憫だと思った友達や先生が娘にお土産を買ってきてくれたそうです。午後は踊るみんなを見学。

15時過ぎ「病院に行って処方された薬を塗っても発疹がまだ出ています。娘さんのこと空港まで迎えに来られますか?」と先生から連絡があり。
迎えに行くと娘の顔はパンパン、太ももや腕の内側など皮膚が薄い部分は特に発疹が多く、熱を帯びていました。アレルギー薬を飲んでいるのにこの状態はヤバイと感じ、空港からかかりつけの小児科に直行しました。

コナヒョウヒダニのアレルギーと判明

かかりつけ医で事情を説明すると、アレルギー薬を飲んでも症状がひかないのは溶連菌の可能性があると言われ、検査しましたが、結果は陰性でした。アレルギーの血液検査を申し出ましたが「こんなに症状が出ている状態で検査は出来ない」と断られました。原因不明のまま、かゆみ対策として市販薬より強いアレルギー薬(アレロック錠)が処方されました。

薬を飲み、翌日になっても発疹がおさまらないため再び受診。塗り薬は顔用に前回と同じ塗り薬(ロコイド軟膏)、体用には前回より少し強いステロイド(リンデロンV軟膏)が処方されました。塗らないよりマシかもしれませんが、塗っても発疹はおさまりません。塗る範囲が広いので、塗り薬は1日に1本なくなりました。1週間かかって発疹はよくなりました。

「全身ぶつぶつ、顔はパンパン」で修学旅行から帰ってきた娘。誰にでもありえる、突然ダニアレルギーを発症するリスク【医師監修】
アレルギー検査の結果
その2週間後、再び太ももに発疹が出ました。疲れがたまると発疹が出ることがあるようです。
アレルギー科小児科のクリニックで血液検査をしてもらい、1週間後に検査結果を聞きに行くとコナヒョウヒダニのアレルギー反応が100を超えていることが判明しました。


どの家にもあるダニのふん・死骸が原因

コナヒョウヒダニはごく普通に家にいるダニで、刺されてアレルギーが出るのではないそうです。ふんや死骸が粉状になりハウスダストに含まれていて、吸い込んだり触れたりするとアレルギー反応が出るとのことでした。クリニックの先生も「証明することは出来ないけれど、修学旅行の宿泊先での高濃度の曝露が、症状が出るきっかけになったのでは」と言っていました。私もそう思っています。ちなみに犬アレルギーの数値は0.83で「犬を飼うことも可能な範囲」と言われました(!)。

前回かかりつけ医で処方された飲み薬(アレロック錠)が効いているのかどうかわからなかったと伝えると別の飲み薬(デザレックス錠)を試してみることになりました。かゆみが出たときに飲んだら症状がおさまったようでした。効果のある薬がみつかり、とりあえずほっとしています。

アレルギーは体を守る役割のIgE抗体が、通常は無害な物質に対して過剰に反応し、くしゃみ、鼻水、皮膚のかゆみ、呼吸困難などの症状が出た状態です。原因物質はアレルゲンと呼ばれ、ダニ、花粉、ハウスダスト、ペットのフケ、食物、薬物など多岐にわたります。一度アレルゲンに対するIgE抗体が作られると、その後同じアレルゲンが体内に入ったときに免疫が過剰に反応し、症状が繰り返し現れるようになります。

以前から体内で“準備”ができていた

目には見えませんがダニはどこの家にも潜んでいます。コナヒョウヒダニが発生しやすい場所は布団、カーペット、ソファ、畳などだそうです。梅雨から夏にかけての季節に増殖しやすく、対策の基本は掃除と洗濯と言われています。


「全身ぶつぶつ、顔はパンパン」で修学旅行から帰ってきた娘。誰にでもありえる、突然ダニアレルギーを発症するリスク【医師監修】
画像はイメージです(以下同)
また、パンケーキミックス、お好み焼き粉、たこ焼き粉などの粉製品の保管には注意が必要です。不適切な環境で保管された粉製品にはコナヒョウヒダニが増殖している可能性があります。それを食べることで引き起こされる呼吸困難などのアナフィラキシーは「パンケーキ症候群」と呼ばれ、命に関わることもあるそうです。使いかけの粉製品は冷蔵庫で保管し、早く使い切るなど、ダニの増殖を防ぐことが大切です。

