K―1随一のヘビー級戦士として活躍した武蔵が30日、スポーツ報知の取材に応じ、引退試合でロッタンをTKOで倒した元K―1三階級制覇王者の武尊をたたえた。

 武尊は29日に有明アリーナで行われた「ONE SAMURAI 1 フライ級キックボクシング暫定王座決定戦 ロッタン VS 武尊」のメインイベントでロッタン・ジットムアンノン(タイ)を5回2分22秒、TKOで倒し劇的な勝利で有終の美を飾った。

 大会は、同日午後10時からフジテレビ系で中継された。武蔵は放送席で解説を務めた武尊の勝利を見守った。劇的な試合となったが武蔵がまず注目していたのは武尊が昨年3月にロッタにわずか80秒で惨敗した過去の悪夢をどう克服するか?だったという。

 

 「前回が80秒で負けるという結果だったので、同じロッタンとの対戦へ向けどういう練習をして、どうコンディションを整えて前回の負けを払拭(ふっしょく)するかを期待して楽しみにしていました」

 リングに上がった武尊を見て期待は高まった。

 「表情も良く体も絞れていましたから、武尊の仕上がりが非常によかったことを感じました」

 1ラウンドで注目した点は、武尊が惨敗したロッタンから「勝つ要素をどこに見いだすのか」だった。ゴングが鳴ると武尊の作戦が分かった。

 「前回は自分から打ちに行ってロッタンのカウンターをもらって倒れました。ところが今回は、逆に相手に打たせて、その時にカウンターを取りにいく作戦に変えてました。ロッタンに攻めることを誘っていました」

 カウンター作戦が奏功したのが2回にダウンを奪った左フックだった。

 「あの場面はロッタンの打ち終わりに左フックを入れてダウンを奪いました。ロッタンを誘う作戦が完全にはまりました。そこから武尊もパンチを先に当てる場面が多くなってペースを握りました。

2人は互いに前に出る似たタイプですが、こういう好戦的な選手は、先に当てた方が試合を作るんですね。スピード、パンチの切れでも武尊が上回っていました。蹴りもカーフを当てて上下に散らしていました。逆にロッタンは、いつも以上にパンチ一辺倒でした」

 3回以降は、ロッタンが前蹴りを多用し武尊の出足を止めた。

 「あの前蹴りを私は、解説しながら武尊に来させないための前蹴りなのか?何かを仕掛けるためなのか?見ていましたが、ロッタンの場合は、出足を止めるための前蹴りでした。ファイターにとって、こうしたストッピングされる前蹴りは、流れを変えさせられるものではなく嫌な印象はないんです。武尊は、邪魔だったかもしれませんが、腹にダメージを効かされるほどではなかったはずです」

 逆に武尊は、ノーガードでロッタンを「来い」と誘った。あえて危険な領域に飛び込んだ狙いはどこにあったのだろうか?

 「ノーガードもロッタンに打たせるための一種の誘いです。嫌なのは、ガードを固めながら距離詰められることです。武尊は、ロッタンが守りに入られると嫌だったと思います。そこでノーガードにしてロッタンを誘いガードを開かせたんです」

 迎えた最終回。劇的なラッシュで2度のダウンを奪いTKOで勝利した。

 「ロッタンが一度、ダウンしましたが、頑張って耐えきるかと思いました。だけど、武尊が最後の最後にトドメをさしました。これは、本人の気持ちの中で倒して有終の美を飾りたい気持ちが強かったからだと思います。倒す気持ちがTKOで結びつきました。武尊にとって最高の終わり方ができたと思います。一方でこの試合へのロッタンのモチベーションがわからない部分も正直、ありました。ただ、どんな精神状態であれそれでもロッタンは強敵です。しかも武尊は、前回、何もできずに終わったので恐怖心もあったと思います。そこはよく克服しました。素晴らしい闘いでした」

 武尊の功績を称賛した。

 「K―1で三階級制覇などすごい偉業を成し遂げました。私も前のK―1で闘っていましたから、同じK―1でリングを引っ張った偉大な後輩だと思います」

 ONEは、今後、5年間で「ONE SAMURAI」を日本で60大会開催することを計画している。

格闘技界の先駆者である武蔵は、ONEの将来へ期待を寄せた。

 

 「ONEは、立ち技、ムエタイ、総合…様々な格闘技をファンは見られます。すべてをファンは楽しんで欲しいんですが、私はやはり立ち技系格闘技でさらなる日本のスター選手が出てきて欲しいと思います。新しいブランドでもっともっと選手に頑張ってほしいですね」

 (取材・構成 福留 崇広)

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