独自の警察部隊をもつ海外の10の意外な組織
 日本では、警察といえば公務員だが、海外では私設の警察部隊を持つ組織が存在する。

 たとえば郵便がらみの犯罪に対処する郵便局や、貨物や乗客の安全を守らねばならない鉄道会社や連邦最高裁判所などは独自の警察部隊が存在するのだ。


 本物の警察による汚職や犯罪だって普通に起きる時代だ。ならば自分で作った私設警察の方がよほど信頼できるのかもしれない。ここではそんな独自の警察をもつ意外な組織を紹介しよう。 

10. 郵便局 郵便警察は、世界で最も古い法執行機関のひとつだ。たとえばイギリスの郵便捜査局は300年以上もの歴史がある。

 また450人以上の武装警官を擁するアメリカの郵便警察は、郵便がらみの200種類もの犯罪を捜査することができる。
その管轄下にある犯罪であれば、完全な逮捕権限があるのだ。

 その捜査能力も優秀で、2022年にはメタンフェタミン4トン、コカイン3トン、フェンタニル1トン半を押収したほか、数多くの犯罪で数千人もの容疑者を逮捕した。

[画像を見る]

photo by Pixabay9. 鉄道 同じく古い歴史を持つのが鉄道警察だ。たとえばカナダ太平洋鉄道は「カナディアン・パシフィック・カンザスシティ警察(CPKC)」という私設警察を持つ。

 カナダと米国の州カンザスの名を持つので少々混乱するが、じつはアメリカとカナダの鉄道網を管轄とする国際的な組織だ。

 その隊員は、カナダでは裁判官によって任命され、鉄道が所有・運営するものを守ることを任務とする。


 またアメリカでは、カナダ太平洋鉄道の鉄道が運行している州から任命され、ついでに連邦政府から州をまたぐ権限が与えられている。

 だからカナダの警察組織ではあるが、アメリカ国内でも逮捕する権限がある。

[画像を見る]

photo by iStock8. ニューヨーク市衛生局 多種多様な犯罪に対処せねばならないニューヨーク市の衛生局も独自の警察隊を持つ。ただの警察ではなく、305人のおとり捜査官がいるため、ぱっと見警察とはわからない。

 だから不法投棄やリサイクル品の窃盗などで捕まった犯罪者は、何が起きたのか最初は理解できないかもしれない。

 衛生局の警察が取り締まるのは、ノーリードでの犬の散歩や、店の外の歩道が汚れているといったことだ。


 なんだか風紀委員のようだが、隊員は武装しており、必要に応じてもっと重大な犯罪に対処することもできる。ある隊員によると、一番多い違反は立ち小便であるそうだ。

[動画を見る]

7. 大学 あまり知られていないかもしれないが、アメリカでは、ほとんどすべての大学のキャンパスに、独自の私設警察がいる。

 しかもアメリカの大学100校以上が、国防総省と協定を結んでいる。つまり、大学警察はグレネード・ランチャーやM-16のような武器を手に入れられるということだ。

 そんな彼らは大学によって雇用されているため、市内で働くことはあっても市警ではない。
したがって彼らが守ろうとしているのは、一般的な法律ではなく、大学が定めたルールだ。

 最初の大学警察は1894年、イェール大学で始まった。そして1960年代になると、大学警察はキャンパス内で銃を携帯するようになる。

 そのきっかけは、キャンパス内で行われるベトナム戦争への抗議行動から大学側が身を守ることだった。

 大学の秩序を守るのが大学警察の主な仕事であるが、場合によってはキャンパス外で交通の取り締まりを行うこともある。そして時にそれが悲劇につながる。


 2015年、キャンパスの外で交通取り締まりをしていた大学警察官が、男性を射殺し、殺人罪で起訴された。被害者のサミュエル・デボースは学生ではなかったそうだ。

[画像を見る]

photo by iStock6. 連邦最高裁判所 米国の最高裁判所では、ほかの政府機関の建物と同様、見学ツアーが催されているが、その時建物の警備を行う警察の存在に気づくかもしれない。

