愛するペットが亡くなったり何らかの事情で失われてしまったとき、その悲しみからペットロス症候群を患ってしまうことがある。
眠れない、食欲がない、情緒が安定しない・・・など精神的にも身体的にもさまざまな症状があらわれて苦しい日々が続くのだ。
中国に住む黄さんも、愛猫だったブリティッシュショートヘアのガーリックちゃんが2歳半で亡くなったとき悲嘆にくれた。
どうしようもないほど酷く辛くしんどく、こうなったらあの手しかない!と決心した。クローン技術でガーリックちゃんを蘇らせてもらおう、と。
【1年間の試行錯誤を経て誕生した「ガーリックちゃんver2.0」】
中国のシノジーン(Sinogene)社は、40匹の犬のクローンを作り上げてきた実績がある、ペットのクローン作成を専門とする企業だ(関連記事)。
それなりの経験を経てきた同社であっても、黄さんが依頼してきた猫のクローン作成はちょっとした難題だった。というのも猫には他の動物にはない問題があったからだ。
施振声博士は
猫の生殖・生理学的特性はほとんどの動物とは違う。猫は自然排卵しない、数少ない排卵誘発性の動物なのだ。繁殖サイクルが特殊なためクローン作成は難しく、作業も厄介。だから今回のクローン猫の成功は世界的にも珍しいものである
と語る。
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クローン技術により誕生したガーリックちゃんver2.0(左)生前のガーリックちゃん(右)
1年間の試行錯誤の末、ついに胚を代理母に移植することに成功。66日の妊娠を経た2019年7月21日、自然分娩によってガーリックちゃんver2.0が誕生した。
ごらんの通り、キリッとした目力の強さが印象的な可愛いニャンコだ。その遺伝子のすべては、今は亡きオリジナル・ガーリックちゃんがもとになっている。
1ヵ月ほどガーリックちゃんver2.0の様子が観察されたがこれまでのところ健康状態は良好で、自然の交配で生まれた子猫となんら変わるところはないそうだ。
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ニャンだよ! と言わんばかりの目力が自慢のガーリックちゃんver2.0
【絶滅危惧種のクローンを作って保全に役立てる動きも】
クローニングにかかった費用は25万元だそうで日本円にすれば380万円ほどとなり結構いいお値段だが、黄さんは
それだけの価値はある。これからもこの子をガーリックと呼び続ける。私の中では、この子の命はずっと続いているのだから
とコメントしている。
中国では昨年の時点で2200万人が猫を飼っており、その数は4000万匹に達していたらしい。
それだけの人数がいれば、愛する猫を蘇らせるために大金を払おうという人がほんの一部だけだったとしても、シノジーン社としては十分利益を上げられる。
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出産のためのお腹を貸してくれた代理母猫とガーリックちゃんver2.0。親子であっても遺伝子のつながりはない
中国では昨年、霊長類では初となる2匹のマカク(オナガザル科マカク属のサル)のクローン作成に成功。
また韓国でもクローニング研究機関のスアム生命工学研究院が、犬のクローニングをワンクールおよそ1000万円で請け負っている。
さらに現生の動物だけでなく、絶滅したマンモスや、シベリアで発見された4万年前の子ウマを現代に蘇らせようという試みもある。
シノジーン社によれば、失われた命を蘇らせる以外にも絶滅危惧種のクローンを作り保全に役立てるといった応用もできるという。
同社では、近いうちにウマや伝書鳩のクローニングを実施する予定とのことだ。
References:Sinogene / Iflscienceなど / written by hiroching / edited by usagi
記事全文はこちら:代理母猫による自然分娩で誕生。世界的に珍しいクローン猫が誕生(中国) http://karapaia.com/archives/52282414.html