※本稿は、たてばやし淳『生成AI最速仕事術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■定型メールは「プロンプトの型」で自動生成
忙しいビジネス現場では、定型メールを書く時間をできるだけ短縮したいと考えることが多いでしょう。
そこで、ChatGPTに対して「プロンプトの型」(プロンプト=要望や条件をAIに伝えるための指示文)を用意しておき、必要に応じて文面や宛先、日時などを差し替えて使い回すと効率的です。
ビジネスメールを素早く作成するには、あらかじめ以下のようなプロンプトの型を用意しておくと、毎回のメール作成で使い回せるので便利です。必要に応じて差し替えや追記を行い、ChatGPTに渡すことで業務メールが自動生成されます。
【プロンプトの型:ビジネスメール】
以下の条件を満たすビジネスメールを作成してください。
# 条件(固定部分)
・ 文体トーン:丁寧、です・ます調
・ 冒頭の挨拶:お世話になっております。株式会社XYZ・営業部の田中です。
・ 締めの言葉:引き続きよろしくお願いいたします。
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
{{今回のメールの要件を箇条書きする}}
以下が、プロンプトの型に沿ってChatGPTが生成した回答例です。
【回答例】
件名:来週の会議日程について
お世話になっております。
新しいプロジェクトの進捗について、打ち合わせの機会をいただきたくご連絡いたしました。
来週あたりで会議の日程を調整できればと思っておりますが、こちらとしては月曜または水曜の午後であれば調整可能です。
ご都合の良い日時がございましたら、教えていただけますと幸いです。
当日は、弊社から山田と鈴木の2名が参加予定です。
お忙しいところ恐縮ですが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
引き続きよろしくお願いいたします。
必要に応じて件名や日時部分の調整も可能ですので、お気軽にお知らせください。
「プロンプトの型」の前半、「# 条件(固定部分)」というセクションは、いつも変わらない定型の条件を書いておきます。ここは毎回変更せずに使い回しましょう。
後半の「# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)」というセクションは、毎回メールを作成するたびに変化する内容です。この部分だけ、箇条書きで記述すればよいというわけです。
■テンプレートを自分なりにカスタマイズする例
プロンプトの型は状況に応じて条件部分をカスタマイズすることで幅広く活用できます。
たとえば、長期的な取引先には「お世話になっております」を「いつもご愛顧いただきありがとうございます」に変更したり、新規取引先には「初めてご連絡させていただきます」という文言を追加できます。
また、締めの言葉も依頼内容によって「ご検討のほどよろしくお願いいたします」や「ご確認いただけますと幸いです」など使い分けると効果的です。
署名部分も社内向けなら簡略化したり、重要な案件なら部長名を併記するなど、用途に合わせて条件部分を調整しましょう。
■●ケース1:会議日程の連絡メール
取引先の株式会社ABC・佐藤様に向けて、来週の会議日程を調整するメールを作成するケースを考えます。ChatGPTに渡すプロンプトは、テンプレートの後半部分だけを簡潔に入力します。
【プロンプト例:会議日程の連絡メール】
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
・ ABCの佐藤さんに連絡したい
・ 来週あたりで会議の日程を決めたい
・ 月曜か水曜の午後がこっちは空いている
・ 新しいプロジェクトの進み具合を確認したい
・ うちからは山田と鈴木が行く
上記の内容をChatGPTに入力すると、会議日程の連絡に必要な文面(参加者、候補日時、会議内容など)が整ったメールが生成されます。
■●ケース2:資料送付の案内メール
取引先や社内のメンバーに対して、資料をお送りする際に役立つケースです。相手に対し、どのような資料を送るのか、ファイルの概要、添付ファイルの形式などを明確にすることがポイントです。
【プロンプト例:資料送付の案内メール】
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
・ 田中さんに新製品の資料を送りたい
・ PDFにしてある
