南極の土壌で抗生物質が効かない超耐性細菌を発見
 南極の土の中で、一般的な抗生物質が効かない可能性がある超耐性細菌が発見されたそうだ。

 今後南極が地球温暖化や環境破壊にさらされ続けるのなら、世界的な感染症のリスクは現実味を帯びることになると、研究者は警鐘を鳴らしている。


 『Science of the Total Environment』(2021年11月29日付)に掲載された研究によると、チリ大学の科学者らが2017~19年に南極半島で採取した土壌サンプルを分析した結果、過酷な環境により超耐性を身に着けた菌の存在が明らかとなったという。

南極の過酷な環境が菌を超耐性に進化させた ポラロモナス属やシュードモナス属など、細菌の中には、抗生物質や抗菌物質(銅や塩素など)に耐性を発揮する遺伝子を持つものがある。

 抗生物質を回避する未知のメカニズムを備えているらしき遺伝子すら見つかっている。

 ポラロモナス属の細菌は、感染症の治療には不可欠な「β-ラクタム系抗生物質」を無効化する可能性がある酵素を吐き出すことがわかったのだ。

 そうした抗生物質耐性が広まる要因の1つは、抗生物質の誤用や濫用だ。だが自然な進化でそれが発達することある。


 例えば今回発見された抗生物質耐性遺伝子は、細菌が南極の極限環境に適応するために誕生した可能性が高いと、研究グループは推測している。

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シュードモナス属の細菌 / image credit:public domain/wikimedia水平伝搬で他の細菌に拡散する恐れ 研究の中心人物、チリ大学のアンドレス・マルコレータ博士は、こうした抗生物質耐性の情報はDNAの「移動型断片」内にあると説明する。つまり「遺伝子の水平伝搬」によって、母細胞から娘細胞への遺伝ではなく、個体間や他生物間においても遺伝子の取り込みが行われるということだ。

 そんな遺伝子が感染症を引き起こす細菌の手にわたったら、抗生物質では治せない病気が生まれてしまう。

 今のところまだパニックになる必要はないようだ。だが、もしも私たちが今後も南極大陸に負荷をかけ続けるのなら、その脅威は現実味を帯びていく。


 「主にチリを経由して、南極半島への世界中の人々の往来が増えています。このために人間に感染する細菌と南極の土壌に潜む細菌が出会う可能性が高まっています」

 新型コロナによって、私たちは感染症がいともたやすく世界中に広がることを身をもって学んだ。

 更なる驚異的感染症が発生してしまう前に、我々にできることを、世界レベルで話し合う必要性がありそうだ。

References:“Hyper-Resistant” Bacteria Discovered Living In Antarctic Soil | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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