玄関前にそびえる12段の階段は世間との大きな壁

我が家で、さまざまな介護福祉用品に囲まれて生活している。

いつもそのありがたさを、しみじみ感じていて、各所でお話をしたり、原稿に書いている。これらの介護用品がなければ、生活は成り立たない。

そのぐらい重要な役割を果たしている。

今使っている介護福祉用品をこの度紹介してみようと思う。

まずは、階段を登り降りするためのもの。

我が家には玄関から門の間に、12段の階段がある。この階段は、ボクにとって世間との大きな大きな壁となっている。

この階段があるおかげで、「近所までちょっと散歩」そんな気分にも、なかなかさせてくれない。

10年前に大きな支柱を作って、上から車椅子を吊るして階段の上をロープウエイのようにスーッとスライドして降りるものをつくった。

これは簡単でよかった。しかし、モーター部分が外国製で、廃番になったこともあり、修理が効かなくなってしまい、もう使えなくなった。

代替案をいろいろ調べたが見つからなかった。

今利用している、「スカラモービル」という製品は階段に一段一段車輪を絡ませて昇降するもの。

駅の階段などで重い飲み物を運んでいる機械を見かけたことがあるかもしれない。

それに近いものである。

いくつかタイプがあり、専用の車椅子を機械に装着して使うものや、椅子式になっていて車椅子から移乗して使うものなどがある。ボクが使っているのは後者のタイプだ。

家から出てきて、まず玄関でスカラモービルに移乗する。そして階段の下でまた、車椅子か、横付けした車の助手席に移乗する。

何回も移乗介助が必要だし、スカラモービルを操縦するためには、講習を受ける必要がある。なかなか大変なのである。

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楽なはずの電動車椅子を我が家では使っていない

そうそう、今、車の話が出たが、3年前に車を買い替える際に、妻の強い希望で介護車にした。

車椅子から移乗しやすいように、助手席が90度回転して外側を向いてくれる。後部座席の後ろがトランクスペースになっているハッチバックになっていて、車椅子を持ち上げてトランクに積めるリフトもついている。

外に出て取材に行くときはこうして家を出る。

ただ、スカラモービルは雨の日は使用禁止だ。滑って事故の危険性があるから。

雨だったら人の手に頼るしかない。それができるヘルパーさんにお願いする。けれど、夜なんかは時間外で利用できない。

「車椅子で階段を登ったり降りたりする技が習得できたらいいのに」と妻はいつも言う。

いやいや、雨の日に妻がそれをやる危険性はスカラモービルを使用する以上のものだろう。なかなかうまくいかない。

車椅子は家用と外用の2台持っている。

家で使用しているものは、狭い室内を動き回れるタイヤの小さいもの。外用のものは、ボクは漕げないのだけれど、段差を乗り越えることを考えてタイヤの大きいものを使用している。