・ 競合との比較などが載ってある
・ わからないことがあれば連絡してほしい
・ できれば今週中に目を通してほしい
上記の内容をChatGPTに入力すると、資料送付に必要な文面(資料の概要や添付ファイルの説明、確認事項への対応依頼など)が整ったメールが生成されます。
■●ケース3:イベント招待メール
社内外で開催するセミナーや講演会などに相手を招待するシーンで使えるケースです。参加申込方法や締め切りなども併せて書くと、相手の行動がスムーズになります。
【プロンプト例:イベント招待メール】
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
・ 取引先の人たちに案内したい
・ マーケティングのセミナーをやる
・ 来週の水曜、Zoomでやる予定
・ 参加希望なら登録してほしい
・ 資料は後で送る
この情報を入れておくと、ChatGPTは挨拶・招待文・日時・会場・申し込み手順・締め切りなど、イベントに必要な要素を整然とまとめたメールを生成してくれます。
■謝罪、催促、ミスの指摘メールも完璧
ビジネスシーンでは、「失礼のないメール」を作成しなければならない場面が多々あります。謝罪や催促、相手のミスを指摘するメールはデリケートな内容のため、感情的な文章になるリスクがあり、慎重さが求められます。
ここでは、そのようなメールをChatGPTで効率よく作成する方法を解説します。適切なプロンプトを工夫することで、感情的な表現を避けた落ち着いた文面を得られます。
まずは、どのようなケースにも共通して使える汎用的なプロンプトの型を示します。このテンプレートでは、メールの背景や目的、トーンの指定など基本要素を網羅しています。
【プロンプトの型:失礼のないビジネスメール】
以下の条件を満たすビジネスメールを作成してください。
# 条件(固定部分)
・ 感情的にならず、丁寧かつビジネスライクな文面にしてください
・ 相手に不手際やミスを指摘する場合は、クッション言葉を使ってください
・ 行き違いの可能性を示唆し、断定的な表現は避けてください
・ 謝罪が必要な場合は、何を謝っているのかを明確にしてください
・ 催促や確認をする場合は、「ご対応いかがでしょうか」のように柔らかく書いてください
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
{{箇条書きで簡単に記述する}}
(例:「納品が遅れているので謝罪したい」「相手の誤送信を指摘しつつ、今後の対応をお願いしたい」など)
以下が、プロンプトの型に沿ってChatGPTが生成した回答例です。
【回答例】
件名:納品遅延に関するお詫びと今後の対応について
株式会社ABC
佐藤様
お世話になっております。株式会社XYZの田中です。
このたびは、商品のお届けが予定の納期を過ぎてしまい、大変ご迷惑をおかけしておりますこと、心よりお詫び申し上げます。
遅延の原因につきましては、当社内での在庫手配に一部誤りがあり、出荷準備に想定以上の時間を要してしまったことによるものです。ご連絡が遅れましたことも、重ねてお詫び申し上げます。
現在、商品の準備が整っており、○月○日(○)午後に納品させていただく予定でございます。もしご都合が合わない場合は、別日程の調整も承りますので、ご一報いただけますと幸いです。
今後このような事態が発生しないよう、在庫管理体制の見直しと手配フローの再確認を進めております。
お忙しい中恐縮ではございますが、上記内容についてご確認いただけますと幸いです。
引き続きよろしくお願いいたします。
ご希望の納品日が決まっていれば、それに合わせて調整可能です。どうぞお申しつけください。
納期遅延の謝罪メールですが、クッション言葉が適切に使われていることがわかります。
このような条件付けをすることで、感情に任せた表現を避け、相手との関係性を損なわないメール作成が可能になります。
特に返信しづらい内容は感情が高ぶりやすいため、丁寧さとビジネスライクな表現を明示的に指定することで、後悔のない文面を作成できます。
また、クッション言葉や柔らかい表現を指定することで、相手に不快感を与えずに本題を伝えられます。
■プロンプトを自分なりにカスタマイズする方法
プロンプトの条件部分は自分の職場のスタイルに合わせて調整すると効果的です。たとえば社内向けならカジュアルな文体を指定したり、厳格な業界なら「~の規定に基づいた表現で」と追加できます。
