ついに突破か?局地的なワームホールを作り出す新たな方法が考案される
 イギリスの研究チームによって、実験室に「局地的なワームホール」を作り出す方法が考案された。それは空間を橋渡しし、この宇宙の深奥を探る方法でもあるという。


 その「カウンターポーテーション」という方法なら、粒子を移動させることなく、小さな物体を移動させたうえで再構成することができるのだという。

 『Quantum Science and Technology』(2023年3月2日付)に掲載されたこの研究は、ただのこの宇宙の真の性質を探る理論的・実践的なフレームワークになるそうだ。

 

局地的ワームホールを作るカウンターテレポーテーション 今あなたがこの文章を読めるのは、移動することで情報を伝えてくれる検出可能な”運び屋”のおかげだ。

 情報の運び屋とは、たとえば光ファイバーや空気中を移動する光子や、あなたの頭の中を飛び交う無数の神経シグナルのこと。

 また量子の不思議な性質を利用した「量子テレポーテーション」もそうだ。この方法では、小さな物体に関する完全な情報を転送し、別の場所で再構成できるようにする。


 ところが、「カウンターポーテーション」はそこが根本的に違うのだ。

 テレポーテーションという言葉からイメージされる通りのことが起こる。つまり情報の運び屋は、わざわざ空間を移動しない。

 その働きは、SF映画によく登場する「ワームホール」のようなものだ。 映画のワームホールは宇宙をワープして一瞬ではるか彼方まで移動するために使われる。

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 この現象は「分離した移動」と表現することができる。
つまりワームホールの外側にある私たちが認識できる空間を移動することなく、移動するということだ。

 カウンタートランスポーテーションならば、粒子が空間内を移動することなく、量子情報をある場所から別の場所へと伝えることができる。それはまさに局地的なワームホールだ。

 今回の研究では、まさにそれを実現する方法が示されているのだ。

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全く新しいタイプの交換不要な量子コンピューター 研究著者のハティム・サリフ氏によれば、カウンターポーテーションを実現するには、まったく新しいタイプの量子コンピューターが必要であるという。

 それは通信するために「粒子を交換しない量子コンピューター」だ。


 大規模量子コンピューターは、驚異的な計算速度を実現してくれると期待されている。それとは対照的に、交換不要の量子コンピュータはたとえ最小の規模であっても、空間を根本から取り入れることで、カウンターポーテーションなどの一見不可能な作業を可能にすると考えられるという。

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カウンターポーテーションを可能にする全く新しい量子コンピューター / image credit: Quantum Science and Technology (2022).この世界の真の姿とは? また今回の研究は、私たちが暮らすこの現実世界の真の姿をも示しているという。

 普段私たちが認識するのは古典物理学的な世界だが、実際には量子的な物体によって構成されている。

 今回提唱された方法ならば、完全に離れた粒子同士が相互作用することなく相関できるという、量子的な世界の本質を明らかにできるのだそうだ。

 ブリストル大学、オックスフォード大学、ヨーク大学などの英国を代表する量子の研究者たちは現在、摩訶不思議なワームホールを実験室で作る計画を進めているとのことだ。


References:'Counterportation': Quantum breakthrough paves way for world-first experimental wormhole / New Quantum Breakthrough Paves Way for ‘Local Wormholes’ | Sci.News / written by hiroching / edited by / parumo

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