- 介護業界における2025年問題と2035年問題の本質
- 介護人材の離職を防ぐ処遇改善加算
- 貸付制度、交付金…新しい制度が続々登場
少子化が続いている日本では、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が年々減少してきており、国全体が深刻な人材不足に陥っています。その中でも、とりわけ介護業界の人材不足が取り上げられる機会が多いのには理由があります。
介護業界の2021年12月の有効求人倍率は3.82となっています。全体の有効求人倍率1.16と比較しても、介護職の有効求人倍率は常に高く推移しています。
一方、介護サービス職業従事者は年々増加し続けています。2010年から2015年の間に29万人増加しており「働く人が増え続けている職業」でもあるのです。
介護人材が不足すると、介護が必要な人にサービスが行き届かない「介護難民」が発生するリスクが高まります。そのため、介護人材の不足は業界だけでなく、介護サービスを受ける側にも影響が大きいのです。
今回は介護業界の人材不足が起こる背景と、その対策としての待遇改善を考えます。
介護業界における2025年問題と2035年問題の本質
急速に進んできた少子高齢化が今後引き起こすといわれているのが「2025年問題」と「2035年問題」です。
2025年問題とは、団塊の世代が75歳(後期高齢者)となることで、医療や介護などの需要が急増し、日本の社会保障がひっ迫すると予測されている問題です。
対して、2035年問題は、そこからさらに人口の約3分の1が65歳以上の高齢者になり、高齢化がいっそう深刻になるという問題を指しています。
経済産業省が公表したデータによると、介護を必要とする要介護(要支援)認定者の将来推計は、2025年で約815万人、2030年で約900万人と予測されています。
それに伴って、介護従事者の不足人数は2025年で32万人、2035年に68万人になると予測しています。
つまり、介護業界は介護に携わる人材は他業種よりも速いペースで増加しているものの、それ以上のペースで急速に高まり続けている需要に人材増加がまったく追いついていないのです。
介護人材の離職を防ぐ処遇改善加算
一方、課題となっているのが、離職率の高さです。厚生労働省の調べによると、離職者の約73%が勤務後3年未満となっています。
政府は介護職の離職を防止し、人材不足を解決するためにさまざまな対策を打ち出しています。
代表的な例が、2012年から開始された介護職員処遇改善加算の制度です。この制度はキャリアパス整備や職場環境の改善に取り組んでいる事業所へ、より多くの介護報酬を支給するもので、比較的多くの事業所で加算取得されています。
介護職員処遇改善加算は、2009年に介護職員処遇改善交付金が先行して創設され、処遇改善対策として介護報酬に上乗せ支給する仕組みとして始まりました。
2012年から現行の制度となり、導入後介護人材の離職率低下には一定程度歯止めがかかったとされています。制度導入から10年経過したこともあり、算定する事業者も9割を越えています。
介護職員処遇改善加算を取得するためには、まず職場環境等要件を満たす必要があります。働きやすい職場であることは、加算取得にかかわらず、職員、利用者にとってもメリットが大きくなります。次の区分の中からいずれか一つでも取り組んでいれば、該当となります。
- 入職促進に向けた取り組み
- 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
- 両立支援・多様な働き方の推進
- 腰痛を含む心身の健康管理
- 生産性向上のための業務改善の取り組み
- やりがい・働きがいの醸成
上記を満たしたうえで、キャリアパス要件となる3つの項目を満たすことで介護職員処遇改善加算を取得することができます。
- ①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備している
- ②資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保している
- ③経験もしくは資格などに応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みが設けられている
介護人材に長く働いてもらうためには、こうした要件を多く満たし、より上位の加算(Ⅰが最上位、Ⅱ・Ⅲが続きⅣ.Ⅴについては2021年度で廃止)を取得しながら昇給体系や中長期的なキャリアビジョンを示すことが重要とされてきました。
その考えに基づいて導入された介護職員処遇改善加算の取得が進んだということは、それだけ介護業界全体の給与体系の見直しや刷新、環境整備が進んだことを意味しています。
貸付制度、交付金…新しい制度が続々登場
待遇や処遇が悪いというイメージはなかなか払拭できていませんし、まだまだ待遇に対する不満の声は聞かれます。
しかし、加算の取得が進んだこともあり、全産業が停滞している状況で介護職の待遇改善は進んでいるのも事実です。
加算だけでなく、介護福祉士修学資金等貸付制度(2018年)や介護職員特定処遇改善加算(2019年)、そして約9,000円アップを目指した福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の創設など、政府は次々と対策を講じています。
制度の使い勝手や加算要件の煩雑さがハードルとなることも多く、対策がすぐに現場に反映されたり浸透したりするには時間がかかりますが、介護業界全体としてみれば職場環境や労働環境の整備、福利厚生の充実化といった面では改善傾向にあります。

また、制度以外の面であるIT化や機械化も同時に続々と導入されています。人材不足の問題が早々に解消することはありませんが、介護業界の中にあっても事業所によっては労働環境を整備した結果、離職率が低く、採用に困っていない現場も決して少なくありません。
介護業界を問題視する声は依然として大きいですが、やり方次第では成長を続けることもできるのではないでしょうか。
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