厚生労働省の『介護保険事業状況報告』によれば、2022年4月時点の要支援者(要支援1・2)の認定者数は190万人を超えています。10年前は約140万人でしたので、年平均で約5万人増加しています。
今回は、要支援1・2の人が受ける介護予防通所リハビリテーションに焦点を当て、現場の理学療法士の視点で説明をさせていただきます。
介護予防通所リハビリの定義
要支援1・2の認定を受けた要支援者が受ける介護サービスを『介護予防〇〇』といいます。
主に下記のような例が挙げられます。
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防訪問看護
- 介護予防福祉用具貸与
この中で、介護予防通所リハビリは、主に下記の施設・医療機関に併設されています。
- 病院、診療所:全体の半分程度
- 介護老人保健施設:全体の半分程度
- 介護医療院:ごくわずか
デイサービスとの大きな違いは、施設・医療機関に必ず医師がいるということです。そして、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリ専門職も原則的に配置されています。
最近では、デイサービスにもリハビリ専門職が多く設置されているため、違いがわかりづらいかもしれませんが、人員・施設基準が異なります。
介護予防通所リハビリの5つのポイント
介護予防通所リハビリの詳細を5つに分けて説明しましょう。
1.スタッフ
下記の職種で構成されており、リハビリ職員だけではなく、さまざまな職種が働いています。事業所によって異なりますので、必ずすべての職種がいるとは限りません。
- 専任の常勤医師1人以上
- リハビリ職員(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)
- 看護職員(看護師・准看護師など)
- 介護職員(介護福祉士など)
- その他専門職(歯科衛生士、管理栄養士など)
- 送迎の運転手など
2.サービス内容(1日の流れ)
介護予防通所リハビリの基本的な1日の流れは下記の通りです。
送迎(自分で通所することも可能)→来所→サービス提供→送迎(自分で帰ることも可能)→帰宅サービス内容に関しては、事業所によって異なりますが、下記のようなものがあります。
- リハビリテーション
- 栄養指導
- 口腔機能向上サービス
- 入浴
- 食事
- レクリエーションなど
3.リハビリの内容
介護予防通所リハビリでは、理学療法士などのリハビリ専門職とかかわる時間だけがリハビリではなく、通所している時間すべてがリハビリという考えのもとでサービスを提供しています。
例を挙げると、下記の通りです。
- 通所リハビリ内の移動の歩行(例:席からトイレまで)
- 入浴や更衣動作
- 送迎車への乗降
- 他利用者との交流、コミュニケーション
- 食事や歯磨き
- 椅子への着座・レクリエーションや集団体操など
もちろんそのような時間に加えて、次のようにリハビリ専門職が直接かかわる時間もあります。
- 筋力練習
- 起居動作練習
- 日常生活動作練習(トイレ、更衣、食事、入浴など)
- 屋内外歩行練習
- 買い物練習
- 外出練習
- 嚥下練習
- コミュニケーション練習
- 機械を使ったパワーリハビリなど
このようなリハビリメニューを利用者の状態にあわせて実施しています。
4.料金体制
要支援者の介護予防通所リハビリでは、要介護1~5の利用者とは異なり、月額料金制となっています。
介護サービスは、利用者に合わせてサービス量を組むこととされていますので、要支援1では週1回、要支援2では週2回という制限がある場合がほとんどです。
利用回数に関しては、担当のケアマネージャーに確認することをおすすめします。
5.介護予防通所リハビリの特徴
介護予防通所リハビリには3つの特徴があります。
外来リハビリから介護予防通所リハビリへ要介護認定を受けている人は、病院や診療所などの外来リハビリを原則受けることができません。国としては医療保険より介護保険を優先して受けるよう勧めています。
今まで外来リハビリを受けていた要支援1・2の人は介護予防通所リハビリを利用するようになります。
長期間の利用は勧められていない 介護予防通所リハビリでは、利用開始から1年間経過した場合、料金が安くなるという方針が令和3年度介護報酬改定で決まりました(12月超減算)。利用者さんにとっては料金が安くなるメリットを感じるかもしれませんが、安くなるということは、国の方針としてはあまりおすすめしないという意味が込められています。 活動や参加に焦点を当てたリハビリテーション
平成27年度介護報酬改定から現在に至るまで、介護保険におけるリハビリテーションでは、リハビリテーションの理念を踏まえた「心身機能」「活動」「参加」にバランスよく働きかける効果的なサービス提供を求められてきました。
要支援1・2の利用者は、要介護1~5の利用者より心身機能が高い人が多いです。積極的に、「活動」や「参加」という目標を立ててかかわる人が多くなるのも特徴の一つです。
介護予防通所リハビリの事業所の選び方
介護予防通所リハビリといっても、すべて同じサービスを実施しているというわけではありません。各事業所によってさまざまな特徴があります。そのため、事業所選びも大切なポイントとなります。
以下のチェックポイントを参考にしてみてください。
1.リハビリ専門職の配置状況 希望する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のどの職種がいるか 2.訪問リハビリとの連携 訪問リハビリを利用している場合は、併設されている事業所がおすすめ 3.入院医療機関との連携 回復期退院・老健退所後であれば、施設に併設されている事業所がおすすめ 4.時間 短時間・長時間のどちらの事業所なのか確認しておく 5.利用者層や規模 大規模・小規模の違いを確認し、自身と同じような利用者が多いかもチェック 6・設備 希望するリハビリ機器はあり、希望のサービスが受けられるか
今回は、要支援1・2の人が受けることができる介護予防通所リハビリについて説明させていただきました。
介護予防のサービスにはさまざまなものがあります。自分自身にあった介護サービスを、事業所で受けられるよう本記事を参考にしていただければ幸いです。