パタゴニアの巨人、伝説のアーマー、昔の人を信じ込ませた10の捏造

昔の人が信じた10の捏造 /iStock
 昨今は、インターネットの普及により事実確認するのが簡単になった。陰謀論やフェイクニュース、いたずらや詐欺、捏造話はいたるところに蔓延しており、鵜呑みにしてしまう人もいる反面、直感的にそれらを見抜く能力を学んだ人も多い。


 情報はまたたく間に世界中に拡散される一方で、ネットに投稿されたものや印刷物は、大勢の人々の目で吟味されることだろう。

 だが、こうした情報化社会以前の時代、言葉の伝わり方が今よりも格段に遅かった世の中においては、別の意味で人々は簡単に騙されてやすかった。

 いったん噂が広まると、それを違うのではないか、とひっくり返すこともできず、何ヶ月もときに何年もかかって事実として認識されてしまうことがある。

 現代の基準では、まったくありえないようなことでも、博識な学者ですら驚き、戸惑い、怯えたとんでもない話があるのだ。ここでは昔の人がうっかり信じ込まされてしまった10の捏造を見ていこう。
【10. パタゴニアの巨人「パタゴン」】

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image by:Patagonian Giants
 初めて話題になったのは1520年代のことである。
それから200年以上にわたって、南米パタゴニアに身長3.6メートルの巨人族がいるという話が探検家たちによって広められた。

 1766年、ジョン・バイロン船長がドルフィン号で世界を航海した後、ロンドンに戻り、乗組員たちがこの巨人の話を広めた。

 1766年5月9日、この話が雑誌『ジェントルマンズマガジン』に初めて掲載され、すぐにほかの新聞や雑誌も飛びついた。多くの人は、この噂に疑問をいだいたが、7年後、バイロン卿の旅の記録完全バージョンが発表された。

 これによると、遭遇した一番大きな巨人はおよそ2メートル、当時のヨーロッパ人と比べてもわずかに高いくらいで、噂ほどの巨人ではなかったようだ。

References:The Patagonian Giants

【9. 暑さを防ぐソーラーアーマーで凍死】

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 SFなら、こんな妙な話はとても面白いかもしれない。
1874年、ネバダ州の新聞テリトリアル・エンタープライズ紙が、ジョナサン・ニューハウスという発明家の悲運を報じた。

 ニューハウスは、砂漠の酷暑対策のための防護服、ソーラーアーマーを発明し、ネバダ州のバージニアシティからデスバレーにかけて、徒歩で歩く実験を試みた。この防護服は、スポンジでできていて、冷却混合物で体を冷やすようになっていた。

 ところが、これが効きすぎてしまったようで、実験を始めてからわずか1日でガチガチに凍って死んでいるニューハウスが発見された。鼻から30センチものつららがぶら下がっていたという。世界中の新聞は、この話をこぞって報道した。


References:Solar Armor

【8. 台湾人と偽り、だまし続けたフランス人】

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 18世紀はじめ、ほとんどのヨーロッパ人にとって、アジアの文化は未知だった。だから、東洋に関する妙な話も簡単に信じてしまった。

 あるとき、ひとりの男が、自分はFormosa(現代の台湾)からやってきたと言い始めた。見た目はブロンドに白い肌だったが、誰も本物の東洋人を見たことがなかったし、オランダ訛りの未知の言語をしゃべり、生肉を食べる、椅子に腰かけて眠る、太陽や月を崇めるなど、珍しい習慣や信仰のせい
で、多くが彼の言うことを信じた。

 実際はフランス生まれの彼は、スコットランドで洗礼を受けて、名をジョルジュ・サルマナザールと改め、イギリスに渡って、セレブとしてもてはやされた。

 台湾の歴史を綴った偽書の傑作『台湾誌』を生み出しイギリス知識人の東洋人認識に多大な影響を与えた。
台湾の専門家としての名声を獲得したサルマナザールだが、多くの批判もあり、1706年にすべて詐欺だったことを白状した。

References:George Psalmanazar

【7. 異国の王女のふりをしイギリス人をだましたカラブー】

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image by:public domain/wikimedia
 ジョルジュ・サルマナザールの台湾人詐欺からおよそ100年後、イギリス人はまたしても別の詐欺話にひっかかった。

 1817年4月3日、ひとりの美しい女性がアルモンズベリーの町に現れた。外国人のようで、未知の言語をしゃべり、ショールをターバンのように巻きつけていた。町の執政官とその妻は、女性を受け入れ、何者なのか探ろうとした。

 わかったことは、女性は自分をカラブーと名乗り、遠方の島国、ジャヴァス島の王女で、海賊に拉致されたが船から逃げ出、イギリス海峡を泳いで渡ってきたという。


 執政官の家族は、王女を保護できたことを喜び、この話を新聞に発表したが、のちにこれはすべて嘘であることが判明した。

 ある女性が、新聞に載った王女の似顔絵にピンときてその身元を暴露した。王女カラブーは実はこの女性の元使用人で、メアリー・ベイカーという名の女だったのだ。

References:Princess Caraboo

【6. 偽造されたシェークスピア文書】

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 父親に無視されかまってもらえない子どもはどうするだろうか? 父親が夢中になっているものの偽物をこしらえて、復讐するかもしれない。

 本屋のサミュエル・アイアランドは、シェークスピアを崇拝し、シェークスピア関連のものならなんでも追い求めて、自分のコレクションに加えることに夢中になっていた。

 1794年、サミュエルの18歳の息子ウィリアムが、シェークスピアのものらしきサインの入った抵当文書を父親のために買ってきた。


 ウィリアムは法律事務所で働いていて、ある不動産書類の中からこれを発見したと伝えた。サミュエルは当然のことながら大喜びした。

 もちろん、この文書は偽造だったわけだが、ウィリアムのいたずらはさらにエスカレートしていって、ヴォーティガーンというタイトルの戯曲までこしらえて、シェークスピアの作品だとして世に出
した。

