元日本テレビ解説委員・キャスターで、関西学院大特別客員教授の小西美穂さん(57)が、学術とテレビの世界で多岐にわたる活躍を見せている。4本のレギュラー番組出演を抱えながら教壇に立つバイタリティーの源には、「挑戦がないと不安になる」という強い好奇心があるという。
人生に不安や虚無感を覚えるなど40、50代の多くが経験すると言われる「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」。記者にも年の離れた友人がおり、よく「中年の思春期なんだって」と嘆いている。50歳で大学院に通い、現在は教べんを執る小西さんからは「逆境が好き」「まだ見ぬ景色をもっと見たい」と前向きな言葉が何度も飛び出す。“第二の思春期”を謳歌(おうか)する生き方には、きっと人生を好転させるヒントがあると感じた。
そのバイタリティーの片りんは、幼少期からのぞかせていた。「3人きょうだいの末っ子で、好奇心旺盛な性格でした」。読書も大好きで「お気に入りのグリム童話の書き写しに没頭した」ほど。小学1年の時、事件は起こる。「家に遊びに来た上級生の子に『そんなのやっても何にもならないよ』と言われて。胸が押し潰されるような気持ちになって、書き写しの紙をバリバリ破いて空に投げて捨ててしまった」
えも言われぬ悔しさを抱えながらも、父の勧めで日記を書き始めた。小学1年にして、祖父の葬儀の描写は「のど仏が仏さまの形をしていた」などと記すほど観察眼と筆力に優れていた。
関学大時代にはラクロス部の創設に関わり、初代主将に就任。日本代表にも選出された。「ルールも部員集めもゼロからでしたけど、やればやるほど新しい明日が来る楽しさがあった」と、当時マイナーだった同競技の普及に奮闘した。テレビがその様子を取り上げたことで影響力の大きさを痛感し、テレビ局の仕事に興味を抱いた。
92年に読テレに入社し、報道記者として警察、司法取材に奔走。作家でもある大平光代弁護士のベストセラー「だから、あなたも生きぬいて」の書籍化の契機となったドキュメンタリーを制作し、脚光を浴びた。01年には同局女性初のロンドン特派員に。だが、すぐには第一線に立つチャンスは巡って来なかった。
「米国の同時多発テロが起き、他の特派員が取材へ行く中、私は力不足もあり留守番の日々で。すごく悔しくて近くのバス停に行って泣きましたね。
逆風も原動力にするのが小西流。欧州サッカー界のスーパースターとの出会いが突破口になった。「連日タブロイド紙の表紙を飾るイケメンがいて、それがデービッド・ベッカムでした。『すぐに日本でも人気が出る!』と直感しました」
地道に自主的な取材を進め、リポートを送ると日本でも高視聴率を連発。直後の日韓W杯によるサッカー熱の高まりと共に、小西さんは“ベッカムフィーバー”の火付け役となった。「自称ベッカム番(記者)として8か国に取材に行きました。あんなにくっつき回る日本メディアは他になかったので、向こうも『また来たん、こいつ!』みたいな顔をしていましたね(笑)」
帰国後は日テレ出向を経て同局に入社。討論番組の司会や、「news every.」のキャスター(17~22年)として分かりやすい解説で親しまれた。だが、胸の内では「局員としてのキャリアは『こんな感じで終わりそう』と先が見えてきていたし、社会に貢献し続けるためにしっかりインプットすることが必要」と焦燥感があった。
「人生を変えてみたい」と50歳で早大大学院への入学を決断。現役局員が大学院に通う草分け的な存在だったため、「忙しさを言い訳にしたくなくて、いつも以上に仕事でも成果を出そうと必死でした」。夕方の「―every.」の生放送を終え、酔客でにぎわい始める新橋を逆行して大学院へ向かう日々を送りながら、研究にも没頭。
22年には同局を退社し、母校・関学大の教壇に。現代ジャーナリズムを教える講義は、キャンパス史上最多履修者810人を記録する人気ぶりだ。「ひょっとしたら今が天職かも」とやりがいを感じている。
「大学の講義は生放送と共通点が多く、大事なことを最初に分かりやすく伝えることや声の大きさ、テンポ、目線など、仕事で培ったことが生きている。学生さんたちは目を輝かせて講義を聴いてくれます。メディアに不信感を持っている世代でもあり、質問も的確で発見と学びの連続。大学で知る喜び、考える喜びを分かち合いたいですね」
挑戦を重ね、たどりついた客員教授とコメンテーターの二足のわらじ。「情報ライブ ミヤネ屋」の後番組として5日から始まる古巣・読テレの「ニュースto」(月~金曜・後1時55分)に出演するなど、4本のレギュラーを持つ。「チャレンジや逆境がないと不安になる性分。自分に負荷をかけながら知らなかったことを知り、未知の景色を求め続けたい」。大きな笑顔の中に、飽くなき探究心がのぞいた。
◆小西 美穂(こにし・みほ)1969年6月9日、兵庫県生まれ。57歳。関学大卒業後の92年、読テレに入社。報道記者、ロンドン特派員などを経て2004年に日テレ出向。06年、同局入社。BS日テレ「深層NEWS」など多くの討論番組で司会を担当。21年、早大大学院政治学研究科修士課程修了。22年から関学大総合政策学部特別客員教授を務め、テレ朝系「ワイド!スクランブル サタデー」などに出演。

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