空き家が増えやすい神戸で活動する”異端の建築士”

海と山に囲まれている神戸。傾斜地などで空き家が増えやすく、その数は約11.8万戸*とも言われています。

そんな神戸で、廃材を使って廃屋を再生し、賃貸物件などに活用する事業を手掛けているのが西村周治さん。

噂を聞きつけた職人ら約30人と共に、廃屋から暮らしやすい空間を作り、使い続けてもらうという活動を続けています。

「この世に直せない家はない」と話す”異端の建築士”に密着しました。

*住宅・土地統計調査(2023年)

「この世に直せない家はない」廃屋を再生し賃貸などに活用

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の...の画像はこちら >>

「蜘蛛の巣が…」
「空き家になってどれくらい?」
「20年くらいは経つかな。こういう状態でおばあちゃんとか住んでいたりするから」

神戸市兵庫区の高台にある一軒の空き家。床の畳はボロボロ、たわんだ天井は所々、落ちてしまっています。

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

そんな人が住めなくなった家=「廃屋」を再生するのが、長髪に無精ひげの一級建築士・西村周治さんです。

(合同会社廃屋 西村周治さん)
「けっこう際まで、ギリギリまでいっちゃう感じで。ちょっと距離置いてもいい」

西村さんは、取り壊すしかないような廃屋を買い取って改修し、賃貸物件やゲストハウスなどとして活用する事業を手がけています。

(西村周治さん)
「この世に直せない家はないですね。ほとんどの家が直せると思います」

極力廃材を使用「モデルルームが廃棄するガラスをもらったり…」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

改修の方法にも特徴があります。

(西村周治さん)
「これね。もったいないね。いい木やね。ありがたく頂戴いたします」

使うのは、他の工事現場などで余った木材や解体作業で出た廃材です。

西村さん曰く「屋根が落ちてからが本番」。

ボロボロの廃屋も、オシャレなガラス張りの空間に。これも、廃材を使っています。

(西村周治さん)
「板もロシアから来る製品の梱包材で使われたものを使ったり、マンションのモデルルームが廃棄するガラスをもらったり、極力廃材を使って」

またある時は…

「土と灰と藁すさ、コーヒーの袋を刻んだものを混ぜて…」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

(スタッフ)「いけるよ。全然いける。めっちゃ黒」
(西村周治さん)「面白いね」
(スタッフ)「面白いね、この黒。そのままでいく?」
(西村周治さん)「いきましょう」

この土壁の材料は、敷地内で掘った土を廃材とあわせたもの。

(西村周治さん)
「そこで掘った地面の土をちょっと振るって、廃材の灰と藁すさ、コーヒーの袋を刻んで線維にしたものを混ぜて、塗ってみている」

「異端児」「寛大」西村さんの元には大工・職人など約30人が集まる

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

西村さんは2018年に会社を設立。

会社に所属するのは社長の西村さんだけですが、西村さんの噂を聞きつけて集まった業務委託の大工や設計の職人のほか、短期のアルバイトやボランティアなど約30人のメンバーが作業に加わります。

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

(短期アルバイト 浦壁和樹さん)
「西村さんは異端児じゃないですか?いい意味で」
「普通に考えたら『壊しましょうよ』というものを『利用できるでしょ』っていう考え方は、僕はすごい良いなと思います」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

(大工 ノリさん)
「すごくジェネラス、寛大な人。なんでも誰でも『これしたいです』と言ったら、どうにか手伝いたいし、良いじゃないみたいな」

神戸市兵庫区の梅元町では、一帯の廃屋を次々と改修。町名から「梅村(バイソン)」と名づけ、メンバーらがアート作品をつくって発表する場にもなっています。

ゴミ・雨漏り…築70年ほどの集合住宅を格安で譲り受け改修

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

去年8月、西村さんらは築70年ほどの集合住宅の改修に取りかかっていました。

(西村周治さん)
「当時としては珍しい鉄筋コンクリート造です。お金をかけて建てた感じがします」

長い間人が住んでいない部屋にはたくさんのゴミが放置されていた上に雨漏りもあり、所有者から格安で譲り受けたといいます。

(西村周治さん)
「ここ(1階)はだいぶ進んでいますけど」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