 かなり疑わしいにもかかわらず、この作品は一度上演されたが、役者たちはシェークスピアにしてはお粗末な出来だと気づいた。

References:Denis Vrain-Lucas, Prince of Forgers

【5. 人間の頭の皮を収集していたイギリス人?】

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 時に捏造は政治に利用されることがある。1782年のアメリカの独立戦争のケースは、イギリスに反旗を翻すことをヨーロッパ諸国に納得させるという明確な目的があった。

 ベンジャミン・フランクリンが、その生涯の間にいくつかの詐欺をもくろんだことは知られているが、彼はこのとき、「Supplement to the Boston Independent Chronicle」という偽の新聞をでっちあげた。

 その中に、アメリカ先住民の戦士たちが、戦利品として得たおびただしい数の人間の頭の皮を、イギリス王室や国会議員に送っているという記事を書いた。さらに、頭の皮は女や子どものものも含まれているとその残酷性を強調した。

 イギリスの世論は相当なショックを受け、それが嘘のニュースだと明かされても、多くがその記事を信じ続け、真実を知ろうとはしなかったという。

References:founders

【4. 著名人の手紙を捏造し続けたブライン・ルーカス】

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 ブライン・ルーカスのケースは、なんとも大それた詐欺だったようだ。1851年、ルーカスは、フランス人数学者のミシェル・シャールに会い、偶然見つけたという手紙を見せた。

 それは、あのジャンヌ・ダルクとカール大帝の書いたものだといい、シャールがこれを買うと申し出たことから、次々と詐欺が始まった。

 ルーカスは、ユリウス・カエサル、アリストテレス、シェークスピア、マグダラのマリア、アレクサンダー大王などの"手紙"を偽造して、シャールに売りつけた。

 これらの人物は皆、フランスで高く評価されている人たちだ。もしかしたら、シャールは歪んだ愛国心からか、明らかにこれらが偽造だということをあえて信じようとしなかったのかもしれない。

 そもそも、手紙がすべてフランス語で書かれていること自体がおかしいし、紙が発明される前の時代の人物もいるのに、すべて同じ透かしの入った紙が使われていた。

 18年後、ついにシャールは騙されていたことを認め、ブラインは懲役2年の刑を言い渡された。フランス語で書かれたイエスの手紙は、さすがにこの詐欺には使われなかったようだ。

References:Denis Vrain-Lucas, Prince of Forgers

【3. チェスをプレイするオートマタ、ターク】

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Marcin Wichary/Creative Commons
 1700年代、自動で動く機械(オートマタ)が発明され、その巧妙さが広く称賛された。中でも有名なもののひとつに、1769年にハンガリーの貴族が作ったターク(トルコ人)という名のチェス人形がある。

 これはトルコ風の衣装を着た木の人形で、大きな木の箱から現われ、考える機械として人間の対戦者とチェスのゲームを行ったという。

 木の箱の内部にはチェスのコマを動かすときに作動するギアだけしかなかった。この機械人形のからくりについては、さまざまな憶測をよんだが、ついにその秘密が明らかになった。

 チェスの達人が正面から見ている者にはわからないようにこっそり箱の中にもぐりこみ、蝋燭の火をたよりに、中にあるもうひとつのチェス盤とタークの腕が連動したレバーを動かしながら、チェスをさしていたという。

References:The Mechanical Chess Player That Unsettled the World

【2. 大がかりな株価詐欺】

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 金儲けのための違法な詐欺の例で、かなり大掛かりな例がある。1814年、英国軍の制服を着たある男が宿屋に到着して、戦争は終わったと言った。ナポレオンが殺され、元の政府が復活したというのだ。

 人々は大喜びして、早馬でロンドンにそのニュースを伝え、株価も急上昇。ところが、まもなくこれはガセで、ナポレオンはまだ生きていることがわかった。

 よく調べると、ロンドン証券取引所の株価を操作するために仕組まれた計略だったことが判明した。

 わずかな情況証拠だけで、トーマス・コクラン卿が首謀者として逮捕され、刑務所に入れられたが、結果的に冤罪だとして国王に恩赦された。結局、決定的な証拠は見つからず、真の黒幕はわからないままだ。

References:thehistorypress

【1. マンハッタン島が沈む?】

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 こんな話を鵜呑みにするなんて信じられないし、真偽のほどもわからない。だが、印刷物の証拠がないにも関わらず、歴史に刻まれてしまった出来事であるのは確かだ。

 始まりは1824年、新たな建設工事が多数重なったせいで、マンハッタン島が傾いで、先端がゆっくりと海に沈みつつあるという噂が広まった。数週間のうちに、噂はさらに広まり、引退したある大工がとんでもない解決策を提案した。

 ロージアーというこの大工、島をノコギリで半分にしようと言い出したのだ。切り離したほうを海へ引っ張って向きをひっくり返せば、重さの配分が修正されるので、また島がひとつにくっつくというわけだ。

 その作業を請け負う者を雇うという広告に労働者たちが殺到し、"切り離し工事"の日付まで決定した。果たしてその日がやってくると、当のロージアーは姿をくらまし、後には雇用をおじゃんにされて怒り狂った労働者たちが取り残された。

References:untappedcities written by konohazuku / edited by parumo

記事全文はこちら:パタゴニアの巨人、伝説のアーマー、昔の人を信じ込ませた10の捏造 http://karapaia.com/archives/52292251.html