2026年の世界テクノロジー業界は、過去にない規模と速度で人員削減が進んでいる。Layoffs.fyiとCrunchbaseの集計では、4月25日時点で155件のレイオフが起き、影響を受けた労働者はすでに10万443人にのぼる。
ただ、これは単なる業績不振による首切りではない。3月末にはOracleがグローバル従業員の約18%にあたる3万人規模の削減に着手し、インド拠点だけで1万2000人が解雇された。Amazonは1万6000ポジション、Metaも全体の1割にあたる8000人を整理しつつ、空席6000ポジションの補充を凍結している。決済アプリのBlockは従業員の4割にあたる4000人超を切り、英BTグループは2030年までに最大5万5000人を減らす計画で、うち1万人をAIで置き換えると公言した。共通するのは、削減で浮いた原資をAIインフラ投資に振り向ける構図である。
評価軸は「成長」から「一人当たり売上高」へ決定的に変わったのは経営の物差しだ。2020年前後の低金利時代には「いかに早く成長するか」が至上命題で、燃焼倍率(Burn Multiple)が3倍を超えても許容された。今は資本コストが上昇し、AI向け設備投資が膨らむなかで、投資家が見るのは従業員一人当たり売上高、いわゆるRPEに移っている。SaaS Capitalの調査によれば、シリーズC以降の投資家の83%がBurn Multipleを最重要指標に挙げる時代になった。
このRPE競争を決定づけたのが、AIモデル開発のAnthropicである。
削減の対象には明確なプロファイルがある。レガシーインフラ部門の技術者、初歩的なコードを書くジュニア層、定型的なカスタマーサポート、そして専門性に欠けるジェネラリストだ。CiscoはレガシーのスイッチングからAIネットワーキングへ人員を振り替え、MetaはメタバースのReality Labsを縮小した。語学アプリのDuolingoがAIを理由に契約社員の約1割を切った事例は、この流れを象徴している。
逆に取り合いになっているのは、AIエージェントと人間の役割をエンドツーエンドで再設計できる「プロセスの専門家」、AzureやAWSへの本番移行を主導するマルチクラウドアーキテクト、IAMやSOC 2に対応できるセキュリティ人材、KubernetesやTerraformでクラウドコストを最適化するFinOps系のSRE、AIモデル学習のデータパイプラインを設計するデータガバナンスエンジニアといった層である。報道では解雇者がAI研究所に流れる印象が強いが、実際の最大の受け皿は中堅企業のクラウド移行部門であり、3カ月から半年単位の高単価コントラクトに移る高度人材も増えている。
アルゴリズムが選ぶ解雇者選別のしかたも変わった。VisierやChartHopといった人事プラットフォームは、HRISや業績、報酬データを統合し、生成AIで「部門Xの予算を15%削減したらスキルギャップはどうなるか」といったシナリオを瞬時に試算する。
ただし、こうしたアルゴリズム主導の選別は新たな法的リスクも生んでいる。Mobley v. Workday訴訟をきっかけに、裁判所はAIを「中立的なツール」ではなく雇用主の代理人とみなす方向に動き始めた。コロラド州のSB24-205は、雇用判断に関わる高リスクAIに対し、合理的な注意義務を雇用主に課している。「ベンダーのAIが判断したから自社の責任ではない」という弁明は、もう通用しない。
日本にも別の形で波が届いている。共同通信が主要111社に行った調査では、2027年度の新卒採用を減らすと答えた企業が23%にのぼり、増やすと答えた16%を5年ぶりに上回った。理由の上位にAIによる生産性向上が挙がる。終身雇用の壁ゆえに大量解雇には至らないが、未経験の新卒枠を絞り、即戦力の中途や外国人エンジニアへ投資をシフトする動きが鮮明になってきた。
Robert Waltersの分析では、CRM統合やオムニチャネル、AIソリューションを設計できるバイリンガルのプリセールスやアーキテクトの給与は10%から20%上昇する見通しで、特に重要ポジションでは現職比3割増のオファーも出ている。
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