外の段差は、数センチでもなかなか強敵である。段差を上るときは、ステッピングレバーを踏みハンドグリップを下げて前輪、後輪という順番で段差を乗り越える。

転倒防止の観点から、アシストのある車椅子(電動)は、その構造がないものが多い。

なんでだろうと思うが、せっかく電動で楽なはずの街歩きが数センチの段差を乗り越えられないのだ。

結局、我が家では電動でない普通の車椅子を選んでいるが、アシストがついていた方が、妻も楽なのではないかと思う。

妻は「段差があるようなとこに行くことが多いから、このままで良い」と言う。みなさんはどうしてるんだろう?知りたい。

車椅子問題も、我が家の改善できそうな介護用品のひとつだ。

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02

お風呂場で活躍する風呂のリフトと風呂用の車椅子

次は風呂のリフトと風呂用の車椅子。

風呂のリフトは、湯船に入るための昇降機だ。昇降機の椅子に、車椅子から移乗させてもらって座る。

そこから、90度回転してもらい座ったまま浴槽を跨がないとならないのだけど、怖いのか、麻痺している方の足はなかなか固まって上がらない。

二人がかりでひとりが上半身を後ろで押さえて、もうひとりが足を上げて跨がせてくれるとスムーズなのだが、妻はこれを危なげながらひとりでこなす。

湯船に足が浸かれば、浴槽の底まで椅子が下がってくれる。もちろん、上がってもきてくれる。

足を跨がせることがちょっと難点だけど、これがなければ湯船に浸かることは不可能だ。

部屋から風呂場用の車椅子に乗って風呂場と脱衣所の段差を乗り越える。そのためちょっとタイヤのしっかりした車椅子にしている。

この車椅子に辿り着くまで、3台ほど試して乗り潰してきたから、ようやく気に入ったものが購入できたかなと思っている。

風呂場で扱うから、軽くて小回りの効くものと思い探してきたが、いろいろと乗っているうちに、そう軽くなくてもいいことが判明した。

我が家の風呂用車椅子事情で必要なことは、段差を乗り越えられることとと、風呂場の中で回転小回りが効くことだ。

あとは、座面がU字のように一部分が空いていること。風呂場の中で立ち上がるのは至難の業だ。尻も股も座ったまま洗えるものがいい。

夏場なんかは、湯船に浸からなくても、部屋からこの車椅子で隣の風呂場に行ってシャワー浴だけで終えることもある。

今のところ快適である。ボクが快適に感じるってことは、介護する側の妻も楽だってことだと思っている。

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03

毎日恩恵に預かっているエアーマットのベッド

我が家のトイレは、座面の高さを自動で上げ下げできる仕様に改造している。

車椅子から降りたときの膝の角度のまま座面に座ることができるので、狭いトイレ内の移乗にはかなり有効である。

あとは1日の間で一番長い時間お世話になる、エアーマットのベッド。

ボクは寝返りが打てないので、エアーが身体の圧力を逃して床ずれを防いでくれる。

足元の両脇には、空気の吹き出し口があって、寝たきりの湿気を軽減させてくれる風が流れる機能もついている。

ボクの住む地域では使う時期は短いけれど、マットを暖かくしたりもできる。リハビリのときは、柔らかなエアーマットが硬めにできるスイッチもついている。

マット自体も高性能だし、ベッドの枠組みももちろん高さ調整可能で、頭が上がる、足が上がる。そして、地味だけど大切なのが、横についている柵(ガード)。横を向いたり移乗するときは、柵に捕まらなければできない。

このベッドがなければ、大変だなあといつも思う。

旅に出て思うのは、介護ベッドがないバリアフリーの部屋で、寝ている本人ももちろんそうだけど、介護している妻だって大変だなあということ。

本当に申し訳ない。

2、3日泊まりが続くと、腰や足が痛くなる。

まったくと言っていいほど動けないボクを寝かせたり、起こしたり大変である。

クッションを挟んで少し横向きに寝かせてくれたり、体位を替えてくれる。当然だがベッドは、旅に出かけるときに、ちょっと持って行けるものではない。

毎日恩恵に預かっているものは、車椅子だけでなく、小さいものだと無数にある。例えばスライディングボード。ベッド上で身体を移動させるのに便利なものだ。他にも吸引機など、数えたらキリがない。これはまた今度紹介したいと思う。

座り心地も抜群 見守りIoTソファが我が家に

最後に紹介するのは、最近我が家にやってきた椅子。30年も使っていたお気に入りのソファーと交換してまで導入した。

この椅子に座ってテレビを見ることも多い。

座り心地は硬め。今まで使用していたソファのように、体を包み込み優しく沈む感じはないが、逆にそれが立ち上がりにくくしていたので、かなり良いと感じている。

機能としては、80代の義母くらいの身体の人にちょうど良いのではないかと思う。義母は、コロナ禍のこの2年でめっきり足腰が弱くなった。

そして、この椅子の素晴らしいところは、椅子から立ち上がったり、座る姿勢、立ち上がりにかかる時間などを計測するさまざまな知能が内蔵されているのだ。

異常検知や姿勢解析機能が付いていて、異常があったときは自動であらかじめ登録している携帯に連絡してくれる。

見守りIoTソファ「Lifa (リィファ)」。

しかも監視されていることを感じさせないところも良い。

専門のチームが2年以上かけてつくり上げたというから、ソファーとしての座り心地も申し分ない。満点だ。

関連会社が作る車のシートのノウハウを生かしているとのこと。

見守り器具は、高齢者には拒否感が強いと言われているが、これには全く気が付かないだろう。

しかもそれがいいかどうかはわからないけれど、高級なのである。家具として優れている。そこがいい。家に溶け込んでいる。

昔、福祉用具の開発の人と話したことがある。おしゃれで、福祉用具ってわからないようなデザインのものを開発してほしいってお願いしたことがあった。

当時、担当者はピンと来ないような顔をしていたが、つまりボクはこういう介護用品を求めていたのだ。

我が家で使っている介護福祉用品を一挙紹介!〜大きなものから小さなものまで、たくさんのものに支えられて生活している〜
04
『コータリン&サイバラの 介護の絵本』

神足裕司[著] 西原理恵子[絵] 文藝春秋社 (2020/8/27発売)
9年前にくも膜下出血で倒れたコラムニスト コータリさんと、漫画家 西原理恵子さんがタッグを組んだ連載「コータリさんからの手紙」が本になりました!
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