また、相手との関係性に応じて「初めてのやり取り」や「長期取引先」といった条件を加えたり、特定の業界用語を使うよう指示することもできます。
締めの言葉も状況に応じて「早急なご対応をお願いします」など具体的に指定すると、より実用的なメールが生成されます。
■●ケース1:納期の遅れを謝罪するメール
以下に、先ほどご紹介した「失礼のないビジネスメール用プロンプトの型」を、自分の業務内容に合わせてカスタマイズする例をいくつか示します。
テンプレートの後半の「# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)」を差し替えるだけで、謝罪メール・催促メール・相手のミス指摘メールなどに柔軟に対応できます。
次は、株式会社ABCに対して納期が遅れてしまったことを謝罪するメールを作成するためのプロンプト入力例です。
【プロンプト例:納期の遅れを謝罪するメール】
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
・ 取引先の株式会社ABC・担当の佐藤様あて
・ 納期を過ぎてもなお商品の納品ができていない件について謝罪したい
・ 遅延の原因(在庫手配ミス)を簡潔に書きたい
・ 新しい納品日時を伝えたい
・ 再発防止策をひと言加えたい
このように箇条書きでシンプルに状況と要点を示すだけで、ChatGPTは「丁寧な冒頭挨拶+遅延の謝罪+原因説明+再発防止策+締めの言葉+署名」が入った文面を自動的に組み立ててくれます。
■●ケース2:相手の誤りを指摘するメール
以下は、経理担当者に対して、請求書の金額の誤りを確認するメールを作成するためのプロンプト入力例です。
【プロンプト例:相手の誤りを指摘するメール】
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
・ 取引先の株式会社XYZ社・経理ご担当者あて
・ 先方から受領した請求書の金額に誤りがあるようなので確認したい
・ 金額差の具体的な数字(例:合計金額が10,000円足りない)を指摘したい
・ 行き違いの可能性もあるため、もしすでに修正済みなら申し訳ないという文言を入れたい
テンプレートを使うと、相手のミスを指摘するメールについては、「もし行き違いでしたら恐縮ですが」「念のためご確認いただけますでしょうか」など柔らかいクッション言葉を生成してくれます。
■●ケース3:催促メール
続いて、催促をするメールを作成する例を紹介します。
株式会社MNO・営業部に対して、数日前に依頼した見積書を催促するメールを作成するプロンプトの例です。
【プロンプト例:催促メール】
# 誰に、何を伝えたいか?(可変部分)
・ 株式会社MNO・営業部の田中様あて
・ 数日前に依頼した見積書が届いていないため、状況を確認したい
・ 行き違いがある可能性もあるので、先方がすでに送付済みなら再送をお願いしたい
・ いつまでに送ってもらえるか、期限を伝えつつ押しつけがましくならないようお願いしたい
上記のプロンプトの結果、「お忙しいところ恐れ入りますが、見積書の進捗はいかがでしょうか?」などといったソフトなトーンで、かつ明確に期限を区切る文面の下書きが生成されます。
このように、失礼のない文面を即座に考えて作成してくれる便利なAIを活用しない手はありません。プロンプト例を参考に、ぜひ取り入れてみてください。
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たてばやし 淳(たてばやし・じゅん)
オンライン講師/エクセル兄さん
1986年生まれ、横浜育ち。オンライン動画でITスキルを教える人気講師。「多くの人に、仕事を自動化してラクにする方法を伝えたい」という想いから、Excelやマクロ、AI関連の書籍を執筆するなど発信活動を行う。YouTube総再生回数1300万回、チャンネル登録者数11万人超。また、オンライン動画教育プラットフォーム「Udemy」では22万人以上の受講者へ動画コースを展開している。著書に『Excel×ChatGPTでビジネスが加速する! AI仕事術』(エクセル兄さん出版)、『学習と業務が加速する ChatGPTと学ぶExcel VBA&マクロ』(ソシム)、『Excel×Copilot AI仕事術』(日経BP)、『エクセル兄さんが教える世界一わかりやすいMOS教室』(PHP研究所)などがある。
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(オンライン講師/エクセル兄さん たてばやし 淳)