[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1383)
 沖縄県の救急医療体制が大きくゆがんでいる現状をご存じでしょうか。
 日本の救急医療は、本来「軽症は1次」「入院が必要な中等症は2次」「集中治療や緊急手術が必要な重症は3次」という役割分担で成り立っています。
しかし沖縄県には全国で唯一、1次救急を担う「休日・夜間診療所」が一つもありません。そのため、風邪や発熱などの軽症患者が夜間・休日に3次救急の救命救急センターへ集中します。とりわけ小児ではその傾向が顕著です。
 沖縄県立南部医療センター・こども医療センターは、重症外傷、脳卒中、心筋梗塞、小児の重症疾患といった南部医療圏の3次救急患者に対応する救命救急センターの役割を担っています。
 しかし現実には、近隣の病院は1次救急外来を制限しており、夜間・休日には当院に多くの患者が受診しています。1次救急レベルの軽症患者が時間外に殺到し、本来の3次救急機能が著しく圧迫されています。
 こうした状況は単なる混雑や職員負担の問題にとどまりません。現在の診療報酬制度では、当院の救命救急センターが1次救急を多く受け入れてしまうことで「あるべき医療機能を担っていない」と国の医療制度上では適切に評価されず、病院の収益にも悪影響が出ています。
 このままでは、地域の救命救急センターが本来の役割を果たせなくなり、結果として救える命が救えなくなる恐れがあります。加えて、県内の多くの病院において1次救急の外来受診制限が始まっています。今後、沖縄から夜間・休日に軽症患者を受け入れる医療機関が、県内から姿を消す日も近いかもしれません。
 沖縄県におけるこの救急医療のひずみは、もはや個別の医療機関の努力だけでは解決できません。
医療機能の分化と役割分担の再構築、住民への適正受診の啓発、そして何よりも、1次救急を担う体制(休日・夜間診療所やオンライン診療の確立など)の整備が必要です。地域で安心して救急医療を受けられる仕組み作りが急務なのです。(星野耕大、県立南部医療センター・こども医療センター=南風原町)
大きくゆがむ沖縄の救急医療体制 3次救急を圧迫する全国唯一の...の画像はこちら >>
編集部おすすめ