ペルーで5000年前の天文観測施設を発見。潮汐の観察や気候変動の予測を行っていた
Image credit:Ministry of Culture, Government of Peru

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 ペルーの古代漁業集落アスペロの遺跡で、約5000年前に天体観測を行っていたとみられる遺構が発見された。

 太陽や月の動きを記録し、潮汐(潮の満ち引き)や気候の変化、魚介類の消長を予測するために使われていたと考えられている。

 ペルー文化省の考古学チームが20年以上の発掘調査の末に明らかにしたもので、南米最古級の文明「カラル文明」が高度な天文知識を持っていた証拠として注目されている。

漁業集落跡地に天文観察施設の遺構

 ペルーの首都リマから北へ約200km、太平洋に面したスーペ・プエルトという小さな港町の近くに、アスペロという古代の漁業集落跡がある。

 約5000年前に栄えたこの遺跡は、南北アメリカ大陸最古級の文明のひとつとされるカラル文明の港湾拠点だ。

 カラル文明は文字を持たなかったにもかかわらず高度な都市計画と建築技術を持っており、その中心遺跡カラルは2009年にユネスコの世界遺産に登録されている。

 そのアスペロで、ペルー文化省のルース・シャディ・ソリス博士率いる考古学チームが、天体観測に使われていたとみられる遺構を特定した。

 チームがアスペロの発掘を始めたのは20年以上前のことで、今回の特定はその長年の調査によって明らかになったものだ。

 発掘が集中したのは「セクターJ1」と呼ばれる区域で、遺跡内の主要なピラミッド型建造物の近くに位置している。

 この場所からは海岸線とスーペ渓谷の下流部を同時に見渡すことができ、自然現象と天体の動きを継続して観察するのに適した地点だった。

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4つの時代を経た遺構の変遷

 調査の結果、この空間は大きく4つの建設期を経ていたことがわかった。

 最初の時代には公共の儀礼施設として使われていた。その後の改修で、直径3.18m・高さ63cmの楕円形のプラットフォームが加えられ、中央にはワンカ(huanca)と呼ばれる垂直に立てられた石が置かれた。

 ワンカはアンデスの儀礼において空間の基準点として用いられた標石で、太陽や星の位置を測る目印になったと考えられている。

 第3期にはさらに大規模な建設が行われた。

 下段が直径9.40m・高さ1m、上段が直径4.80mの二段式の段状プラットフォームが築かれ、中央には長方形の石、脇には儀礼用の炉を備えた囲いが設けられた。

 専門家たちはこの構成を、太陽と月の周期を記録するための施設が本格的に整備された時期と解釈している。

 第4期になると遺構は埋め立てられ、居住区へと転換された。天文観測という専門的な役割が失われ、集落の社会構造が変化していったことをうかがわせる。

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漁業と天文知識が結びついた理由

 なぜ漁業集落に天文観測の施設が必要だったのか。海と空は密接な関係にあるからだ。

 潮汐(潮の満ち引き)は月の引力によって生じるため、月の周期を正確に把握することで潮の変化を事前に予測できる。

 また太陽の動きは季節の変化と直結しており、魚の回遊時期や嵐の到来を読む手がかりになる。

 アスペロの人々はこうした天体の規則性を長期にわたって記録することで、漁に出る時期や貝の採取、さらには内陸のスーペ渓谷の農耕集落との交易の計画を立てていたとみられる。

 同じカラル文明の中心遺跡であるカラルでも類似の天文観測の痕跡が確認されており、文明全体として体系的な自然観察が行われていたことが裏付けられつつある。

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南米最古級の文明が持っていた知識体系

 アスペロは太平洋から700mの地点に広がる18.8ヘクタールの集落で、25の建築複合体が確認されている。

 カラル文明の交易ネットワークにおける港湾拠点として機能しており、沿岸部・高地・アマゾン流域の集落との物資の流通を担っていた。

 今回の発見は、この漁業集落が単なる物資の集積地ではなく、天文観測と環境予測という科学的知識を生み出す場でもあったことを示している。

 現在、研究チームは建造物の向き・地層の構成・出土した遺物を放射性炭素年代測定の結果と照合し、より詳細な年代と当時の天文知識の内容を解明する作業を続けている。

References: Civilización Caral: descubren en Áspero estructura vinculada a la observación astronómica[https://www.gob.pe/institucion/cultura/noticias/1381248-civilizacion-caral-descubren-en-aspero-estructura-vinculada-a-la-observacion-astronomica]

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