せめて雪のない暖かい沖縄で心身を癒やしてほしいと、願わずにはいられない。 甚大な被害をもたらした能登半島地震から、間もなく2週間。
発生直後から懸命の救助・支援活動が続くが、それと同時に、命をつなぎ留めた被災者の生活の立て直しに向けて早急な対応が必要となっている。 沖縄県は12日、被災証明書などを持つ300人を対象に、県内で受け入れる方針を決めた。県外から那覇空港までの往復航空運賃全額と、食費や県内のホテルなどへの宿泊費を含めた1日最大7千円を支援する。 北陸地方とは勝手が違う南の島への避難には、相当な覚悟がいるだろう。それでも凍える寒さから逃れて来県した人々に、安心して眠れる環境や温かい食事を届けたい。 現地では今も、2万人以上が避難生活を強いられている。
雪が降り続く厳冬下、電気や水のない生活がどれほど過酷なものか。特に体力のない高齢者や障がい者にとっては、一日一日をしのぐのも必死のはずだ。 大勢が寝食を共にする避難所では、インフルエンザノロウイルス新型コロナなどの感染症も広がりつつある。常備薬が切れて、持病が悪化する人も出ている。 地震でなんとか一命を取り留めた後に、避難生活による疲労や環境悪化で命を落とす災害関連死のリスクが日を追うごとに高まっている。 12日には、全体の死者215人のうち14人が災害関連死とされた。
■    ■ 被災者の生活再建に向けて、石川県は輪島市や珠洲市で仮設住宅の建設に着工した。しかし、住宅が完成して移るまで避難所として使用されている体育館や公民館などで寝泊まりを続ければ、心身の疲弊はますます募り、災害関連死がさらに増える恐れがある。 国は仮設住宅に移るまでの間、被災者が安心して暮らせる「2次避難」の調整を進めている。来月末までに北陸と周辺県などのホテルや旅館などを活用して、2万5千人分の宿泊施設を確保していると明らかにした。留守宅の盗難被害などを心配する人のため、警察によるパトロール強化の必要性も指摘。 また、子どもたちの教育環境の整備に向けて、輪島市は希望する中学生に対して一時的な集団避難を提案するなど、被災者の生活再建に向けたさまざまな取り組みが始まっている。
■    ■ 一方で、生まれ育った故郷から出ることをためらい、現地にとどまりたいと望む人も少なくない。昼間は避難所から自宅に足を運び、片付けをしながら大切な物や思い出の品を探し出す。住み慣れたわが家を離れたくない、と語る高齢者も多い。 しかし復旧には時間がかかる上に、これからますます寒さは厳しくなる。被災者の不安を取り除き、家族や親戚、近所の知人らと集団で避難する体制など、安心して新たな生活に踏み出せる仕組みづくりが必要だ。知恵を出し合い、一人でも多くの命と生活を守ってほしい。