44億年前の世界最古の結晶が、地球の生命誕生の手がかりを握っていた
ジルコン Image by Istock / <a target="_blank" href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/Reimphoto?mediatype=photography">Reimphoto</a>

44億年前の世界最古の結晶が、地球の生命誕生の手がかりを握っ...の画像はこちら >>

 微小な鉱物「ジルコン」の形成時期は44億年前にさかのぼると言われ、世界最古の結晶として知られている。

 西オーストラリア州のジャック・ヒルズで採取された42億4000万年前のジルコンを、中国科学院の研究チームが機械学習で分析したところ、約3分の1が堆積岩に由来することが明らかになった。

 堆積岩が形成されるには陸地と雨と川が必要となる。約46億年前に誕生した地球は、数億年後にはすでに大地と水の循環を持っていたことになり、生命が誕生できる条件がそろっていた可能性がある。

 この研究成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2405160121]』誌に掲載された。

地球最古の結晶「ジルコン」が残した記憶

 ジルコンはジルコニウムのケイ酸塩鉱物で、 ダイヤモンドに匹敵するほどの硬さと化学的な安定性を持ち、数十億年という時間の中でも形を保ち続けることができる。

 地球の表面はプレートの動きや火山活動、雨や風による浸食によって絶えず作り変えられており、誕生当初に形成された地殻のほとんどは再処理されて消えてしまった。

 ジルコンはその過酷な歴史を生き延び、地球初期の情報を閉じ込めてきた。

 西オーストラリア州の内陸部に広がる丘陵地帯「ジャック・ヒルズ」で採取されたジルコンの中には、最大44億年前に形成されたものが含まれており、地球上に現存する最古の物質として地質学者たちの注目を集めてきた。

[画像を見る]

堆積岩の痕跡を機械学習で探し出す

 ジルコンはマグマが冷え固まるときに結晶化して生まれるが、どんな岩石を溶かしたマグマだったかによって、ジルコンに残る化学的な痕跡が変わってくる。

 岩石には大きく分けて二種類ある。

 マグマや溶岩が冷えて固まった火成岩と、砂や泥、生物の遺骸などが水底に積もって固まった堆積岩だ。

 火成岩はマグマさえあれば形成されるが、堆積岩が形成されるには岩石が大気にさらされて雨に削られ、その破片が川や海に運ばれて積もるという一連の流れが欠かせない。

 堆積岩が存在した痕跡は、その時代に陸地と雨と川があったことの証拠になる。

 中国科学院のロス・ミッチェル教授らの研究チームは、ジャック・ヒルズのジルコンに堆積岩由来の化学的な痕跡が残っていないかを調べた。

 ジルコン一粒に含まれる化学的な手がかりは微量で、単一の指標では火成岩由来か堆積岩由来かを見分けることが難しい。

 そこで研究チームは、大量のデータをコンピューターに学習させ、ジルコンに含まれる複数の微量元素の組み合わせから岩石の種類を判別する機械学習のシステムを開発した。

[画像を見る]

42億年前の地球に陸と雨と川があった

 分析の結果、42億4000万年前のジルコンのうち35%が、S型花崗岩に由来することがわかった。

 S型花崗岩は堆積岩がマグマの中に引き込まれ、溶けて再び固まることで生まれる花崗岩で、過去に堆積岩が存在した直接的な証拠となる。

 約46億年前に誕生した地球は、その後しばらくの間マグマの海に覆われた灼熱の星だったと考えられてきたが、今回の研究は誕生からわずか4億年足らずで、地球がすでに現在に近い環境を持ち始めていた可能性を示している。

 S型花崗岩の割合は時間とともに一直線に増え続けるのではなく、上がったり下がったりを繰り返しており、その波のパターンが後の時代に記録されている超大陸の形成と崩壊のサイクルと一致していた。

 複数の大陸が合体してできた巨大な一枚の大陸「超大陸」は、過去にはパンゲアなどが存在したことで知られている。

 このサイクルが40億年以上前から繰り返されていたとすれば、地球の表面を覆う巨大な岩盤がゆっくりと動く「プレートテクトニクス」の歴史は、従来の想定よりもはるかに長いことになる。

[画像を見る]

プレートは40億年以上前から動いていた

 S型花崗岩が形成されるには、岩石が形成されてから雨や風に削られて堆積物になり、新たな岩石に固まり、プレートの動きによってマグマの中に押し込まれるという複数の段階が必要だ。

 42億4000万年前のジルコンにその痕跡があるということは、海面から突き出た陸地がそれよりずっと前から存在していたことを示している。

 堆積岩がマグマに引き込まれるにはプレートが別のプレートの下に潜り込む「沈み込み」が起きている必要があり、プレートテクトニクスの仕組みが少なくとも42億年前には動いていたことになる。

 2026年3月、カリフォルニア工科大学のシェーン・ホーチン氏らが同じジャック・ヒルズのジルコンを別の方法で分析し、約33億5000万年前には衝突型テクトニクスの証拠があるとする論文を発表[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2525466123]した。

 ミッチェル教授らの研究が示した方向性と一致する内容で、地球が予想以上に早くから現在に近い姿をしていたという見方をさらに裏付けるものとなっている。

 ただし、超大陸サイクルとの関連は憶測に過ぎないという指摘や、沈み込みがあったからといって現代と同じプレートテクトニクスが動いていたとは限らないという慎重な見方もあり、研究者の間での議論は続いている。

[画像を見る]

地球の初期には生命誕生の条件がそろっていた 

 約46億年前に誕生した地球は、マグマの海に覆われた灼熱の星だった。

 生命の痕跡が岩石に残るのは約38億年前からで、それ以前の時代に何が起きていたかは未だ謎に包まれている。

 だが、陸地があり、雨が降り、川が流れ、水が循環する環境が、誕生からわずか4億年足らずで整っていたとすれば、地球が生命を宿せる星になるまでの時間は、これまで考えられていたよりもずっと短かった可能性がある。

References: DOI:10.1073/pnas.2405160121[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2405160121] / The World’s Oldest Crystals Are 4.4 Billion Years Old And Contain Traces Of Something Even Older[https://www.iflscience.com/the-worlds-oldest-crystals-are-over-42-billion-years-old-and-contain-traces-of-something-even-older-83582] / DOI:10.1073/pnas.2525466123[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2525466123]

編集部おすすめ