テレビ東京で5日、『ガイアの夜明け』(毎週金曜 後10:00)が放送される。今回は「カシオ 新市場を創る!」と題して、日本に電卓を広め、デジタルカメラや電子楽器、腕時計のG-SHOCKなど、数々のヒット商品を生み出してきたカシオ計算機を特集。
その社内で進む「ものづくり復活」に向けた取り組みを取材する。

 現在、カシオの売り上げはピーク時と比べると半分以下にまで落ち込んでいる。とりわけ2010年代以降に、半導体、プリンター、デジカメと事業撤退が相次いだ。

 そんな状況に危機感を持って立ち上がったのが、多様な経歴を持つ50代以上のベテラン社員たち。デジカメや電子辞書など、開発に携わった事業からの撤退や縮小を経験し、忸怩たる思いを胸に秘めている。

 新たに取り組むのは、かつてない「集音機能つきイヤホン」の開発。軽度から中程度の「聞こえにくさ」を感じる人たちをターゲットにした商品だ。自社の調査で40~60代の約1470万人が対象者となる巨大マーケットだと分かったのだ。

 番組では、世界初の商品を生み出し続けてきた技術と魂を継承し、新市場の開拓に打って出る中高年社員たちの思い、その闘いの日々を追う。

 カシオの開発拠点・羽村技術センター。2025年12月、社運を懸けた商品の開発が進んでいた。メンバーたちが試していたのは、カシオが26年春に発売を予定する集音器「earU(イアユー)」の試作品。
その商品性の最大のポイントは耳穴を塞がないことだ。耳穴が開いているのに音漏れやハウリングを防げる上、長時間着けていても疲れないという。

開発チームをとりまとめる田村公夫さん(58)は、長年カシオが誇る最先端デジカメの開発に携わってきた。一時は大ヒットしたデジカメも多いが、写真撮影のニーズをスマートフォンに取って代わられ、事業撤退を余儀なくされた。

 社是「創造 貢献」という会社のものづくりへのこだわりに誇りを感じている一方で、近年、時代を読み切れていなかったのではないかという忸怩たる思いがある。

 もう一人の開発のキーパーソンが、鳥山康治さん(63)だ。音楽好きで楽器開発を志してカシオに入社したが、18年にわたり関わったのは電子辞書の開発だった。その電子辞書も25年には新規開発が中止となった。鳥山さんは「縮小する事業より、新しいものを作りたい」と集音器開発に参加し、「聞こえ方」の質を決定づけるチューニングを担当する。「自然でふくよかな音」が聞こえるための、ギリギリの調整を追った。

 26年1月下旬。交通量の多い道路を歩きながら、「earU(イアユー)」の試作品を耳につけて試していたのは50代の伊藤京子さん。
高音の難聴に悩んでいる。普段は補聴器を使っているものの、耳を塞がれている状態にストレスを感じていたという。夫がカシオの社員ということで、今回新商品のモニターとして参加。1日4時間以上、連続5日間装着し、その使用感や効果を試したところ、「自分の声が重なって聞こえた」と言う。課題を突きつけられたカシオのベテランチームは、どのようにして乗り越えていくのか。そして、新たな市場を切り開くことができるのか。

 「世界初」の耳穴開放の集音器に挑んでいたカシオだが、思わぬ競合が現れた。昨年12月、NTTの子会社が、「earU(イアユー)」と同様に、耳穴を塞がない集音器を「世界初」として先に発表したのだ。同様のコンセプトながら想定価格は、カシオのものより3万円ほど安い。カシオとしては、どのように強みをアピールし、消費者や取引先に納得してもらうのか。大きな商談を前に、カシオ社内は揺れていた。
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