Motorcycle Update▶︎バイクのある人生は素敵だ。お気に入りの一台に跨って、家を出るワクワク感。
■橋本将央さん(51歳)
ハシモトマサオ。「貴方の街の介護施設」を掲げる小規模多機能型居宅介護施設「すまいる伊奈」の代表取締役で埼玉県在住。仕事柄不規則な休日は、バイクに乗っているか、もうひとつの趣味であるお城巡りをしている。
■ホンダ・CBR1100XXスーパーブラックバード(1999年モデル)

1996年に登場した初期型のキャブレターモデルは当時最速と言われ、某オートバイ専門誌のテストでは時速300kmを達成したハイスピードツアラー。
1999年に2代目がFI(フューエルインジェクション)化されて、より扱いやすくスムースなエンジン特性に。発売当時は世界最速の量産市販車と言われたが、1999年のスズキ・GSX1300Rハヤブサ、2000年のカワサキ・ニンジャZX-12Rの登場により、世界最速の座を譲ることになった。
橋本さんの乗る1999年モデルは逆輸入車のフルパワー版164PS仕様という。
■テレビで観た「パリダカ」に憧れて
1982年から全国で運動を開始した、免許を「取らせない」、バイクに「乗せない」、バイクを「与えない」の“3ない運動”のまっただ中の高校2年生で、自動二輪免許を取得した橋本さん。

そんな高校生をバイクへの道に引き込むことになったのは、数年前、自身が中学生のときにテレビで観たパリ・ダカールラリーの映像だった。
「確かホンダのXR600だったはず。広大な砂漠を猛スピードで走ってて……ただただ“格好良いなー!”と」。

「そんな思いはずっと心にあって……通っていた高校では本当はダメだったけど、どうしてもバイクの免許が欲しくて、祖父の家に住所変更してまで免許を取ったのを思い出します。
お金もないので一発試験で挑戦し、10回目の合格でしたね。その後、高校の卒業式にバイクで行ったら先生に怒られましたけど(笑)」。

ちなみに、この“一発試験”とは、教習所に通うことなく運転免許試験場で学科と技能試験を受けるもの。
そして最初に購入したバイクは、奇遇にも教習所でよく使われているホンダ・CBX400Fだった。

手っ取り早く友人から10万円で買ったCBX400Fはモロに暴走族仕様だった。それをノーマルに戻してマフラーをモリワキ製に交換して乗っていたという。
その後、スズキ・GSX-R250に乗り換えるが……。
「ホンダの2スト、NS400Rにスピードで軽く負けちゃう。なので、すぐに排気量の大きいGSX-R400に買い換えました」。
時は’80年代のレーサーレプリカブーム。橋本さんも周りと同じく「とにかく速いバイクに乗りたかった」という。
■オフロードまっしぐらから、CBRにひと目惚れ
「トヨタ・コロナクーペ2000GTを買って、日光サーキットの走行会とかに出ていました。
その後、バイクにハマることはほとんどなく、30歳になったとき再びバイクのマイブームがやってくる。

「30歳のとき、近くにあるモトクロス場“オフロードヴィレッジ”で、カワサキのミニモトクロッサーKX80に乗ったことを機に、オフロードへ一気にハマりました。転んでも笑っていられるオフロードって楽しい! と思ったんです」。

そこからはオフロードバイクばかりを乗り継ぎ、現在もオフロードレースのシリーズ戦に出場するほどハマっている。

KX80に乗ってから、9台もの国産&海外オフロードバイクを乗り継ぎ、現在のオフロードレース時の愛車となっているハスクバーナ・FC450にたどりつく。
「オフロードは楽しいけど、公道走行のできないバイクで走っているので、たまにはバイク仲間とツーリングに行きたいな……と、ふと思ったんです。それで頭に浮かんだのが、見た目が格好良かったホンダのVFR800」。
VFR800は6400回転を境に、2バルブから4バルブに作動を切り替えるハイパーVテックエンジンを搭載するスポーツツアラー。
「当初はVFR800の程度のいい個体を探していましたが、友人から『ホンダ・CBR1100XXスーパーブラックバードもいいよね』と言われて現物をバイク屋へ見に行くと、『こっちのほうが格好良い!』とひと目惚れ」。

「164psを誇るフルパワーの逆輸入車で、季節に左右されないフューエルインジェクションモデル。キズもほとんどなくて、ツーリングに便利なリアキャリア付き。
実は橋本さん、今まで自動二輪免許は中型しか持っておらず、このスーパーブラックバードに乗るために最近、大型自動二輪免許を取得したばかり。
「今までは欲しいバイクが中型免許で済むバイクばかりだったけど、せっかく乗りたいバイクがあるのに免許のせいで乗れないんじゃ……ね? 大型を取るしかないでしょ(笑)」。

そして、初めて乗ったホンダ・CBX400Fにそうしたように、同じ系譜をたどるCBR1100XXスーパーブラックバードにもモリワキのマフラーをおごる。

「めちゃくちゃ程度のいいフルエキゾーストのチタン製が中古で売っていて、なんと10万円と激安! ルックスも太いサウンドも、超お気に入りです(笑)」。

51歳が子供のような笑顔で、日焼けした顔をくしゃくしゃにしてる。
「1台のバイクですべての願いは叶えられないから、やりたいことに応じてバイクを持っています。どれも大好きですが、今のところ、このスーパーブラックバードで早く友人とツーリングに行きたいですね!」。

1台のバイクだけを長く愛することは素晴らしい。だが、橋本さんのように“やりたい事”に合わせて複数のバイクを愛でるのもまた、ひとつのバイクの愛し方なのだ。
山中基嘉=写真 今坂純也=取材・文