自民と維新による電撃的な連立政権の合意から1年。「アクセル役」を自負する維新の参画によって「副首都法」や「改正皇室典範」などが相次いで成立し、与党政治のスピード感には変化が生まれている。

当初は維新から閣僚を出さない「閣外協力」で始まった連立だったが、9月の内閣改造で維新の中司宏氏が規制改革担当大臣に就き、ついに「閣内協力」に至った。

一方、審議の進め方をめぐって国会が空転するなどし、かつての自民の連立相手で「ブレーキ役」とされていた公明党の議員からは釘を刺す声も上がっている。

永田町を揺るがせた政局の舞台裏で、一体何が起きていたのか。

大阪・高石市での「だんじり祭」の最中に交わされた極秘交渉から、立ちはだかる「理想」と「現実」の狭間で下した決断まで…連立のキーパーソンである日本維新の会・遠藤敬氏の証言から、激動の一年間の深層に迫る。

取材・文:米田佳史(MBS記者)

だんじり祭の喧騒の裏で… 「自維連立」樹立の極秘交渉

「“同じ立場”で考えてみてよ」高市氏の一言で始まった自維連立...の画像はこちら >>

勇壮な掛け声とともに、だんじりが街を駆け抜ける。

10月11日、大阪府高石市で行われた秋祭り。だんじりの先頭に立ち、満面の笑みでうちわを振る日本維新の会の吉村洋文代表の姿があった。

招いたのは地元選出の衆院議員で、高市政権のキーパーソンでもある遠藤敬総理補佐官だ。

「“同じ立場”で考えてみてよ」高市氏の一言で始まった自維連立 だんじり祭の真っ最中に動いた電撃政局の裏側を維新・遠藤敬氏が証言 “埋没懸念”に「もう一段ギアをあげていかないと…」【高市政権1年】
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熱気あふれる参加者に囲まれた吉村氏は、遠藤氏をこう持ち上げた。

「遠藤さんには永田町でメチャクチャお世話になっている。高市さんが仕事している所で一緒に仕事をしていて、困ったことがあったら遠藤さんにお願いに行く」

実はちょうど1年前、この祭りの喧騒の裏で、自民と維新の連立政権の樹立に向けた極秘交渉が行われていた。

「無責任なこと言わないで」 1通のSMSから始まった電撃合意

「“同じ立場”で考えてみてよ」高市氏の一言で始まった自維連立 だんじり祭の真っ最中に動いた電撃政局の裏側を維新・遠藤敬氏が証言 “埋没懸念”に「もう一段ギアをあげていかないと…」【高市政権1年】
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連立のきっかけとなったのは、去年10月9日、遠藤氏が自民党の高市総裁(当時)の携帯電話に送った1通のショートメッセージだった。

《なかなか厳しい状況かと思いますが、お体には留意してくださいね》

当時、企業・団体献金の規制を巡って自民と公明の関係は悪化。遠藤氏は、政権からの公明の離脱を感じ取っていた。

長年の付き合いから、高市氏に励ましの言葉を送ったつもりだったが、そのわずか30分後に折り返しの電話が入る。

「遠ちゃん、無責任なこと言ってるんじゃないわよ。報道では自民と国民民主の連立が言われているけれど、そこまでの話にはなっていない。あなた方も“同じ立場”で考えてみてよ」

同じ立場=“連立打診”とも取れる高市氏の言葉に、遠藤氏は耳を疑ったという。

翌日、公明党は26年に及んだ自公政権からの離脱を表明。これを受けて遠藤氏は、「自維連立」に向けてアクセルを踏んだ。

「高市ー吉村会談」の実現に向け、遠藤氏は高市氏との間で電話交渉に取り組む。地元のだんじり祭の真っ最中にも交渉は続いた。

そして、「大阪・関西万博」が閉幕する10月13日、ついにその時が訪れる。

遠藤氏が手繰り寄せた、わずか40分の間隙

「13日は吉村さんはテレビ出演で予定が埋まっていた。高市さんに『何時なら時間あいてますか』と。たまたま2人の都合が合ったのは40分間。吉村さんの携帯電話の番号を高市さんに教えて、電話してもらうよう伝えた」

長時間の電話で調整を終えた後、軽トラックの脇で口にした食べかけの『たません』は、すっかり干からびていた。

電話会談が行われた13日の夜8時半頃、高市氏から遠藤氏のもとに連絡が入った。

「いい話ができた。これから話を進めようと思う…」

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それからわずか1週間、10月20日に自民と維新は連立政権合意書に署名し、電撃的に連立政権が誕生した。

