宇宙空間で日本酒を醸造するという夢物語が現実のものとなった。山口県の酒造メーカー獺祭(だっさい・山口県岩国市)と三菱重工業は、月面での清酒製造を目指す「獺祭MOONプロジェクト」の第一弾ミッションを完遂したと発表した。
今回のミッションの核心は、三菱重工が開発した専用の醸造装置にある。攪拌機能や各種センサーを備えたこの装置は、宇宙特有の環境下でも適切に動作し、最終的にアルコール度数12%に達するもろみを育んだ。地上の製造プロセスを宇宙でも再現できることが証明された一方、発酵のスピードが地上に比べて緩やかになるという、重力条件が微生物の動態に影響を与える示唆も得られた。この知見は、今後の宇宙における食糧生産や発酵技術の発展において極めて重要な財産となるだろう。
この極限環境を経て誕生した「獺祭MOON-宇宙醸造-」は、わずか116ml。そのうち100mlが専用のチタン製ボトルに詰められ、人類の挑戦を象徴する品として1億1千万円(税込み)という価格で販売された。この驚きの売上金は、日本の宇宙開発を支援するために全額寄付される予定だ。単なる希少価値の追求ではなく、未知の領域に挑む科学への投資という、確かな意思が込められている。
特筆すべきは、本プロジェクトが「オールジャパン」の英知を結集して成し遂げられた点だ。国産ロケットH3や新型補給機HTV-Xによる輸送、日本人宇宙飛行士によるオペレーション、さらには人気漫画『宇宙兄弟』の作者・小山宙哉氏によるロゴデザインまで、日本の技術と文化がその中核を担った。
月面移住が現実味を帯びる近未来において、一杯の酒がもたらす心の豊かさは、人類のQOL(生活の質)を支える大きな希望となり得る。「月面でも人々が明るく暮らす未来」の実現に向けた今回の実験は、宇宙開発への日本らしい貢献の仕方を世界に示したといえそうだ。
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