アレルギー検査で出た100超(クラス6)という数値は、修学旅行以前からダニに感作されていた(体が反応する準備ができていた)ことを示し、修学旅行の宿泊先で「高濃度のダニに触れたことで、症状が表出した」と言えます。

民泊に限らず「高濃度のダニ」に触れるリスク

まさか娘が全身ぶつぶつで修学旅行から帰ってくるとは、想像もしていませんでした。先生方も旅行会社の方も民泊先の方も想像していなかったと思います。「責任を取ってください」と騒いでも娘のアレルギーはよくなりませんので、学校を責めることはしませんでした。担任の先生も「アレルギー症状が出たのは、民泊がきっかけだと思う」と同意し、謝罪してくれましたが、だからと言って憤りがなくなるわけではありません。

「修学旅行の日程に参加できなくて残念だったね」で終わりではないのです。これから娘はアレルギーと一生付き合っていくことになります。ダニアレルギーには体質改善を目指す舌下免疫療法という治療があり、今後は主治医と相談していくつもりです。

学校には、旅行会社や全国の小・中学校に情報共有してもらえるようにお願いしました。
旅行会社と民泊先には伝えていただいたそうですが、どうやら全国の小・中学校に情報を共有する手段がないようです。修学旅行は来年も場所を予定していて、民泊に関しては未定だそうです。

感作されている子は、珍しくない

住宅宿泊事業法に基づく民泊には、「定期的な清掃・換気を行う」「設備や備品を清潔に保つ」「ダニやカビなどが発生しないよう除湿を心がける」「シーツやカバーなど直接肌に触れる寝具は、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯・交換する」など、衛生管理に関する基準が法律で定められています。衛生管理に関する講習の受講が望ましいとされていますが義務はありません。衛生観念は個人によって異なり、色んなお宅があります。

「全身ぶつぶつ、顔はパンパン」で修学旅行から帰ってきた娘。誰にでもありえる、突然ダニアレルギーを発症するリスク【医師監修】
洗濯
「症状はないがダニに感作されている人」は珍しくなく、民泊先でアレルギー症状が出る生徒がいても不思議はないのです。民泊先には先生がいないので、生徒が体調不良を訴えづらいという点も気になります。ひどい場合、アレルギーは命に関わることもあるのです。1人でも多くの方に今回のことを知っていただき、楽しいはずの修学旅行で2度と同じようなことが起こらないように願っています。



ダニ(コナヒョウヒダニ)のアレルギーは、刺されて起こるのではなく、糞や死骸を吸い込んだり触れたりすることで起こります。検査で強い陽性が出る場合、多くは以前から少しずつ感作が進んでいて、環境が変わった際の高濃度の曝露をきっかけに症状が現れます。症状のないお子さんでも感作されていることは珍しくありません。


強いかゆみや発疹が出たとき、処方薬が足りないときは、自己判断で市販薬を使わず医療機関にご相談ください。ダニアレルギーには、症状を抑える治療のほかに、体質改善を目指す舌下免疫療法という選択肢もあります。

●医療監修/草ヶ谷英樹(くさがや ひでき)
草ヶ谷医院 院長/医療法人社団博雅会 理事長。医学博士。総合内科専門医,呼吸器専門医・指導医,アレルギー専門医。
静岡市で、咳、喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群、肺炎、肺がんCT検診、非結核性抗酸菌症、間質性肺炎など、呼吸器・アレルギー疾患を中心に幅広く診療している。地域のかかりつけ医として日々多くの患者さんと向き合いながら、専門的な医療をできるだけわかりやすく、身近に届けることを大切にしている。
クリニックの理念は「医療を通じて関わる全ての方の笑顔と元気に貢献する」。診療だけでなく,YouTubeやWeb記事監修、講演活動などを通じて、患者さんや一般の方が正しい医療情報に触れ,不安を少しでも減らせるよう情報発信を続けている。
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