- 認知症介護の大変さ
- 介護者に心の落ち着きを取り戻してもらう
- 介護サービスにおける「レスパイト」の考え方
特別養護老人ホーム裕和園の髙橋秀明です。
今回は認知症介護はどんなところが大変なのかを考え、介護者の心身を守るためのサービス「レスパイト」を紹介します。
認知症介護の大変さ
介護保険法では、認知症を「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態」と定めています。
原因となる疾患(アルツハイマー病やレビー小体病、脳卒中など)により、今まで蓄えてきた知的な能力が低下し、日常生活に支障をきたす状態です。認知症ではない人から見たら、考えられないようなことが起こりえます。
例えば、「トイレ以外の場所で排せつをする」「冷蔵庫の中をぐちゃぐちゃにする」「火の不始末」「外出して道に迷ってしまう」など、例を挙げるとキリがありません。
しかも、生活は断片的ではなく、常に連続的なものです。そのため「いつ、どこで、何が起こってもおかしくない」状況の範囲に制限はありません。
そのため、介護者は常に見守りの目を持ち続けなければならず、精神的負担や疲弊感は大変なものになります。
些細なことでイライラするなど感情のコントロールが難しくなったり、不安感や不満、ストレスが溜まって、介護者自身の生活にも良くない影響が生じたりします。
介護者に心の落ち着きを取り戻してもらう
私は介護専門職として、介護のストレスを抱えた多くの家族に向き合ってきました。
支える家族がストレスを抱えた状態だと、認知症の方の生活にも悪影響を与える可能性があります。
そこで私は、介護ストレスを抱える家族に比喩的な表現で、以下のようなお話をさせていただいています。
「終わりの見えない階段を登り続けること、ゴールの見えないマラソンを走り続けることは大変です。階段なら踊り場があり、マラソンなら給水所があります。熱心で責任感が強い方ほど、介護に熱が入りがちです。その結果視野や選択肢が狭くなってしまう方も少なくありません。そこで、そうした方の熱心さや責任感をしっかりと受け入れ、ねぎらいの言葉を兼ねて比喩的な話をすると、家族も冷静さを取り戻すことがあります。
介護サービスにおける「レスパイト」の考え方
介護者を支援するうえで大切なのは、少し心を落ち着けてもらうことです。そのためには、シンプルに「お休み」が有効です。
こうした介護者を支援する方法に、「レスパイト」という介護サービスがあります。
「レスパイト」とは、休息や一休みを意味します。つまり、介護者が一時的に介護から離れ、休息するための介護サービスを指します。
介護保険で利用できるレスパイトサービスの種類
1.在宅サービス- 通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)といった通いのサービス。主に朝から夕方までの日中に高齢者の介護を行うサービス
- 短期入所生活介護等の短期間だけ施設に宿泊し介護を受けるサービス
- 訪問介護(ホームヘルプ)といった訪問介護員が自宅に来て、決められた時間内に行うサービス
小規模多機能型居宅介護という事業者が「通い(デイサービス)」「訪問(ホームヘルプ)」「宿泊(ショートステイ)」の3つのサービスを提供していることが特徴です。在宅サービスでは、通所や短期入所など、それぞれの事業所と契約を結ぶ必要がありますが、小規模多機能型居宅介護は、一つの事業所と契約するだけで上記サービスを受けられます。
3.入所サービス入所サービスと聞くと、施設に住み替えるイメージを抱く方もいますが、月単位の利用が可能な、介護老人保健施設もあります。
介護老人保健施設は、一般的に「介護を必要とする高齢者に対して介護サービスやリハビリなどを提供し、自宅復帰への支援を行う施設」です。
利用者のリハビリや生活支援に加えて、家族の介護休みや家族の介護力向上(介護方法の伝達、介護に適して住環境の調整など)のため、要介護者が1ヵ月程度入所して自宅復帰する、という利用の仕方をされている方もいました。

これらのサービスを利用する際は、ケアマネージャーとよく相談をしておくことが大切です。
原則的にケアマネージャーが作成するケアプランがないと、介護サービスは受けられません。ケアマネージャーは、本人はもちろん、家族も含めてフォローする専門家です。ケアマネージャーと契約をしていない場合は、市区町村や最寄りの地域包括支援センターに相談しましょう。
介護専門職は、介護サービスや支援を通じて、本人・家族双方の生活をより良く、より幸福感を感じていただけるようにすることが仕事です。何か困ったことがあったら気兼ねなく相談してみてください。
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