副首都法成立と国会空転 「アクセル全開」がもたらした光と影

以後、高市総理率いる自民党と「アクセル役」を自負する維新の連立政権によって、政治のスピード感は一変する。維新が看板に掲げてきた「副首都法」や「改正皇室典範」などが矢継ぎ早に成立した。

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一方、維新がセンターピンに据える「議員定数削減法案」を巡っては、衆院の特別委員会で審議入りを強行したとして野党が全ての審議を拒否するなど、国会は空転した。

激動の1年を、遠藤氏はこう振り返る。

「密度の濃い1年だった。良いこと悪いこと含めて…連立に入っていなければ副首都法の成立は絶対にあり得なかった」と、連立を組んだことによる手応えを強調した。

「プロセスにこそ意義がある」 かつてのパートナー・公明党からの釘

一方、かつて自民党の連立パートナーだった公明党は、今の政権の姿をどう見ているのか。

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公明党の伊佐進一衆院議員は、強い危機感を隠さない。

「議論不足、コミュニケーション不足を今の政権には感じる。数が多いから多数決で物事が決まる、というのが民主主義ではない。民主主義とは調整の過程にこそ意義がある」

連立相手が変わって一気に進んだ政策の1つが、安全保障の転換だ。

日本はこれまで他国へ輸出できる「防衛装備品」について「救難」や「輸送」など非戦闘目的に限定してきたが、これを撤廃。日本と協定を結んだ国に対して、戦闘機や潜水艦など「殺傷能力のある武器の輸出」を原則解禁した。

こうした安全保障分野などで、自民党の「ブレーキ役」を自認してきた公明党。

伊佐氏は「時代の変化に合わせた見直しは否定しない」としつつも、こう釘を刺す。

「大事なのは、国会がどれだけ関与し、国民に丁寧に説明できるかだ。世の空気だけを捉えて民主的なプロセスをおざなりにし、やりたいことだけ進めるのは、長い目で見て国のためにはならない」

一方で、野党側が十分な受け皿になり切れていない現状に「我々にも大きな責任がある」と悔しさをにじませながら、こう語った。

「自民と維新が同じ方向を向き、どんどん政策を進めることに不安を抱く国民も確実にいる。そういう声を受けて、公明は政権与党を担ってきたので政策を作っていく」

「理想」と「現実」の狭間で…「埋没」の危機感

「“同じ立場”で考えてみてよ」高市氏の一言で始まった自維連立 だんじり祭の真っ最中に動いた電撃政局の裏側を維新・遠藤敬氏が証言 “埋没懸念”に「もう一段ギアをあげていかないと…」【高市政権1年】
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「アクセル」を踏む自維連立政権だが、維新自身の足元には影も差し始めている。

連立入り以降、「政治とカネ」の問題での追及が鈍ったとの批判や、「自民党の一派閥のようだ」との指摘もつきまとう。

こうした「埋没の懸念」に対し、遠藤氏は自らに言い聞かせるように語る。

「維新らしさが問われているのは確かだが、政策を実行できることが政党のあるべき姿。自民党と連立を組んだところは消えてなくなると言われてきたが、消えてなくなるなら消えてなくなったらいい。必要とされる政党であり続けるために、自分たちの存在意義を示さなければ意味がない」

野党から与党へ、閣外協力から閣内協力へ。

今後、維新はどこへ向かうのか。

「青臭いことを言い続け、実行するのが維新らしさだった。でも数の原理でいくとわれわれは弱小政党。現実と理想のはざまで、どうバランスを取るかが問われてくる。政党として、もう一段ギアをあげて成長していかないと…」

本丸「議員定数削減」へ 問われる2年目の連立の真価

「“同じ立場”で考えてみてよ」高市氏の一言で始まった自維連立 だんじり祭の真っ最中に動いた電撃政局の裏側を維新・遠藤敬氏が証言 “埋没懸念”に「もう一段ギアをあげていかないと…」【高市政権1年】
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自維連立から1年を迎えた10月20日、国会では高市総理が悲願とする「消費税減税関連法案」の審議が始まった。

さらに最大の火種になるのが「衆議院の議員定数削減」だ。比例の削減に「多様な民意を切り捨てるものだ」などと反発する野党の壁が立ちはだかっているうえ、連立を組む自民党の内部にも慎重論がある。

しかし、遠藤氏は成立に強い執念を見せる。

「公約は必ず実行する。やる前から、ああでもない、こうでもないというのはこの世界はご法度。やれるようにするのが僕の仕事。民主主義なので、最終的に調整はあるかもしれないが…」

永田町の姿を劇的に変えた「高市—遠藤」ライン。

「アクセル役」の決断は、日本の政治を改革へと導く突破口となるのか。連立2年目の真価が試されることになる。

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