恒星TRAPPIST-1を回る地球そっくりな2つの惑星は大気がなく昼は高温・夜は極寒
恒星TRAPPIST-1と公転する7つの惑星 Image credit:NASA / R. Hurt / T. Pyle

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 太陽系の外に位置する恒星TRAPPIST-1を公転する、地球サイズの2つの惑星には、大気が存在せず、昼夜の温度差が500℃以上に達することがわかった。

 スイスのベルン大学とジュネーブ大学を中心とする国際研究チームが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で60時間にわたって観測した結果明らかになったものだ。

 太陽系でいう太陽にあたるTRAPPIST-1は赤色矮星と呼ばれる小さく暗い星で、7つの惑星を従えており、この2つの惑星に生命が存在できる可能性はほとんどなさそうだが、外側の惑星にはまだ希望が残されている。

 この研究成果は『Nature Astronomy[https://www.nature.com/articles/s41550-026-02806-9]』誌(2026年4月3日付)に掲載された。

地球型岩石惑星が7つ並ぶ恒星TRAPPIST-1系

 地球から約39光年離れた宇宙に、TRAPPIST-1という恒星がある。

 恒星とは太陽のように自ら光と熱を放つ天体のことで、TRAPPIST-1はそのなかでも「赤色矮星」と呼ばれる種類に分類される。

 赤色矮星は太陽より小さく温度が低く、赤みがかった光を放つ星だ。

 表面温度が低いために暗く見えるが、寿命が非常に長く、銀河系に存在する恒星の75%以上を占めている。

 TRAPPIST-1の周囲には7つの惑星が存在し、その惑星系をTRAPPIST-1系と呼ぶ。

 太陽系に太陽と8つの惑星があるように、TRAPPIST-1系にはTRAPPIST-1という恒星を中心に7つの惑星が公転している。

 この惑星系は2017年に発見され、天文学者たちが強い関心を持つ理由は、7つの惑星がすべて地球や金星に近いサイズを持つ岩石型惑星だからだ。

 木星のようなガスでできた惑星ではなく、地面を持つ惑星がこれだけ集まった惑星系は非常に珍しく、生命の存在を探る研究の格好の舞台となってきた。

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生命への期待を高めた3つの条件

 TRAPPIST-1系の7惑星のうち、少なくとも3つはハビタブルゾーンに位置している。

 ハビタブルゾーンとは、恒星からの距離がちょうどよく、惑星の表面に液体の水が存在できる温度帯の領域のことだ。

 液体の水は生命の誕生に不可欠と考えられているため、この領域に惑星があることは、生命が存在する可能性を示す重要な条件になる。

 さらに、赤色矮星の周囲には地球サイズの惑星が多く存在することが天文学者たちの観測で明らかになっており、TRAPPIST-1系はその代表例として注目を集めてきた。

 ジュネーブ大学でハビタブルゾーンの研究を専門とするエメリン・ボルモン准教授は「TRAPPIST-1系は比較惑星学を行うための絶好の場だ」と語る。

 比較惑星学とは、複数の惑星の特徴を比べることで惑星の成り立ちや進化のしくみを解き明かそうとする学問だ。

なかでも恒星に最も近い内側の2惑星、TRAPPIST-1bとTRAPPIST-1cは、恒星の影響を最も強く受ける位置にあるため、大気の有無を確かめる観測の最優先ターゲットとなってきた。

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ジェイムズ・ウェッブが示した昼夜の温度差500℃の現実

 スイスのベルン大学とジュネーブ大学を中心とする国際研究チームは、NASA・ESA・CSAが共同開発したジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使い、TRAPPIST-1bとTRAPPIST-1cを60時間にわたって継続的に赤外線で観測した。

 惑星が恒星を1周する間に放出する熱の変化を時系列で記録する「熱位相曲線」と呼ばれる手法を用いることで、2つの惑星の昼側と夜側それぞれの表面温度を高い精度で割り出した。

 その結果は厳しいものだった。

 TRAPPIST-1bの昼側の表面温度は200℃を超え、TRAPPIST-1cも約100℃に達していた。一方、夜側はマイナス200℃以下という極寒の環境で、昼夜の温度差は500℃以上にもなる。

 これほどの温度差が生じる原因は、大気の不在にある。

 地球では大気が熱を昼側から夜側へと運び、温度差を和らげる役割を果たしている。しかしTRAPPIST-1bとTRAPPIST-1cには大気が存在しないため、昼側は焼けつくような高温に、夜側は凍りつくような極寒になる。

 大気が失われた原因として、研究チームは赤色矮星特有の強烈な放射線と潮汐ロックという現象を挙げている。

 潮汐ロックとは、惑星が恒星の重力によって自転と公転の周期が一致した状態のことだ。

月が常に同じ面を地球に向けているのと同じ現象で、惑星の片面は永遠に昼、もう片面は永遠に夜になる。

 赤色矮星は活動が活発で、強烈な紫外線や高エネルギー粒子を惑星に浴びせ続ける。この放射線が長い年月をかけて大気を宇宙空間へ吹き飛ばしてしまったと考えられている。

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外側の惑星が持つ可能性と今後の探索

 内側2惑星の結果は厳しいものだったが、TRAPPIST-1系の探索はここで終わりではない。

 太陽系に目を向けると、太陽に最も近い水星には大気がないが、少し離れた金星と地球はしっかりと大気を保っている。

 TRAPPIST-1系でも同じことが起きている可能性があるとボルモン准教授は指摘する。

 「内側の2惑星に大気がなくても、外側の惑星には大気が残っている可能性を理論モデルが示している」と語る。

 その期待を裏付けるような動きが、すでに始まっている。

 2025年9月、イギリスのセント・アンドルーズ大学とフランスのパリ天文台を中心とする国際研究チームが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使ってハビタブルゾーン内に位置するTRAPPIST-1eを観測した結果、大気が存在する兆候を初めて捉えたと発表した。

 観測では特定の波長の光がわずかに減少しており、大気中の分子が赤外線を吸収している可能性を示すデータが得られた。

 もし大気が存在するとすれば、水素主体の原始的な大気や金星のような二酸化炭素主体の大気ではなく、地球と同じように窒素を中心とした穏やかな組成である可能性が高いという。

 ただし、大気の存在はまだ確定していない。

 恒星表面の黒点が光のスペクトルに大気と似た影響を与える可能性があるため、今後さらに観測を重ねて検証する必要がある。

 研究を主導したセント・アンドルーズ大学のライアン・マクドナルド博士は「大気のない岩石惑星である可能性も完全には否定できない」と慎重な姿勢を崩していない。

 TRAPPIST-1系は生命が存在できる惑星を探すための基準となる惑星系だ。

 内側の惑星が大気を持たないという今回の発見は、むしろ外側の惑星の重要性を際立たせた。

 TRAPPIST-1eの大気の謎が解明されるとき、宇宙における生命探索は新たな局面を迎えるかもしれない。

References: No thick atmosphere around TRAPPIST-1 b and c from JWST thermal phase curves[https://www.nature.com/articles/s41550-026-02806-9] / Between eternal night and day, the faces of two cousins of Earth[https://phys.org/news/2026-04-eternal-night-day-cousins-earth.html] / Two Earth-Size Worlds in TRAPPIST-1 System Reveal Stark Divide Between Day and Night[https://www.sci.news/astronomy/two-trappist-1-exoplanets-climate-14692.html]

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