輝かしいキャリアの裏で、50代にはステージⅣの子宮体がんに見舞われたことも。
認知症のおばあちゃん役。「かわいいよ」と褒められて
三田佳子さん(以下、三田さん):認知症のおばあちゃんをリアルに演じるのが、普通のアプローチですよね。でも、大きなスクリーンで本当にリアルな苦しさばかりを見せてしまったら、お客さんが辛くなってしまう。だから、ある意味で夢の部分といいますか、「認知症になってもこんなふうに生きてみたい」と思ってもらえるような役作りはどうでしょうかと、監督やプロデューサーの皆さんにご提案したんです。
そうしたら「面白い、いいじゃないですか」と言ってくださって。ウィッグも、「こういうおばあちゃんよ」と分かるような、あえて“らしい”感じにしました。カメラマンさんも「お母さん、かわいいよ」って褒めてくれてね。
「ハウツー映画だと、賞が取れない」――正直な本音と気づき
――シリーズを通じて、終活や介護の実用的な情報も盛り込まれた作品です。三田:正直に言うと、最初は「こんなにハウツーが入った映画でいいの?」と思いました。昔気質の女優ですからね、「香月(秀之)監督、このハウツーがなければ賞が取れるのに」と思いました(笑)。でも一方で、世間はこういう映画を観る時代になったんだなと、すごく勉強になりました。私がリアルではない“ファンタジーの部分”を表現する方向へ持っていったのも、結果的に正解だったなと思っています。
――今回、三田さんご自身が学んだり、感じたことはありましたか?
三田:私、認知症って病気じゃないと思うんです。老いの一番先にあるもので、自分たちにもいつか必ず来るもの。でも、環境が変わったり考え方が変わったりすることで、いい方向に向かえることもあると思うんですね。この映画を通してそれを感じていただけたら、私もハウツーの一部になれたのかなと感じます。
「あと3年ちょっとで、八千草薫さんの年齢に」
三田:時々焦りますけどね。この間、控室で八千草薫さんのポスターを見たんです。大好きな方で、交流も少しありました。
ただ、衣装の整理などはしないといけないなと思っているところです。それからお仕事でいえば、最近、遺体の役もやったんですよ。
――遺体の役も。先ほどの「焦り」とは、お仕事への意欲の裏返しなのでしょうか。
三田:明日なにも仕事がないのも、楽でいいなとは思うんです。だけどご縁があってお仕事をすると、やっぱり元気が出る。最初はやむを得ず出たとしても、結果として活力が湧いてくるんですね。
正直、「お仕事がない、どうしよう」とか、そういうことを考える域ではないんですけど。「今もこうして出ているだけでも、大したもんでしょ」って。
自覚症状ゼロで子宮体がんステージⅣが発覚
三田:大病は3回ありました(54歳で子宮体がん、76歳で頸椎硬膜外膿瘍、79歳で左化膿性肩関節炎を経験)。その中でも最初の子宮体がんは、今でもよく覚えています。生まれて初めての大病で、それがいきなり「がん」でしたから。
――発覚したきっかけは何だったのでしょうか。
三田:それまで大した病気をしたこともなく、自覚症状は何もなかったんです。あるとき、プロデューサーの方と友人の婦人科の先生と3人でご飯を食べていたら、先生が突然「三田さん、いくつ? 婦人科の検診をしたことある?」と聞いてくるんですよ。ご飯の席でいきなりそんな話を? と思いましたけど(笑)。
出産のとき以来、婦人科にはお世話になっていなかったし、特に病気もないと伝えたら、「50を過ぎたら診てもらわないとダメですよ」と言われて。
――それで、すぐに検診に行かれたんですね。
三田:友人に診てもらうのは気恥ずかしかったんですけど、他に知っている先生もいないから仕方ないわと思って診てもらったら、先生もびっくり。がんが見つかったんです。
「がんで死ぬんですか?」生存率半々の宣告と壮絶な闘病
――告知を受けたとき、怖くはなかったですか。三田:今は「2人に1人ががんになる」と言われますが、当時は3人に1人とか、4人に1人の時代ですから。「がんで死ぬんですか?」と先生に聞いたら、「半々です」と言われました。こんなに元気なのに、ステージⅣだったんですよね。すぐに入院が決まって、入院の前から抗がん剤治療を始めました。
――治療に迷いはなかったのですね。
三田:とにかく先生が「もう待ったなしだから」と。それで抗がん剤を打ったら、すぐに髪の毛が全部抜けちゃって。すごかったですよ。私の髪を洗っていた美容師さんが、ショックで辞めちゃったくらい。
――本当に壮絶なご経験だったと思います。
三田:大変だったのはマスコミの対応です。病院まで記者が押しかけてきて、周りの患者さんに「三田さんの様子はどうですか」なんて聞いて回るんです。
症状がなくても検診へ。それだけで助かる命がある
――これからそうした年齢を迎える読者や、ちょうど三田さんが発症されたころの年齢の読者もいます。メッセージを一言、いただけますか。三田:私は自覚症状がまったくないまま、友人の先生の一言で命が助かりました。50代というのは、人生のキャリアの中でも特に病気を受けやすい年齢でもあります。
ですから、50代の女性はもちろん、その前の年代の女性たちも、ぜひ婦人科の検診を受けてほしいと思います。何もなければ、それが一番いいんですから。私みたいに症状がなくても、とにかく行ってみる。それだけで、助かる命があるんですよ。
<取材・文:望月ふみ スタイリスト:東知代子 ヘアメイク:森田光子>
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【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。
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