日産初のFFモデルチェリーはデビューレースでワン・ツーフィニッシュを飾るなどサーキットで活躍した。

 そんなサーキットで走るチェリーのイメージを、市販モデルに反映したスポーツバージョンが1973年3月に登場した「X‐1・R」だ。


 X-1とスペック的には同等だが、スカイラインGT‐Rと同様に、太いタイヤを収めるためのオーバーフェンダーを前後に装着し、足回りも強化。「R」の名にふさわしいホットモデルとなっていた。

 ここで紹介する1973年式X‐1・Rは、宮城県の色川秀行さん所有の前期モデルだ。色川さんは、20歳の頃にハコスカに乗っていたりしたが、板前修業に集中するために、きっぱりクルマを封印。

 その後、50歳を目前に、仕事も安定し、子供も手がかからなくなったのをきっかけに、憧れていたチェリーの乗ってみようと思い立った。ところが、旧車の情報は旧車雑誌ノスタルジックヒーローを読むくらいで、交流は全くない。

 そこで、「ニューイヤーミーティング」に出かけて、チェリーのクラブを探してみることにしたそうだ。

 お台場の会場では、運命の出会いが待っていた。チェリーに関しては日本一といわれる広島の「竹口自動車」の竹口英三代表と知り合うことができ、話しはトントン拍子で進むことになる。

 竹口さんの知り合いの鹿児島のオーナーからドンガラのX‐1・Rを譲り受け、竹口自動車でフルレストアを行うことになった。そして竹口さんの手により仕上げられた車両こそ、今回の取材車両なのだ。

Vol.3に続く

エアクリーナー付きのSUキャブなど、全ての画像を見る