 最高裁判所警察の目的は、裁判所の職員や訪問者を守ることである。また最高裁判事など、要人の警護も行う。

 つまり最高裁判所判事が出張する際、最高裁判所警察が同行し、大統領のシークレット・サービスよろしく、彼らの身辺を守るのだ。


 2024年、最高裁判所は最高裁判所警察の予算1900万ドル以上(約30億円)の増額を求めた。その目的は、最高裁判事の私邸などの警備を強化することだ。

 じつは裁判官の自宅はそれ以前から、連邦保安官局によって警備されている。だが、最近の「懸念の深まり」のために、自分たちの警察部隊にその任務を引き継がせたいと考えたのだそうだ。

[画像を見る]

photo by iStock5. イギリス領南極地域 イギリス領南極地域は、その名の通り、イギリス政府が領有する南極の地域だ。誰も住んでおらず、ただ研究施設と歴史的な基地と船がある。そんな場所でも、犯罪を取り締まる警察がいる。

 英国本土の法律はもちろん、南極地域にだけ適用される条例が有効であり、これらに違反すれば逮捕され、英国に身柄を引き渡されることになる。

[画像を見る]

photo by iStock4. 富裕層 ハンパではない大金持ちにもなれば、何かと危険なのだろう。彼らは有り余る富を費やして、私設の警察隊を雇うことがある。

 たとえばニューオーリンズのフレンチ・クオーター地区で、あるリアリティTV番組のスターが強盗に襲われた。

 襲われたスターはすぐにニューオーリンズ市長に電話してことの次第を話したのだが、取り合ってもらえなかった。そして最終的に自分で私設警察を作ることにした

 それが「フレンチ・クォーター・タスクフォース」と呼ばれる組織だ。隊員は本物の警察官で、非番時のワリのいい副業としてやっている。

 私設警察ではあるが、自警団としての役割があり、近隣の住民は何か事件があればアプリを使って通報することができる。今では地域住民が自主的に払う税金によって運営されているという。

[動画を見る]

 また、マイアミには富裕層専用の島があり、住民を守るために13 人の警察が配置されているという。3. アムトラック(全米鉄道旅客公社) アムトラックとは全米鉄道旅客公社のこと。すでに鉄道警察には触れたが、鉄道警察は貨物列車のみを管轄としている。アムトラックの警察が守るのは旅客列車だ。

 CPKCと同様、アムトラック警察の隊員は全米で500人以上で、列車や施設周辺で起きた犯罪に対処する。その多くが不法侵入で、命懸けになることもある危険な仕事だ。

[画像を見る]

image credit:Amtrak Police Departmen2.ダム アリゾナ州とネバダ州の州境のあたりで、コロラド川を堰き止めているのがフーバーダムだ。国定歴史建造物でもあるこのダムは観光地として有名で、年間約700万人が訪れる。

 治水や水力発電の重要な拠点であると同時に、これだけの人が訪れるのだから、その安全性は絶対に守らねばならない。

 そのためにダムを管理する干拓局は独自に保安対応部隊を設立した。

 干拓局はアメリカ国内の水と水力で発電された電力の卸売りを監督している。つまり保安対応部隊は、米国民の水や電力を守る最前線に立っているということだ。

 ちなみにこうした保安対応部隊はフーバーダムだけでなく、ほどんどの主要ダムに配置されており、その敷地や従業員の安全を守っているという。

[画像を見る]

photo by Pixabay1. NASA あのNASAにはSWAT(Special Weapons And Tactics/特殊武装および戦術)がいる。

 宇宙組織の特殊部隊と聞けば、防護服を着てスナイパーライフル手に宇宙の犯罪者と戦うなど、ついつい想像がたくましくなる。

 現実はそこまでドラマチックではないが、それでも興味深い。緊急対応チーム(ERT)として知られるこの特別部隊の仕事は、180km2に及ぶケネディ宇宙センターで発生する重大な脅威に対処すること。

 29人の隊員で構成されており、通常の警備だけでなく、テロや無差別銃撃犯のような脅威にも対処する。なんと狙撃手までいる。

 しかも凄腕だ。2019年、NASAのERTは、全米の他のSWATと競争し、55チーム中10位に入賞した。

[動画を見る]

References:10 Unexpected Organizations That Have Their Own Police Forces - Toptenz.net / written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。