地球に飛来する危険な小惑星のコースを変更させる最良の方法とは?(米研究)

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 地球に甚大な被害を及ぼす小惑星が衝突する確率は0ではない。そんな万が一の事態に備えて、研究者たちはの回避方法を模索している最中だ。


 自然からエネルギーを少しずつ集めて元気玉を作れればそれに越したことはないだろうが、集めるのに時間がかかると間に合わなくなってしまう。そうなってくると人類は、元気玉頼みではなく、自らの努力でそれに備えておかなければならない。

 小惑星が地球に衝突するのを避けるために有力視されているのが、その軌道を変える方法だ。だがどうやって軌道を変えるのか?

 マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループは、現時点で最良と思える方法を発表した。
【2機の宇宙船を使え!】

 マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループによると、衝突する恐れがある小惑星の軌道をズラす方法として有望視されているのは、2機の宇宙船を使う方法なのだそうだ。

 1機は「キネティック・インパクター」で、まさに迫りくる小惑星に衝突して、その衝撃で危険なコースから逸らすためのものだ。


 もう1機は「偵察機」である。地上からの観測、あるいは宇宙であっても遠く離れた場所からの観測だと、ターゲットの小惑星について大雑把な情報しか得ることができない。すると、仮にそのコースをズラしたとしても、過小だったり、反対に過大だったりする可能性もある。

 そこで、キネティック・インパクターに先駆けて小惑星までたどり着き、その詳細を伝えるのが偵察機の役割だ。

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【2機の連携ミッションの問題点を意思決定テーブルで解決】

 ただし、偵察機を用意し、小惑星まで送り込むとなると、その分余計に時間もコストもかかることになる。

 残念ながら、最新の観測機器をもってしても、小惑星が知らず知らずのうちに地球に接近してしまうという事態は考えられる。


 そのように切迫した状況であれば、いちいち偵察機を送り込んでいる余裕などないだろう。この場合、多少の不確実性があっても、そのままで防衛ミッションを実行しなければならない。

 基本的に時間・コストと不確実性はトレードオフの関係にあり、これらを考慮した上で、どのような対策を行うのか決定しなければならない。

 だが、そうした決定もやはり危険が迫ってから考え出したのでは遅すぎる。このような状況になったらこうすると、予め決めておかねば、間に合わなくなってしまうのだ。

 これを決めるための意思決定テーブルを考案したのが、今回の研究グループだ。


 惑星の重力が通過する小惑星を衝突コースに乗せてしまう領域のことを「重力キーホール(gravitational keyhole)」という。

 この意思決定テーブルは、重力キーホールに突っ込むと予測される小惑星の質量や速度といった要素を勘案して、それを回避するうえで一番効率的な方法を教えてくれる。

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【地球近傍惑星「アポフィス」と「ベンヌ」のシミュレーション】

 シミュレーションの対象となったのは、地球近傍小惑星の「アポフィス」と「ベンヌ」だ。これらはもっともよく知られた地球近傍小惑星であると同時に、地球に衝突する可能性がもっとも高いものの1つだ。

 アポフィスは2068年に15万分の1の確率で、ベンヌは2175~2199年に2700分の1の確率で、地球に衝突すると考えられている。

 シミュレーションによれば、アポフィスが重力キーホールに到達するまでまだ5年あるなら、まず偵察機を派遣してからキネティック・インパクターを送れば、安全にその軌道をズラすことができるはずだという。


 しかし、もし1年を切ってしまっていたなら、すでに手遅れである可能性もあるようだ。

 ベンヌもかなり似たような結果だったが、こちらの構成はアポフィスよりは詳しく分かっている。したがって、偵察機を派遣するよりは、いきなりインパクターを突っ込ませた方が有効と考えられるとのことだ。

 なお、打ち上げるロケットについては、大きなものを用意する余裕がないのならば、複数のロケットを衝突させるやり方もあるようだ。あるいは地球からではなく月から発射したり、使われなくなった人工衛星をぶつけてやる方法も考えられるそうだ。

 この研究は『Acta Astronautica』に掲載された。


References:How to deflect an asteroid | MIT News/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:地球に飛来する危険な小惑星のコースを変更させる最良の方法とは?(米研究) http://karapaia.com/archives/52288470.html