家庭の食卓を守ってくれる強い味方“スーパーマーケット”。最近では無人のレジも増え、より便利に快適な買い物ができるようになりました。

 とはいえ、まだまだ有人レジに並ぶ客も少なくありません。

 キャッシャーのスタッフと気軽に会話を交わしながら、昔ながらの買い物に安心感があるのでしょうか。

 今回取材に応じてくれた、都内の出版社に勤める編集者の安達さん(仮名・35歳)も有人レジ派の一人なのだそうですが、思わぬ騒動に巻き込まれ警察を呼ぶはめになったようです。

月一のアイス特売日、嬉しいはずの買い物が

 平日の夕方、取材先からの直帰で途中でスーパーへ立ち寄ったそうです。安達さん夫婦は共働きで、妻が看護師のため、週の半分は安達さん自身が夕飯の支度を担当しているとのことです。

「その夜のメニューは焼きそばに決めたんです。ちょうどキャベツと豚肉が大特価だったので。しかも、その日は月一のアイスクリーム特売の日でもあったので、かなり買い占めました」

「うるせぇぞ!」突然キレた“スーパーのレジを渋滞させる老人客...の画像はこちら >>
 そう嬉しそうに語ってくれた安達さん。カゴには特売のキャベツと豚肉とアイスクリームを詰め込み、ご満悦でレジへと向かったそうです。

 しかし、その嬉しさはレジに並ぶまでだったといいます。混み合う夕方の時間帯、ほかのレジはどこも長蛇の列。ようやく唯一空いているレジを見つけて並んだところ、前に並んでいた老人客が財布を取り出し、レジ台のトレイに大量の小銭を広げはじめたそうです。

 それも、かなり細かな小銭ばかり。
1円玉や5円玉が次々とトレイに積まれていく様子に、レジの女性店員も思わず目を丸くしていたといいます。レジ横のポップには「大量の小銭でのお支払いはご遠慮ください」という旨の案内が貼られていたそうですが、店員はその老人に同情したのか、一緒になって小銭を数えはじめたそうです。

アイスが溶けないか心配でしょうがない

 店員は小銭を丁寧に数えますが、なかなか合計金額に届かない。そんな状況が続く中、安達さんは焦りを隠せなかったといいます。

「アイスがどんどん柔らかくなっていくんですよ。もう気が気じゃなくて」

 元々どちらかというと気が長いタイプだという安達さんも、この日ばかりは例外でした。店員が小銭を指で弾きながら数える光景を眺めながら、安達さんの中で焦りが少しずつ積み重なっていったといいます。

 そして、ついに思わず口をついて出てしまったのです。

「小銭多すぎだよ」

 ため息混じりの、決して大きくはない声だったそうです。しかし、その一言が老人の怒りのスイッチを押してしまいました。

「うるせぇぞ!」老人が突然激昂

 老人はゆっくりと振り返り、安達さんをジロリとにらみつけたといいます。そして次の瞬間、「うるせぇぞ!」と声を荒げ、持っていた買い物カゴを安達さんに向かって投げつけてきたそうです。

 運の悪いことに、そのカゴの角の部分が安達さんの左目に直撃。出血こそなかったものの、目は瞬く間に真っ赤に充血し、痛みと驚きで安達さんはしばらく声も出なかったといいます。


 騒ぎを聞きつけた店長がすぐさま駆けつけ、間に割って入ろうとしたそうです。老人への対応を試みる店長。しかし安達さんも、理不尽な暴力にはさすがに引き下がれなかったといいます。

「一瞬の出来事だったので呆気に取られました。でも、目のあたりがかなり痛くなってきたので『爺さん、わるいけどあんたのしたことは立派な傷害だから警察呼ぶわ』と言ってやりました」

 そう告げた安達さんは、その場で110番通報。店内にいた客たちも、いつの間にかその一部始終を固唾を飲んで見守っていたそうです。

駆けつけた警官にそれまでの威勢はどこへやら

 通報からほどなくして、制服姿の警察官が2人、スーパーへと駆けつけてきたといいます。

「うるせぇぞ!」突然キレた“スーパーのレジを渋滞させる老人客”。警察を呼んだ結果…肩を落として家に帰るまで
パトカー
 するとあれほど怒り狂っていた老人は、警察官の姿を見た途端にすっかり別人のように萎縮してしまったそうです。先ほどまでの威勢は跡形もなく消え失せ、うつむいたまま小さな声で言葉を絞り出すばかりだったといいます。

 警察官が状況を確認し、双方から話を聞く中で、老人はしぶしぶながら安達さんへの謝罪の言葉を口にしたとのこと。安達さんも目の充血が引いてきたこともあり、老人の謝罪を受け入れることにしたそうです。

 その後、老人は駆けつけた妻に付き添われ、肩を落として家路についたそうです。


「いつかのネット記事で『人は歳をとるほど短気になり起こりやすくなる』とあったのを思い出しました。今回は出血もなく軽傷で済みましたが、そうじゃなかった場合を考えるととても恐怖です。高齢者自身のためにも、何らかの周知が必要かもですね」

 そう語った安達さんも、地方に住む同世代の父親のことが気になり出したそうです。

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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