最近、中居正広の「こじらせ」っぷりに拍車がかかっている。定番の「結婚は無理」発言もどんどんエスカレートして、先日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では「このコ、毎日いるのかと思うと気持ち悪い」「結婚して子供とかで来たらDVやるかもしれないし」とまで発言。
さらに、他のテレビ番組や雑誌のインタビュー等では「好きとか愛してるとか言ったことない」「とにかく一人になりたい」「何にもしゃべりたくない」「あんまり関わってほしくない」と、結婚を通り越して恋愛自体を嫌悪するような発言まで連発しはじめた。
また、今年3月4日放送の『ナカイの窓』(日本テレビ系)では、ゲストの西川史子の「夫婦が別れる理由は、結局、セックスレスなんですよ」という発言に対し、「奥さんって、そんなにエッチしたいの? 性欲強いの? 俺ら、そんなん無理だよ」と返し、セックス嫌いを公言。「でも、男の人も溜まるわけじゃないですか......」と聞かれた際には「DVDでしょ!」と即答して、まさかのセックスよりオナニーの方が好きとの告白までしてしまった。
こうした言動のせいか、ネットでは、ここのところ「中居くんは童貞なのではないか?」とすら噂される始末である。
しかし、ちょっと待ってほしい。中居くんといえば、少し前までは童貞疑惑どころか、女性関係の噂が絶えず、むしろSMAPのなかでは唯一「ヤリチン」的なにおいのする存在ではなかったか。
たとえば、90年代の終わりにはテレビ朝日アナウンサーの下平さやかとの交際が大々的に報道されたこともあるし、その後は、フジテレビアナウンサーの中野美奈子とのキスプリがネット上に流出。両親に挨拶ずみとの情報まで流れた。2008年には「FRIDAY」(講談社)で倖田來未との温泉旅行の模様を撮られ、最近も「週刊現代」(講談社)5月30日号で、中居の父親が亡くなる少し前に、フジテレビの竹内友佳アナを会わせていたと書き立てられた。
風俗好きも有名だった。キャバクラ通いの噂はしょっちゅう流れていたし、ノーパンしゃぶしゃぶ店に通い詰め、そのお店の女性従業員の家で一夜過ごしたのをやはり「FRIDAY」に撮られたこともある。
もっとすごいスキャンダルもあった。
大手マスコミはジャニーズタブーでほとんど後追い報道しなかったが、「噂の真相」は中居のサインの入った「人工妊娠中絶同意書」や、OLと中居の電話を録音したテープも公開しており、告白は非常に信憑性の高いものだった。
そんな過去まで持つ中居正広がなぜ、40代となった今、中2男子のような「こじらせ」発言を連発しているのか? 年をとって性欲が一気に減退したのか、何か女性不信に陥るようなことがあったのか。
そうではないだろう。中居くんのこうした言動の背景には、彼なりの計算、ブランディングがあるはずだ。
それはおそらく、SMAPの加齢問題と関係している。SMAPのメンバーは今、次々と四十路を迎えつつあり、明らかに体力や容貌の衰えを隠せなくなっている。人気もじわじわと下がり続け、嵐を筆頭に後輩たちがすぐ後ろまで迫ってきている。いったいSMAPはこれからどうやって生き残っていくつもりなのか。ファンのみならず、お茶の間も彼らの行く末を心配しながら見つめている。
だとしたら、中居正広はまさにその「生き残り」のために、自らを「こじらせ中年」に仕立て上げているのではないだろうか。
これまで、芸能界で年齢を重ねたアイドルが生き残るためには、アイドルを捨て本格的な俳優に転身するか、結婚して家庭的なイメージを前面に出してバラエティタレントを細々と続けるか、しか選択肢はなかった。その転身ができなかったアイドルは加齢とともに落ちぶれていくしかなかったのである。
しかし、中居くんはそのどれでもなく、逆に「結婚無理」「恋愛気持ち悪い」とこじらせることで、「高齢アイドル」の新たなロールモデルをつくろうとしている気がするのだ。それは、10代のアイドルが恋愛のにおいを隠すのとはまったく意味がちがう。自らの男性性を消し去ってしまおうとするその姿勢は、むしろ、マツコ・デラックスに近いとさえ言えるだろう。たしかに、マツコになれば、年齢や性別を超越して、いくつになってもアイドルで居続けることができるのだ。
しかも、この戦略はマーケティング的にも正しい。マツコに限らず、坂上忍や有吉弘行と、今、テレビ界を制圧している人気バラエティタレントはいずれも、普通の恋愛や幸せな家庭に背を向けた、孤独な私生活のにおいがする人物ばかりだ。
みんなが孤独なこの時代、ほんとうの孤独を抱えた者だけが、大衆の嫉妬や反感を買うことなく、その存在を肯定され、その言葉を受け入れられる。ひょっとしたら、中居はそのあたりの時代の空気感も察知して、「結婚に向いていない中年」という「孤独」を演じているのかもしれない。
中居正広という男が恐ろしくクレバーなのは、司会業における頭の回転の速さなどからも、誰もが認めるところ。
実際、中居は少し前、雑誌のインタビューでこの「結婚無理」というキャラが「ネタ」であることを認めている。
「女の子ネタを解禁した後、次のカラーは何か無いかと探していたとき、年齢も年齢だし、結婚かと」「アイドルというモテるジャンルなのに、女性を避けようとするんですよ。面白くないですか?」(「TVガイドPERSON」14年12月号/東京ニュース通信社)
ただ、この「結婚できないこじらせ中年」というのは、まったくの嘘で演じられる話でもない。それがブランディングだとしても、現実に孤独な生活を強いられるし、事実、中居正広はどんどん本当に結婚からも恋愛からも遠ざかっていっている気もする。
孤独を背負ってもなお「アイドル」をまっとうしようとしている中居正広は、はたして新しいロールモデルになれるのか。頭頂部にも目配りしつつ見守りたい。
(新田樹)