当時珍しかったコンクリート造りという建物の特徴をより際立たせるため、1階のこの部屋のキッチンはコンクリートでつくることになりました。

(西村周治さん)
「これは初めてやるので、うまくいくかどうか分かりません」

アメリカの大工・ケヴィンさんの助けでキッチン完成!

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

慣れない作業。出だしは順調に見えましたが、何やらあわただしい様子です。

(大工 羽渕正樹さん)
「キッチンの(脚の)型枠がコンクリートの重さに耐えきれずバーンと。こっち側が壊れて半壊してコンクリートが流れ出ていた」

想定が甘かったのか、脚をつくるための枠がコンクリートの重さに耐えきれず崩壊してしまいました。

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

復旧までのタイムリミットはコンクリートが固まるまで。コンクリートの扱いに慣れているアメリカから来たボランティア、ケヴィンさんの力を借りて何とか補強を完了しました。

(大工 羽渕正樹さん)
「ケヴィンはアメリカの大工で、こういうのを造ったことあるということで本当に助かりました」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

その後、シンクやガスコンロを設置。トラブルこそありましたが、無事にキッチンが完成しました。

(西村周治さん)
「きれいにいい感じに出来上がっております。しっかり型を作らないといけないなと勉強になりました」

【活動の原点】建築を学んだ大学時代…卒業後は古い長屋を借りて生活

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

大学で建築を学んだ西村さん。活動の原点は卒業後、家賃月1万5000円の古い長屋を借り、直しながら生活していたことでした。

会社を立ち上げて、本格的に廃屋改修を始めたところ、依頼が舞い込むようになり、空き家問題に悩む神戸市内を中心にこれまで30軒以上の廃屋を改修しました。

「あるものを生かして活用していくことを考えないといけない時代」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

この活動が認められ、2023年には神戸市が新進気鋭で今後の活躍が期待される人に贈る文化奨励賞を受賞しました。

(西村周治さん)
「人口減少していて、世の中的にこれ以上新しいものをつくっても空き家を増やすだけ。

あるものを生かして活用していくことを、考えないといけない時代になっている」

トイレの整備は「綺麗になるよと優しい言葉をかけて…」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

この日、集合住宅の1階部分の改修が仕上げ段階を迎えていました。行うのは最終工程となるトイレの整備。元々ついていた便器を磨き上げます。

(西村周治さん)
「『綺麗になるよ』『直せるよ』という感じの優しい言葉をかけています」
「コーキング(隙間を埋める作業)いるかな」

長らく使われていなかった水回りに苦戦しながらも何とか設置しました。

「トントンビジネス。めっちゃ儲かっているわけではない」

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

今年8月、改めて集合住宅を訪ねてみると、雰囲気が変わっていました。

(西村周治さん)
「そうですね。住めるようになっていますね」

1年前は到底人が住める場所ではなかったこの部屋も、西村さんたちと廃材の力で明るく心地よい空間に様変わりしました。

2階と3階の改修を控えているため、借り手探しはもう少し先になりそうです。

「この世に直せない家はない」ボロボロの家を廃材で直す『異端の建築士』人柄に惹かれ集まった職人らと“暮らしやすい空間”手がける「既存のモノの活用を考えないといけない時代」
MBS

西村さんはこれからも、自分たちの手で廃屋から暮らしやすい空間を作り使い続けてもらう、そんな活動を続けるつもりです。

(西村周治さん)
「トントンビジネスですね。自転車操業とも言いますけどね。めっちゃ儲かっているわけではない」


(2026年9月30日 MBS『よんチャンTV』内『特集』より)

編集部おすすめ