「家族の介護でストレスがたまっている」
「介護疲れなのか、ときどき気持ちが落ち込んでしまう」

家族の介護をされている方の中には、このような悩みを抱えている方も多いことでしょう。

介護を続けていると、心身ともに大きな負担がかかります。

負担がかかりすぎた状態で介護を続けていると、いわゆる「介護うつ」を発症する可能性があるのです。

この記事では、介護うつの原因や症状のほかに予防方法についてもご紹介します。

3つの負担が介護うつの主な原因

介護うつとは、家族を介護している方が、さまざまな介護負担が原因で大きなストレスを抱えて、うつ病を発症することをいいます。

介護うつの主な原因といわれるのは、以下の3つです。

1.身体的な負担

介護場面では、食事・入浴・排泄の介助などで身体に大きな負担がかかります。

特に排泄介助は、車いすやトイレへの移乗、おむつ交換など介助量が多いものです。加えて、夜間に対応することもあるため、睡眠時間を削られるときもあるでしょう。

睡眠不足となり、身体的負担が大きくなる場合もあります。

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2.精神的な負担

要介護者が認知症の方の場合、介護への抵抗・暴言・暴行といった症状が出てくることがあるため精神的な負担も大きくなりやすいです。

また、要介護者1人で外出して行方不明になるケースもあるので、常に目が離せない状況ともいえるでしょう。

これらの状況は、介護者にとってかなり大きな精神的負担となります。

さらに、家族や親族・知人などから「もっと面倒をみてあげて」など、心ない言葉をかけられる可能性もあります。このような言葉は、精神的負担を増大させるかもしれません。

3.経済的な負担

介護負担軽減のため介護保険サービスを使う場合は、基本的に利用料金がかかり、サービス利用量が増えると料金も高額になります。

経済的に余裕がない場合は、サービス利用を控えて家族が介護することになるかもしれません。

介護のために仕事を辞める、いわゆる「介護離職」状態になると、さらに経済的負担が増えるのです。

介護うつになりやすい方の主な特徴7つ

同じように介護をしていても、介護うつになりやすい方となりにくい方がいます。

介護うつになりやすい方の主な特徴を7つあげてみました。

  • まじめで几帳面
  • 完璧主義
  • 責任感が強い
  • 周りに気を遣いすぎる
  • 体が弱く体力がない
  • 悩みを1人で抱え込む
  • 経済的に余裕がない
  • 思い当たる点が多い方は、次にご紹介する予防法を参考になさってください。

    介護うつを予防する3つの方法

    介護うつになると、心身ともに大きくダメージがあるので、日常生活にも支障をきたす場合があります。

    介護うつにならないためには、予防が大切です。

    ここでは予防法を3つご紹介します。

    1.介護保険サービスを利用する

    家族介護、特に主介護者が1人で介護を担っている場合は、その方に大きな負担がかかります。その結果、結果として介護うつを引き起こす可能性も大きくなるでしょう。

    介護者の負担を軽減するには、家族や地域包括支援センターなどに相談した上で、介護保険サービスの利用を検討してみてください。

    デイサービスやショートステイの利用により介護から離れる時間を作ることで、精神的負担の軽減につながります。

    住民税非課税世帯など、一定の収入以下であれば利用料減免制度の対象になる可能性もあります。まずは、市区町村役場や地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。

    2.施設入所も検討する

    寝たきりに近い状態である、認知症が進んできているなどが原因で、在宅での介護が難しくなっているようであれば、施設入所を検討しましょう。

    主な施設としては、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・認知症高齢者グループホームなどがあります。

    特別養護老人ホームは要介護3以上・介護老人保健施設と介護医療院は要介護1以上・グループホームの場合は認知症で要支援2以上の方が入所対象です。

    介護うつになりやすいのはこんな人!在宅介護者に伝えたい3つの予防策
    画像提供:adobe stock

    3.バランスの良い食事で体調を整える

    できるだけ栄養バランスのとれた食事をとって、自分の体を気遣うことも大切です。

    そのためには、ごはんやパンなどの主食だけではなく、しっかりとおかずも食べるようにしましょう。

    調理が大変な場合は、家族間でサポートし合えるようにしておくのも一つの方法です。

    介護うつの症状

    介護うつの場合でも、一般的なうつ病と症状は同じです。ここでは5つの症状をお伝えします。

    1.気持ちがひどく落ち込む

    理由がないのに、気持ちがひどく落ち込む・何をやっても楽しくない・わけもなく涙が出るといった症状が出てきます。

    重症になると、死にたいと思う気持ちや言動が出る場合があります。そのような状況であれば、医療機関受診が必要です。

    2.疲れやすくなる

    身体を休めても疲れがとれない・少し身体を動かしただけでも疲れる・体力や気力が落ちた感じがするといったことがあります。

    3.よく眠れない

    よく眠れなくなるのもうつ症状の1つです。

    寝つきが悪くなる・ぐっすり眠れない・夜何度も目が覚めてしまうといった状況があげられます。

    4.食欲がない

    食欲がない・食事をしてもおいしいと感じない・食べようとしても食べられないなどの

    症状が出てきます。

    栄養状態の低下や体重減少などをともなうこともあるので、注意が必要です。

    5.不安や焦りが強くなる

    これといった理由がないのに、不安・焦り・イライラが強くなることがあります。

    そのため、気持ちが不安定になってしまうこともあるでしょう。

    うつに関するセルフチェックとして、「厚生労働省・簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)」があります。

    詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。

    介護うつの治療法はどのようなものか

    自分が介護うつかもしれないと感じたら、1日も早く病院を受診しましょう。早期に治療を受けることで、早い回復が期待できます。

    治療法は大きく3つあります。

  • 休養
  • 薬による治療
  • 精神療法
  • まずは、家族に介護を代わってもらう、介護保険サービスを利用するなどで心と体を休めましょう。

    薬による治療や精神療法も有効で、精神療法の一つとして、「認知行動療法」があります。

    具体的にいうと、物事の受け取り方や考え方(認知)や行動を少しずつ良い方向に変えられるように働きかける方法です。

    考え方や行動が変わると、同じような状況でも受け止め方が変わってきます。その結果、精神的な負担も軽減されて、うつから回復しやすくなるのです。

    まとめ

    この記事では、介護うつの原因・予防法・症状・なりやすい方の特徴・治療法などをご紹介しました。

    介護は24時間365日続くものであり、気が抜けないと感じる方が多いことでしょう。

    そのため介護中は心身ともにストレスが強くなりがちです。

    介護うつになりやすい特徴に該当しない方でも、ストレスが強い場合は介護うつになる可能性はゼロではありません。

    そのために必要なのが、介護うつにならないための「予防」です。

    もし、心身ともに疲れを感じたら、介護サービスを利用して介護から離れる時間を持つなど、さまざまな予防法を試してみましょう。

    そして在宅での介護が難しいと感じたら、施設入所を検討するのも1つの方法です。

    その際は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。

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