イギリスに落下した隕石に生命の基本物質が含まれていたことが判明
 イギリスで数年前に回収された隕石には、地球上の生命にとって不可欠な有機化合物である「アミノ酸」が含まれていたそうだ。

 だが「ウィンチカム隕石」についてより興味深いのは、そうした化合物が同タイプの隕石よりも少なかったことだ。


 それは決して落胆するようなことではない。むしろその逆で、『Meteoritics and Planetary Science』(2023年1月9日付)に掲載された新たな研究では、新しい種類の隕石かもしれないという。

 研究によると、この隕石の元となった小惑星には液体の水があったことを示す痕跡が発見されたそうだ。

 それによる化学反応が、生命の基本物質である「アミノ酸」と「タンパク質」をたくさん作り出していたとしてもおかしくはないという。

炭素原子を多く含む珍しい「ウィンチカム隕石」 2021年2月28日、落下する火球が、英国南西部グロスターシャー州ウィンチカムの町の夜空を照らした。その後、数千個の隕石の破片が発見され、「ウィンチカム隕石」と名付けられた。


 更にこの隕石には通常の隕石とは違う特徴があった。

 ケイ酸塩鉱物を主要組成とする隕石のうち、コンドルールという球粒状の構造をもつ隕石をコンドライトと言うが、「ウィンチカム隕石」は、そうしたコンドライトの中でも「炭素質コンドライト」という炭素を豊富に含むタイプのものだった。

 このタイプの隕石は、地球の生命の起源になったと言われることもある重要なものだ。

 これまで数十例しか発見されていない非常に珍しい隕石で、イギリスで炭素質コンドライトが回収されたのは30年ぶりのことになる。

 そのデビューは華々しく、火球となって落下する瞬間は1000人以上に目撃され、映像にも記録された。

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Large meteor 'fireball' blazes cross the UK, lighting up skies生命の起源に関する新たな洞察が得られる可能性 ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のクイニー・チャン博士は、「ウィンチカム隕石に含まれる有機物は、太陽系が誕生したときの単純な化学反応が、どのように生命の起源のきっかけになったのか、過去をのぞく窓を与えてくれます」と、プレスリリースで語る。


 「生命の素である有機分子の発見により、まだ生命が誕生する以前の地球に同じような物質が落下しただろうことが理解できました」

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小さな「ウィンチカム隕石」は新しいタイプの隕石である可能性もある。太陽系の進化や生命の起源について貴重なヒントを携えているかもしれない / Image Credit: Royal Holloway, University of London

 ウィンチカム隕石のうち、4つの欠片は、落下してから12時間以内に速やかに回収された。おかげで、研究者は地球の物質とそれほど混ざっていない貴重なサンプルを手に入れることができた。

 興味深いのは、この隕石に含まれるアミノ酸がほかの同タイプの隕石の10分の1以下と、かなり少なかったことだ。

 またアミノ酸の中には地球では非常に珍しい種類のものもあり、それらの起源が地球外である裏付けとなっている。

 さらにアミノ酸と多環芳香族炭化水素の比率がほかの隕石とはかなり違ったり、成分が固体の岩石になりきっていないという特徴もあった。


 こうしたことから、ウィンチカム隕石はこれまでにない新しいタイプの隕石である可能性もあるという。

 ただウィンチカム隕石の構造がもろかったこともあり、回収されたのはたった600グラムだけだ。そのため、まとまった量が必要な分析などはできていないとのこと。

 ほとんどの隕石と同じく、ウィンチカム隕石はもともと小惑星の一部だったが、小惑星同士の衝突で軌道が変わり、やがて地球の大気に突入したのだと考えられている。

References:Building blocks of life found in meteorite which crashed landed in Gloucestershire / Building blocks of life found in meteorite that crash landed in Gloucestershire / written by hiroching / edited by / parumo

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